村に帰るまでが鬼退治

楠木 ナツキ

第1話 ボクにそんなことできるわけない!

昔、桃太郎という青年が村を襲った鬼たちを、おともの犬、猿、雉を連れて倒した。

という話をよく祖母から聞かされていた。とても勇敢で優しくて、かっこよかったのだという。

その話を聞いて、

「ああ、ボクには絶対そんなことできない」

と、毎回思っていた。

それなのに_______________


「おぬしに鬼退治をお願いしたい」

「え?」

ボクは桃太。町一番の道場「桃太郎」の一人息子である。3歳の頃から剣術を習わさせられ、今では立派な剣士だ。しかし、剣術が得意だからと言って強い訳では無い。まず、戦うことが嫌い。なんで、剣を持って戦わなきゃいけないの? 怖いじゃん! と言って、ボクはいつも逃げ回っている。だから、毎回父に怒鳴られ、渋々鍛錬をする。そんなことを続けていたから、今この状況に至っている。

「だから、おぬしに鬼退治をお願いしたいのじゃ」

「いや、そんな事言われてもわかりましたと行くわけないじゃないですか! そもそも鬼ってまだいるんですか?」

「おる。かつて、桃太郎が鬼を倒した。しかし、その鬼たちは密かに別の場所に移動しとったんじゃ。口伝では、桃太郎が鬼を倒したと言われているが、1度目は、じゃ。2度目に行ったときは、倒されてしまい、代々引き継がれた刀が鬼の手に渡ってしまったのじゃ。それをおぬしに取り返して欲しい」

真剣な村長の言葉に桃太は打ちのめされそうになりながらも、耐え抜き言い返す。

「ボクにそんなことができると思うんですか?!」

「思っているわけないだろう!!」

「え、」

村長は噛み付くように大声で答えた。

びっくりした。思ってないのに頼むか普通。

「おぬしが、弱いのは重々承知しておる。だが、これは桃太にしか頼めないことなのじゃ」

「どういうこと?」

「桃太郎の家系に伝わる伝統行事でな、今までも頼んでたのじゃが、取り返せた者がいないのじゃ。だから、この伝統を引き継ぐべく、おぬしに頼まなければならないということじゃ」

呆れ顔で村長はそう言う。

え? そんなのボク巻き込まれじゃん。

「嫌なんだけど! それで納得するわけないじゃん!」

「いいから行け! もう犬杜たちにも伝えてある。おい、入ってこい」

と言うと、犬杜、猿倉、雉原の3人が入ってきた。3人は村長の隣に、僕と向き合う形で正座した。

「おぬしもご存知の通り、こいつらは強い。だから、おぬしが戦えなくても大丈夫じゃ」

ボクは3人の顔をそれぞれ見た。犬杜はウインクして合図を送ってきた。他2人は軽く頭を下げる、

「はぁー……」

もう諦めた。決まりごとだ。何言ったって変わらない。


それから一週間後。僕たちは鬼ヶ島へ向かうことになる。

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