自分がこの作品にコピーをつけるとしたら、どんな文章を考えるだろう?
しばらく考えて思いついたのが、タイトルにも出ている「チンして食べれる闇鍋」でした。
この作品の具材――キャラクターたちは、とにかくクセが強い! 人間のキャラはそうでもないのですが、脇を彩る人外共が、もう一級品のゲテモノ(褒め言葉)揃いでして。1匹でもやべえのが2匹3匹もいるもんだから、これはもう「闇鍋」と呼ぶ以外、他に言葉が見つかりません。
しかしですね、この作品、ストーリーやテーマの部分は実に王道なのです。終盤なんて特に顕著で、まるで少年漫画のような熱い展開に胸が震えること請け合いです。
キャラクターは突飛なのに、お話はシンプルで取っ付きやすい。だからこの作品は「チンして食べれる闇鍋」と、そういうわけでございます!
普段はもの静かで穏やかな人が、突然可笑しなことを口走ると、道化師がやった時よりも数段面白いですよね。この小説で誘われる笑いは、常にそれです。
穏やかで知的な、上品な語り口。そこから何の兆しもなく飛び出す突破なギャグ。電車の中で数度吹き出しました。どうしてくれるんですか。
あと、これは主観ですが、語り手のト書きの文には、どこか古めかしい、和風な趣を感じます。しかしそれが示す情景を直訳してみると、現代としか考えられない……このギャップがとても独特で、この小説の個性のような気がします。とても好きです。
この小説が書店に並ぶ日を待っています。トイレのジジイが扉絵であって欲しいです。