第11話 改装の成果
同時刻、日本海軍第三艦隊もまた200機以上の米海軍機の猛攻に断続的に晒されていた。
約15分前に現れた敵機が多数の零戦と銃火を交えながら接近して来る様は、第三艦隊各艦の艦上から、はっきりと視認された。
「けっこう、落としているんじゃないか?」と空母「瑞鶴」艦長菊池朝三大佐が言った。
今回の作戦が始まる直前に空母「翔鶴」に取り付けられた空二号電探が第三艦隊の約40海里手前で敵機を捕捉し、敵機が第三艦隊の頭上に現れる前に、多数の零戦で迎撃することに成功したのだ。
しかし、その零戦隊も全ての敵機を叩き落とすことは出来なかった。
「近づいてきている敵機は全て艦爆と推定、多数を撃墜せるも約30機残存!」と瑞鶴の見張り員が報告を上げた。
「かなり多いな」と菊池が言った。
「敵機四組に分かれました!」と見張り員が続けて報告を上げた。
「狙われるのは本艦と翔鶴、そして、隼鷹、飛鷹だな」と菊池が言った。
「敵機、隼鷹に急降下!」
「敵機、翔鶴に急降下!」と見張り員が言った。
「進化した対空火器はどこまで通用するかな」と菊池が言った。
翔鶴を狙った敵艦爆八機の内、二機が立て続けに火を吹いて海面に落ちていった。
その直後、隼鷹を狙っていた敵七機の内一機が吹き飛ばされる様に落ちていった。
「本艦にも来ます!」と航海長が言った。
「敵八機、急降下!」と見張り員が言った。
「取り舵いっぱい!」と菊池が言った。
「長10センチ砲、砲撃始め!」と空母「瑞鶴」砲術長種田義実中佐が言った。
敵一機が風防を砕かれて落ちていくが、残りの艦爆は怯むことなく突っ込んでくる。
「20ミリ4連装機銃、13ミリ機銃砲撃始め!」と種田が言った。
今度は落ちる敵機はなく、高度900メートル付近で敵七機が立て続けに爆弾を瑞鶴に向かって投下した。
その直後、瑞鶴の舵が効き始め、基準排水量二万トンを超える帝国海軍最大の空母が滑らかな動きで転舵し始めた。
菊池の舵捌きが絶妙だったのか、投下された七発の爆弾は翔鶴の左舷側に着弾した。
瑞鶴の艦橋を遥かに超える高さの水柱が立ち上るが、帝国海軍最大の空母は怯むことなく34ノットの最大船速で突進している。
「飛鷹に至近弾2、損害軽微の模様!」
「翔鶴、隼鷹被弾なし!」と見張り員が立て続けに報告を上げた。
「よし!」と菊池が言った。
第三艦隊は米海軍機の猛攻をひとまず凌ぎ切ったのだ。
「第二波接近中、雷撃機が主体と認む!」と見張り員が言った。
「まだ来るか、米軍」と菊池が言った。
「瑞鶴」を含む日本海軍第三艦隊が米海軍の第一次攻撃隊の猛攻を完全に凌ぎきれるかどうかはまだ分からなかった。
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