作者さまの知識とセンスが尋常じゃありません。
月が綺麗ですね。
これは言わずと知れた定番の台詞で、奥ゆかしいながらも愛を伝える文句として創作界隈では今なお人気の決め文句であります。
しかし、この作品ほどその意味を正しく理解しているものはそうはありません。この台詞は古風かつインテリで気品のあふれた「古き良き時代の日本人」が口にしてこそ生きるものなのです。そのキャラクターの「奥ゆかしさ」を一緒に表現できなければ借り物の舞台装置でしかないのです。
この作品はそういった伝統を重んじているのみならず、それを現代という舞台で活かすにはどうすべきかも良く練られているのです。
主人公のキャラクターは、どこかあざとさのある可愛らしさを意識しながらも決して出すぎはしません。真相を知る読者だけを深く感情移入させ……そう、読めば読むほど胸キュンさせてくれるのですよ。
暗すぎず、重すぎず、適度に切なくそれでいて美しい。
まさに冬の空で輝く月のような恋愛小説でした。
心の底から綺麗だと思える恋愛をお探しの貴方へ、おススメです!
最近はハッピーにしろバッドにしろ、起承転結だ~三幕構成だ~としっかりとした作者なりの解を求められる方が増えている気がしますが、心の動きにスポットを当てた日常系のような本作、大好きです。
〝先輩が私を忘れて夢中で電話をする時間、先輩の心は綾さんに温められて熱くなって、私の心は夜風に冷やされて冷たくなっていく。〟
片思いの人と一緒にいる時のこういう感じ、ほんとわかるわ~と頷きながら拝読させて頂きました。
「月が綺麗ですね」かあ。
意地らしくて引っ込み思案で、でも、何かしらの方法で想いを伝えたいという恋心に、先輩も気づいてやれよー!という、無粋な突っ込みをしてしまいました^^;
面白かったです♡