第26話 みっちゃん 結

 あれから1ヶ月。俺は朝霧の家にお呼ばれした。


ーーピンポーン


 チャイムを押すと、待ち構えたようにガチャリと扉が開く。


「いやーん、久しぶりぃぃ」


 ひょっこりと顔を出したのは、紛れもない光安だ。


 今日もフリルのヒラヒラした洋服に、相変わらずの笑顔。ミスマッチとは、口が裂けても言えないが。


「入ってぇ。今日はね、みっちゃん頑張ってお料理作ったのぉ」


 リビングに行くと、ハイセンスの朝霧が笑顔で迎えてくれる。


「伊藤さん、お久しぶりです」

「朝霧さん、あれからどうですか?」

「みっちゃんが来てくれてから、幽霊に悩まされる事がなくなりました」

「やだぁ、恥ずかしいぃ」


 朝霧の隣で光安が頬を赤らめる。


 鈍い俺にも、察しがついた。


 うん、お呼ばれした理由が分かった気がする。こいつら、お友達じゃないな。


「それでぇ、報告がありまぁす!」


 甲高い声で光安が言うもんだから、俺は思わず呟いてしまった。


「お付き合いしてるんですよね」

「なんで分かったのぉぉ?!」


 いや、分かるよ。恋愛下手の俺でも分かるよ。お前らの関係ぐらい!


「ギャップ萌えって言うんですか。もう、みっちゃんが可愛くて」


 淹れたてのコーヒーを片手に朝霧が満面の笑みを浮かべている。


 朝霧を苦しめていたのは、生霊だったそうで、それを祓った光安が、格好よかったそうで、そんなこんなで、お付き合いに至ったそうで。


「まさかぁ、こんなカッコいい彼氏ができるとは、思ってなかったのでぇ」


 いやいや、俺が一番そう思ったよ。


 不釣り合いなカップルと感じたものの、一緒に食事をしていると、ジワジワとお似合いに見えてくる。慣れとは不思議なものだ。


 帰りにはすっかり、夫婦にまで見えてきた。


 こんな出会いもあるもんなんだな。


 俺にもそんな出会いがあったか、必死に記憶を辿ってみたものの、全く無かった。

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零感体質 善哉 @SAI

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