第12話 新鋭空母「龍鳳」

 日本海軍第三艦隊は米海軍第一次攻撃隊の第一波(艦爆主体)の攻撃を、辛くも凌ぎきったが、続く第二波で、第三航空戦隊に所属する小型空母「瑞鳳」が爆弾一発、魚雷一本を喰らい大破した。

 更に午後には米海軍第二次攻撃隊が来襲した。


 「このままやられっぱなしでたまるかよ」と空母「龍鳳」艦戦隊長則竹裕之少佐が言った。

 「来たか。瑞鳳の仇を取ってやる」と則竹が言った。

 「電探のおかげで迎撃する時間はたくさんあるからな」と則竹が言った。


 米海軍第二次攻撃隊は25機程度の挺団を8郡ほど擁していた。


 米海軍機の大編隊を視認することができた直後、「龍鳳隊かかれ!、狙いは右下の挺団だ!」と則竹が言った。

 ヘルキャットが龍鳳隊の行く手を遮る様前方に現れ、射程の長いブローニング12.7ミリ機銃を放ってきたが、それに絡め取られる零戦は一機もいない。

 スローロールなどの熟練の技術を最大限に駆使して回避したのだ。

 ヘルキャットの一撃を回避した零戦が米海軍のアベンジャー雷撃機に迫り、20ミリ機銃を発射した。

 この龍鳳隊の攻撃によって三機のアベンジャー雷撃機が墜落し、二機が黒煙を吐き出して高度を落とし始めた。

 このような光景が空中の至るところで散見できた。

 ヘルキャットの一撃を躱した零戦がヘルダイバーやアベンジャーに急速に接近し、一撃を見舞った。この攻撃のたびに各編隊から一機乃至二機の攻撃機が墜落していった。

 しかし、ヘルキャットも負けてはいない。

 一機のヘルキャットの攻撃を躱した零戦に別のヘルキャットが喰らいつき、12.7ミリ機銃を発射した。

 多数の12.7ミリ機銃を喰らった零戦は一瞬で空中分解を起こした。

 急降下速度の差を活かして零戦を追い詰めて、零戦を攻撃するヘルキャットもいる。

 攻撃機を攻撃しようとした零戦が反撃され、多数の7.7ミリ機銃を喰らい蜂の巣にされた。

 だが全般的には日本側が優勢だ。

 しかし、日本艦隊との距離はあとわずかだった。

 

 小型空母「龍鳳」艦長河田良成大佐は固唾を呑んで空中戦を見ていた。

 「米軍機高角砲の射程圏内に入ります!」と見張り員が言った。

 「龍鳳に敵艦爆接近中!」

 「隼鷹に雷撃機接近中!」

 「飛鷹対空射撃開始!」と見張り員が続けて報告を上げる。

 「面舵いっぱい!」と河田が大音声で叫んだ。

 「高角砲、対空機銃射撃開始!」と砲術長の佐藤義実中佐が言った。

 「龍鳳には秘密兵器があるからな」と佐藤が言った。

 「敵10機急降下!」

 「敵一機、いや二機撃墜!」と見張り員が報告を上げた。

 しかし、他の敵機は落ちる気配がない。

 「間に合わん!!」と河田が思った直後、不意に艦中央部から「ドダダダッ!」という異様な音と共に何十条もの白煙がヘルダイバーを絡め取らんとするかのように伸びていった。

 「敵三機撃墜!」と見張り員が言った。

 その直後、龍鳳の舵が効き始めた。

 先程の噴進砲の迎撃で照準を狂わされたのか残りのヘルダイバーが投下した爆弾は見当違いのところに落ちていった。

 「全弾回避!」と見張り員が言った。

 「よし」と河田が言った。


 しかし、艦橋の死角から近づいてくる雷撃機に河田は気づいていなかった。

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巨艦胎動1 ガダルカナル撤退 霊凰 @hokutoyamauchi

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