第3話 大学1年生 夏

大学に入って初めての夏、練習はますます激しいものになってきた。最初は10人いた同期も毎年恒例の合宿を迎えるころにはマネージャー2人と選手5人になった。辞めた3人のうち2人は春美狙いだっから仕方ない。ラグビー部の練習は不純な動機だけで続けられるほど甘くなく、男子大学生の恋心なんて秋の空より移ろいやすい。どんな美人も、近場の性欲には敵わないのだ。春美も春美で、どうしてあんな下心丸出しの男に気づかないのか。上手くそれを利用しつつ、部活を続けさせるくらいのしたたかさがあって欲しかった。ラグビーには人数が必要だから。

この話題になるといつも、「はるちゃんはそこがいいんじゃない」と深鈴に叱られる。深鈴は1年生ながら、みすず姐さんなんて呼ばれるくらいのしっかり者で、ぼんやりした春美とは正反対のタイプだ。深鈴だったらもっと上手くやれたのに、いまいち人気がないらしい。部員の中でも春美派と深鈴派は8対2ぐらいの比率になっている。そもそもマネージャーをそういう目で見ることはどうかと思うが、どちらかと言えば、俺は少数派の方。あんまり女、女してるのは得意じゃない。そういえば悠人は、2次元にしか興味がないとか言って結局答えなかった。ただ、本人に聞いたわけじゃないけど、多分、気を遣ったんだと思う。あいつはそういう奴だ。その割に、ラグビーになると相手を殺しにかかるような勢いでタックルにいくんだから、人間って複雑な生き物だなと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はるちゃんはマネージャー みさき @ghho

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ