第2話・いざ、出発?! できるのか?

出発当日。ボクたちは、村長が用意した戦闘服に着替えていた。鬼ヶ島に行くボクらのために村長が拵えてくれたそうだ。

「ひゃっはー! この服まじイケてるじゃん!」

「おい、イヌ。うるさいぞ。さっさと着替えろ」

「んだとサル。楽しくなきゃ旅じゃねぇだろうが」

「お前がいなくても充分楽しめるし、戦力は俺と雉原、桃太さんで大丈夫だからお前は来なくていい」

「なんだと?!」

着替え終わったボクは、2人の言い合いが聞こえ、振り返ると掴み合いのケンカが始まっていた。

「今から旅に出るというのに、あいつらは元気だな……」

「あの二人の仲の悪さは村1番ですからね。止めてきます」

雉原は腰に自慢のククリ刀を携えて、スタスタと犬杜と猿倉の方へ向かった。

「おい! これから旅に出るんだ。いい加減やめないか!」

「忍者なんかいつもコソコソしてるから、外じゃ戦えないんじゃない? 里に帰れば?」

「お前こそ、人間相手にしか戦ってこなかったから鬼に素手だとすぐにやられるから帰れ」

雉原の声が聞こえないのか、二人の言い合いがどんどん荒れていく。

「だから、ケンカは……」

割って入ろうとするが、声が届かず。全く周りが見えていない。すると、雉原の額に、血管が浮き出るのが見えた。

「あ、やばい……おい! 2人とも早くケンカやめろ!」

しかし、2人に届かず、掴み合いから殴り合いへのケンカに移行した。そのとき、

キィーン

雉原が自身の武器ククリ刀を引き抜き、2人の首に刃を向けた。

「なぁ……俺の声、聞こえなかったか? やめろって言ったよな?」

取って喰うかのように見開かれた目で2人を睨みつけ、凍るような低い声で言う。

「も、申し訳ありません」

「悪かったよ……」

2人は 両手を上げ、降参のポーズを取る。雉原は刀を鞘に収め、ボクの方に戻ってきた。安心して、「はあー……」と息を吐く。雉原を怒らせてはいけないと何度もいっているのに。

こんなんでボクは大丈夫なのか?

こいつらはボクを守ってくれるのだろうか。

ひたすらに不安が募る。

「準備はできたか」

村長が巾着を手に持ち、現れた。

「やっぱり、無理だと思うんですよね。猿倉と犬杜は仲悪いし、雉原は怒ると手をつけられないし……こんなんでボクを守れるわけないと思うんですね。だから、今回の鬼退治はやはり中止にすべきだと……」

「準備万端っす!!」

「いつでも出発できます」

おい、まだボクが喋ってるだろう。割って入るなよ。お前らは強いからいいだろうけど、ボクは弱いんだぞ!

猿倉と犬杜を睨みつけた。

「はっはっは。まあ、大丈夫だろう。いいか、おぬしら3人は桃太を守るんだ。こいつは死ぬほど弱いからな。すぐ鬼に捕まってしまうだろう。だから、なんとしてもこいつを守れ。それがおぬしらの使命じゃ」

「御意」

犬杜、猿倉、雉原の3人は村長の前に跪いて、頭を下げた。ほんとに大丈夫だろうか?

「それでは、ほれ。これをやる」

「え、なんですかこれ」

「きびだんごじゃ。鬼退治にはかかせないじゃろ」

「あー……」

巾着にはたくさんのきびだんごが入っていた。これ、そんな美味しくないんだよね。

「はあ……じゃあ、行ってくるよ」

とぼとぼとボクは歩き出す。鬼ヶ島までどれぐらいだろう。何日かかるのだろう。億劫になりながら、村を出た。

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村に帰るまでが鬼退治 楠木 ナツキ @natsu_ki11

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