第5話:桜さくら

少年が貰ったキンセンカの和蝋燭を大事そうに持っていると、向こうから明るい歌が聞こえた。


ーさくら さくら 弥生の空は 見渡す限り

霞か 雲か 匂いぞ 出ずる

いざや いざや 見に行かん


その歌は少年にとっては馴染み深い歌だった。『さくらさくら』である。

少年もその歌を口ずさみながら歌の聞こえる方にと進んだ。


その先には“少年”と同じ歳はあろう茶髪の少女が鞠を付いて歌っていた。その少女は“少年”を見ると歌うのをやめ、あっという間にこちらに近付いた。


「貴方はあの大人の仲間じゃないよね⁉︎」


“少年”はうなづいた。

それを見て少女はホッとした表情を見せると「こんな事があって…」と話し始めた。

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僕の噺 月夜見丸 @d1dmdk

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