二時間ドラマに憧れて
推理小説が好きで探偵になった。
船越A一郎さんみたいな、肘平なぎささんみたいなのを想像していた。
名探偵と呼ばれたよ。
名前が和泉庵だからワイズマンとか賢者探偵とか呼ばれたよ。
警察からは頼られてるよ。
不満なのは謎が直ぐ解ける事!
横条警部から大企業の社長が殺されて、容疑者の子ども達は死亡推定時刻に皆アリバイがあると聞いていただけ。
屋敷に入る前に屋敷の裏が気になって見たら井戸で、何故か水が塩水と気づいただけ。
屋敷に入ったら容疑者の手が凍傷だと気づいただけ。
「私に推理小説の探偵をやらせてよ!!」
「和泉さんは推理小説の名探偵以上です!」
彼女は光速の名探偵故に悲しき主人公である。
この前も、蜂に刺されて事故死した人の香水から雀蜂のフェロモンを見つけて友人のセラピストを52秒で捕まえたし、
「流石は和泉さん!」
洋館の暖炉から凶器の丸めた紙の棒を見つけて図工教師を33秒で逮捕しちゃったし…
「流石は和泉さーん!!」
今まさに、帰り道に違法薬物の取引を13秒で逮捕しちゃったし。
「流石は和泉さぁん!」
「横条警部、警視総監賞に殿堂入りって無いの!?」
今週5・6枚目の賞をバインダーに入れてぼやく。
「無いです!」
「ならせめて私を名探偵にさせて!!」
「もう和泉さんは名探偵です。」
「私に謎解きをさせてぇ~。」
「してますよ。」
「誰か私を推理小説の探偵にしてぇ~。」
賢者が探偵役になると推理小説は成り立たねぇ!黒銘菓短編集2弾 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika
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