事故物件。
一般的には「そこで人が死んだ物件」くらいの認知だと思います。
誠意ある不動産屋であればその一般認知に基づき告知してくださるかもしれませんが、この業界って結構腐ってるので、法的に問題ない範囲であれば結構ずるい事をやってきたりするんですよねぇ。
くそっ、タヌキ親父め……。
それはさておき、本作はしっかりホラーでありつつも、ためになる知見が得られたり、ほっこりとかわいらしいものもあったりと、短いながらもしっかりとまとまっており、内容も充実しています。
そしてその結末も中々読み味が良い。
あまりホラー耐性のない、ホラーが苦手という方にもお勧めできる良作です。
事故物件をテーマに色々なタイプな満足感を与えてくれる、実に楽しい小説でした!
大学入学を機に、アパートを借りて一人暮らしをすることになった主人公。
だが、そこで見つけたアパートは事故物件だった。
事故物件というと本来は「告知義務」とかがあって、事前にそこに住むかどうかを選べ総な感じですが、現代では色々と「その辺の事情」が変わってきているのがわかります。
以前は「次に誰か住んだ後なら告知しなくてもセーフ」というルールがあったみたいですが(原田ひ香さんの『東京ロンダリング』とかでも扱われていた話)、現代だとそのルールは撤廃され、逆に「もうちょっとユルい」ような話が採用されています。
そう言った現代の「事故物件事情」についての知識も得られると共に、主人公がアパートの中で遭遇する「不思議な現象」を追いかけていくことになります。
そして特徴なのが、ここで遭遇する怪異は「ただ怖いだけではない」ということ。
スタジオジ〇リの「もの〇け姫」とか「ナ〇シカ」、「千と〇尋」とかに出てきそうなファンタジック感とかもあり、ちょっと親しみやすいような、でもヴィジュアルを想像したらやはり不気味なような、絶妙なバランス感覚があります。
その先で見えてくる真相。本当に色々な面で満足させられる代物でした!
短編ですが、しっかり作り込まれているので長編一作読んだくらいの満足度があります。
ホラーが苦手な人でも読みやすいので、多くの方にオススメできます。