上品なカオス(迫真)

 普段はもの静かで穏やかな人が、突然可笑しなことを口走ると、道化師がやった時よりも数段面白いですよね。この小説で誘われる笑いは、常にそれです。
 穏やかで知的な、上品な語り口。そこから何の兆しもなく飛び出す突破なギャグ。電車の中で数度吹き出しました。どうしてくれるんですか。

 あと、これは主観ですが、語り手のト書きの文には、どこか古めかしい、和風な趣を感じます。しかしそれが示す情景を直訳してみると、現代としか考えられない……このギャップがとても独特で、この小説の個性のような気がします。とても好きです。

 この小説が書店に並ぶ日を待っています。トイレのジジイが扉絵であって欲しいです。