第4話:三日月-Ⅲ

日記として使われていたノートを1枚、また1枚とめくったが、どのページの日記もとても読めたものではなかった。


ーそれが再び読めるようになったのは、このページなんです…


そう言い青年がめくって見せたページにはうっすらとなにかが書かれていた。その字は震え、何かに動揺しているのが一目で分かった。だが、少年にはどうしても読める字では無かった。それに気付いた青年はノートを読み聞かせてくれた。


ー10月14日

三日月が今まで白くなってほそくなっていくいっぽうだったけど、今日、三日月のいちぶがおちた。急いでなおそうとしたけど、よけいに三日月のいちぶがおちた。どうして…


ー10月15日

今日、とうとう三日月がおっこちた。庭にはまっ白になった三日月がまん丸になっていた。そらを見てみると、今日はまん月だった。三日月のそばに行きたいよ…


ー青年が最後の一文を読み切る頃には、青年の頬には涙が滴っていた。青年はノートを胸元にしまい、少年に話しかけた。

“私”はこれを読み終えてすぐに上司に電話でいくつか問い尋ねました。

どの質問も、すべて…予想通りでした。

私はそのことにただ悲しむこと以外何も出来やしませんでした。市民の命を守るのが“私”達警察の役目であるというのに…‼︎


その時、少年が持っていた和蝋燭が突然の風で消えた。辺りは再び真っ暗になる。青年はそれに気付いて左手に持っていた棒状のものにライターで火を付けて渡した。


ーこれは、“私”からのお礼です。


その和蝋燭にはオレンジ色のマリーゴールドと百日草が足されて2つに割ったような花が描かれていた。


それを持って歩き出す。後ろから声が聞こえた。


ーキンセンカ、花言葉は『寂しさ』と『失望』です

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