第25話 みっちゃん④

「亡くなった人だけが、幽霊じゃないんだなぁ」


 意味深な言葉を言いながら、胡座をかいたままスマホ画面をポチポチとしている。


 なんだろう。さっきまでのプリプリとした雰囲気とはまるで違う。


「あの、みっちゃん」

「おっ。みつけた。朝霧さん、ダイレクトメールを送りますが、気になさらないでくださいねぇ」


 俺の言葉を遮り、黙々と光安は作業する。朝霧と俺は静かに食事にてをつけるしかなかった。


 しばらくすると光安は顔を上げると、ニカっと笑顔を浮かべた。


「はぁー、終わりましたぁ」


 そう言うと、フォークを手にし、料理に手をつける。


「あぁーん、朝霧ちゃんの料理、めっちゃ美味しいぃぃ」


 なんだこいつは。


「あの、みっちゃん。聞いてもいい?」

「何ですかぁ?朝霧ちゃん」

「終わったって、なにが?」


 モグモグしながら、光安は話始めた。


「うーんと、さっきの幽霊さんは、朝霧ちゃんが好きなんだと思うの」

「幽霊が?」


 幽霊は人間に惚れるもんなのか?それってアリなのか?


「好きって感情は、すっごいのね」

「はぁ」

「伊藤さんはぁ、本気で人を好きになったことがないのかなぁ」


 俺の顔に向けて、持っているフォークを回しながらニコニコしていた。


「すっごい好きだと、ずぅーっとその人の事を想っちゃうじゃない?何してるかなぁとか、妄想しちゃったり。あはっ」


 いやいや、怖いです。と、言いたい気持ちをグッと堪える。


「たまにね。そんな気持ちが強くなりすぎてぇ、困った事になっちゃうんだぁ」

「困った事って?」


 やや青ざめた顔つきで朝霧が質問した。


「生き霊を飛ばしちゃうの」

「生き霊?」

「そう。魂だけが、好きな人のとこに行っちゃう系?っていうのかな?」


 怖すぎるんですが。つまり、朝霧を好きな誰かの魂が、逢いに来てるって事か?


 チラッと朝霧に目をやると、思い当たる節があるのか固まっている。


「だからぁ、残念だけどご縁がないですよぅって教えてあげたの」

「それって、みっちゃんが逆恨みされたりしないの?」


 つい俺は思った事を口にしてしまった。


 すると光安の表情が、スッと冷たくなる。


「私には通用しない」


 ゾクリと背筋が冷たくなる。光安はガチで生き霊と戦っている。


「だからぁ、朝霧ちゃんは大丈夫」


 何だろう。光安には怖いものを感じるが、ツッコめない。


 美味しそうに料理を食べる光安を、俺はただ見つめる事しか出来なかった。

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