It kill him

 その日は、桜が散っている最中で、まさに「桜雪」のようだった。今日は、初めて慣れない制服を着て、校門を通る日。校門から進む道は、まさに「桜のカーペット」だった。この「桜雪」と「桜のカーペット」のコラボレーションに理英は感動していた。


 第一章     ~     It kill him



 -今日から3年間よろしくお願いします-

 理英は校門を目の前にしてそう思った。この男 神山理英は、小学校から中学校2年までサッカーをやっていて、日本代表だった。しかし、ある日を境にサッカーをやらなくなってしまった。それが何故なのか、周囲の人にはわからなかった。そして理英も、きっぱり忘れてしまって、今は父のように医者になるために、日々勉学に励んでいる。

 「おい!理英!」

 理英と幼馴染の大介が声をかけた。小中と同じで、高校でも一緒になる。その隣では、見知らぬ人がキョトンとしている。

 「隣は誰?」

 「あー 前に話してた中学時代の陸上部のライバルの秋本。」

 「で こっちが神山」

 「はじめまして 話はよく聞いてたよ。」

 「こちらこそ はじめまして。」

 その後、3人で記念撮影をした。

 そこに_


 「おーいたくー 写真撮るぞー!」

 そう声をかけたのは、秋本の友人、村江京介。隣には、中学一緒だった、倉井ゆみ・夏木みどり・北谷歩がいた。親と見られる人達と写真撮影をしようとしている。

 「なー大介 写真撮ってくれ。」

 「無理!写真は下手だからな~そうだ!理英!お前が撮れよ!な!」

 「ったーく めんどくせーなー 」

 カシャッ


 -あの人、なんかいいな-


 恋を知らない理英にとって、これが初恋のきっかけだなんて、まだ知る由も無かった。

 入学式が無事に終わり、同じクラスになった京介とみどりが話かけてきた。

 「さっきはありがとう。誰もいなくて困ってたんだ。」

 「いや、それほどでも…」

 「いいの いいの サンキュー」

 2人は理英のことを、大介から聞いていた。なので、仲良くなるにはさほど時間がかからなかった。それから3人は、他愛ない話をした。好きなもの、嫌いなもの、勉強、部活、中学の思い出等。

 早くも一週間が過ぎみどりはゆみと同じ吹奏楽部、京介はサッカー部の一年生計4人のキャプテンを務めている。聞いた話によると、京介はトレセンのメンバーでこの地区で強豪のクラブに入っていたらしい。ポジションはFWで背番号10。京介が三年になったときは、インターハイも夢ではない(他の1年や後輩による)。しかも、このサッカー部は毎年大会で準優勝だったが、去年はインターハイに進めた。そういう高校でプレーできるのは、京介にとって良いものになるはずだ。

 そして、少しずつ暑さが気になり始める頃、理英はまだ名前も知らず 会話もできていなかった。

 「あの人の名前が知りたい。」

 そうボソッっと声にした時には、夏休みに突入していた。

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変愛 仁喰 @Ni9ui

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