エピローグ
クリスマスも終わり軍も政務室も冬季休暇に入った頃。
俺は三週間ぶりくらいにルリアと横浜で三度目のデートをしていた。
していたんだが……
「ルリア? まだ怒ってるのか? 」
「怒ってなんかないわよ! 」
「そ、そうか」
まいったな……旅館に迎えに行ってからずっとムスッとしている。
多分だが、12月の初めに二度目のデートをしてからずっと会いに行けなかったからだと思う。ルリアからは次はいつ会えるかと毎日メールが来ていたが、ティナやリズやメレスたち婚約者たちと一人づつデートしたり、愛人プレイ中のレミアともこっそり二人でデートしたりで毎日忙しかったんだ。
クリスマスの前後なんて、5日間ほどラウラも含めた婚約者たちとアメリカ旅行に行っていた。その際にシーナの妹のニーナも付いてきて、とうとう手を出してしまい恋人になった。というよりも、これまでシーナと愛し合っている時に参加したりしてきて最後までしていなかったとはいえ、かなり恥ずかしいことをさせていたんだ。
実はあの子。見た目は優等生っぽいんだけど、シーナと俺の愛し合うところを何度も覗いていたことからMに目覚めちゃってさ、さらにドがつくほどの匂いフェチなんだ。いつも洗濯室で俺の下着を嗅ぎながら一人でシテいるところを何度も目撃した。
そうこうしているうちに、シーナが部屋に入れて見せたいとか言い出してニーナを全裸にして縛って俺が脱いだ下着を口に咥えさせて放置したりした。そして最後はシーナほどじゃないけど大きく育った胸と口で奉仕させたりもした。
それでとうとう旅行中に最後までしちゃったというわけだ。まあ彼女も出会った時は15歳だったけど、もう18になるし性癖はちょっとアレで言葉はキツめだけど真面目でいい子だし、俺とシーナのせいで普通に戻れなくなっちゃったこともあり責任を取った形になる。
白いうさ耳のシーナと、青いうさ耳のニーナを並べてするのはまあ壮観だった。二人とも美人だし胸もお尻も大きいし。ニーナに手を出したことは後悔はしていない。二人ともドMとMと重度の匂いフェチだけど……
そういえば親友の三井の恋人の一人に兎人族がいるんだけど、やっぱり彼女もMっ気があるらしい。献身性がかなり高い種族だから、どうしてもMになりやすいのかもしれないな。
しかし三井の獣人ハーレムも順調に増えてるよな。九州全土にスーパー三井の支店を出しまくって、最近じゃ魔物の肉の輸出業にも手を出して大金持ちだしな。エルフだけは俺は何百年も生きたくないって手を出してないらしいが、それも時間の問題だろう。アイツも俺と同じフツメンでエルフにモテるし、なにより三井には俺が死ぬまで無理矢理でも生きていてもらうつもりだし。俺の友人になったんだ。そこは諦めてもらおうと思う。
まあ婚約者たちや愛人とのデート。そしてクリスマス旅行に新たな恋人ができたことで、正直ルリアやサキュバスたちの方まで気が回らなかったわけだ。さすがの俺もティナ、リズ、シーナ、オリビア、メレス、リリア、ラウラ、カーラ、レミア。そしてニーナという10人ものハーレムを維持することに忙しかった。恋人でもないルリアを後回しにしてしまうのは仕方がないだろう。
だがルリアの方はそんなことは関係ないとばかりにお怒り中だ。
といってもずっと俺と繋いでいる手は離さないんだけどな。
これがツンデレってやつか。可愛いとは思うんだけど、正直ここまで惚れられていることに戸惑いを隠せないでいる。身体を合わせたって言っても一回きりだし、あの時はルリアは俺を隷属させる気でいたわけだしな。あの姉二人から正攻法で俺を籠絡させるように言われたんだろうなきっと。
まあそういうのが透けて見えるからルリアのことは後回しにしたんだが。
「勘違いしないでよね! 別にずっと会えなかったこととか、クリスマスに放置させたとか気にしてないわ! 」
「そ、そうか」
気にしてんじゃん。
「チキュウではクリスマスは恋人と過ごしてプレゼントあげたりするみたいだけど、私たちは別にそういう関係じゃないし。だから気にしてなんか……気にして……グスッ」
「お、おい泣くなよ」
なんだ? 演技? いやマジ泣きっぽいけど……
「泣いてなんかないわ! 自惚れないでよね! 」
「わ、わかった。あ、そうだ! ちゃんとルリアにプレゼントは用意してあるんだ。遅くなっちゃったけどクリスマスプレゼントをもらってくれるか? 」
俺はそう言って空間収納の腕輪から、可愛く包装された箱を渡した。
「え? あ、ありがとう……開けてもいい? 」
「ああ。気に入ってもらえるといいんだけど」
俺がそう言うとルリアは近くのベンチに腰掛け、先ほどまでの泣き顔はどこえやら。ニコニコしながら開封していった。
「あ、可愛い。あれ? この魔石……マジックポーチ? 」
「ああ、マジックポーチを元に、有名デザイナーに作らせたものなんだ。本当はクリスマス前に渡しにいくつもりだったんだけど、製作が予定より遅れちゃってさ。遅くなってごめん」
「ううん。嬉しい……その……ありがとうアクツ。大事にするわ」
ルリアはそう言って満面の笑顔で、彼女の髪の色と同じピンクのポーチを胸に抱きしめた。
うっ……可愛いな。
「そ、それじゃあ宇宙ランドに行こうか」
「うん! いっぱい遊ぶわ! 」
その後俺たちは横浜にある遊園地で遊び、観覧車に乗って夕焼けに染まる空を眺めた。
「今日は楽しかったわアクツ」
「俺も楽しかったよ」
隣の席でプレゼントしたポーチを肩から掛け、俺にしなだれ掛かりながらうっとりしているルリアにそう答えた。
すると彼女は俺の腰に両腕を回して胸に顔を埋めるように抱きついてきた。
「ねえ……私……アクツともっと一緒にいたい」
「じゃあ中華街で酒でも飲みにいくか」
「そういう意味じゃないの。その……朝も夜も毎日……一緒に……いたいの」
「毎日って……」
同棲したいってこと? やっぱり本気で惚れられてる? いや、演技ってことも……でもこの不器用な子にそんなことできるか? しかしサキュバスだしなぁ。
そんなことを考えていると、ルリアは顔を上げて口を開いた。
「ア、アクツ。私はその……貴方が……す、好きなの。会えない時には貴方のことばかり考えて……今頃ほかの恋人たちと幸せにしてると思うと胸が張り裂けそうで……こんな気持ち初めてで、もうどうしていいかわからないの」
「俺のことが? いやでも俺はルリアに結構酷いことしちゃったし……」
惚れられるどころか恨まれることしかしていないんだが。
「あれは仕方ないわ。アクツの強さを見誤った私がいけないの。それなのにアクツは私の姉妹や仲間を殺さないでいてくれた。それどころか生活に不自由しないように保護もしてくれている」
「それは魔界侵攻時に利用しようとしているだけだ」
そしてあわよくば旅館にいるサキュバスの欲求不満の処理係になりたい。
さらにはサキュバスの一族を味方につけて夢を叶えるためだ。感謝なんかされると心が痛む。
「それでもよ。アクツならお母様たちも保護してくれるんでしょ? 」
「まあそのつもりだけど……でもだからって俺なんかのどこを好きに? 見た目だって良くはないし」
出会ってそんない経ってないし、命を救ったわけでもない。それどころか彼女たちの企みを木っ端微塵に粉砕して隷属までさせている。惚れられる要素が皆無なんだけど?
「確かにアクツの見た目は、私たちから見ればオークとそれ程変わらなく見えるわ。私やお姉様の胸を凝視している時なんてオークそっくり。私と一緒に歩いている時も、すれ違う女性の胸やお尻を目でよく追っているし。でも顔はよく見れば愛嬌があるし、胸やお尻を見てしまうのもオスなら仕方ないと思うの。興味がないよりは遥かにいいわ」
「そ、そうか」
俺ってオークに見えるのか……というかどう見ても最低な男だよな。
「私はそんな飾らないアクツが好きなの。この気持ちは決して隷属されているからじゃないわ。いえ、一生貴方に魂を縛られていたい。それってアクツと繋がっているってことだもの」
「う、うん」
まったく理解できないんだが!?
なんか無理して好きになろうとしてないか?
「もう私は貴方にメロメロなの。毎日貴方のことを考えると胸が張り裂けそうなの。だから私を貴方のものにして欲しいの。恋人にしてくれなくてもいい。ただ貴方の側にいたいの」
「い、いやそう言われても——」
俺が熱っぽく見上げて来るルリアの目を見つめた時だった。
彼女の目が突然ピンク色に光った。
え? これって魅了!? 禁じていたはずなのになぜ!?
「あ……せ、成功した? ふふふ、アクツ。私を抱きたい? 私も貴方に抱かれたいの。ねえ、ホテルに行きましょ」
俺が混乱しているとルリアは先程までの乙女の表情から一変し、妖艶な笑みを浮かべながら俺の股間を撫でた。
こ、これはルリアの本当の気持ちと、俺のスキルの穴を確かめるためにも魅了に掛かるべきではないか?
「……ああ」
「嬉しい……」
その後、観覧車から降りた俺は、幸せそうな笑みを浮かべるルリアに手を引かれ近くのラブホテルへと入って行った。
☆☆☆☆☆☆
「あ……あひっ……」
「ふぅ……またやり過ぎてしまった」
俺はベッドの上で全身を体液でドロドロにされたまま両足を開脚し、痙攣しているルリアを見ながらそう呟いた。
禁じていたはずの魅了をルリアが使ったものだから、その確認のために掛かったフリをしたけどついついやり過ぎてしまった。
えっち中ずっとルリアの魅了は発動していたのに、魂縛が発動した形跡はなかった。いったいどうしてだ?
前回との違いは、デート中にルリアは好き好きオーラ全開だったこと。えっち中もルリアは俺のことを愛してると。種族が違っても孕ませて欲しいと叫んで魅了が発動しっ放しだったことくらいか。
正直興奮した。俺を籠絡する気満々だった前回よりも本当に愛されてる感じがした。
前回同様にえっち中にルリアの魔力が流れてきたのは同じだったけど、まあ全部レジストされていたから気にすることでもない。魔力を性器伝いに流すのは悪意があるわけではなく、そういう習性なのかもしれないな。
しかしわからない。なぜ禁じているはずの魅了を発動できたんだ? 気持ちが
確かに不可抗力なら魂縛は発動しない。ということはルリアは俺に本気ってことか?
イマイチ惚れられた原因がわからいから自信が持てないんだよな。
これは魂縛の欠点の検証のために、しばらくルリアを側に置いて検証しないといけないな。でないと魔界侵攻中に、ほかのサキュバスやインキュバスたちに後方を撹乱されかねない。これは軍の安全のために必要なことだ。うん。
片手でルリアの大きな乳を揉みながらそんなことを考えていると、痙攣がおさまったルリアがそのピンクに光ったままの目を向けた。
「ア……アクツ。まだできるわ……私をもっと愛し……て」
「無理をしなくていいよ。6時間しっぱなしだったんだから」
発情期DXを飲んだからまだ余裕はあるが、さすがにこれ以上はかわいそうだ。
それに今夜はメレスとリリアの二人を相手しないといけないし。
「無理なんてしてないわ……貴方に抱かれている時はすごく幸せな気持ちなの……赤ちゃん……ちょうだい」
「……わかった。あと少しだけな」
俺は潤んだ目で見つめるルリアが愛おしくなり彼女に覆い被さった。
また追加で飲めばいいか。
それからルリアと数回ほど楽しんだ後。俺は彼女を連れて悪魔城へと戻った。そしてティナたちにサキュバスたちが不安がっているので、族長の娘を預かることにしたと説明しルリアの部屋を用意してもらった。
若干白い目で見られたけど、俺がサキュバス一族を取り込むことは前に話してある。そのために必要なことだと押し切った。
こうしてルリアと同棲することになったのだった。
それから1ヶ月後
——桜島北東の旅館 ルリア・カリーナ——
「ルリア待っていましたよ」
「ルリアお帰り。例の物は持ってきた? 」
「ヒルデガルド姉様にバルバラ姉様。ちゃんと高級料理店の料理を持ってきたわ。コウがおすすめの中華店だから期待していいわよ」
「助かります。ルリアが持ってきてくれる料理だけが楽しみで……」
「最近料理をエスティナやオリビアに習ってるの。作れるようになったら配下の者たちに教えるわ」
「それは助かります。それにしてもうまくいっているようで安心です。疑われることなく正室や側室の方とも良い関係を築けているようですし。まさかあの不器用なルリアが短期間でここまでうまくやるとは思ってもいませんでした」
「本当よね。それでどうなの? アクツを隷属できそう? 」
「え? 」
「え? って魅了できてるんでしょ? 」
「あ、うん。と、当然よ。もうコウは私にメロメロだわ。夜は週に一度だけど、昼は一緒にいる時が多くて何度も求められるから大変よ。もう500回は私の魔力を流し込んだかしら? 」
「1ヶ月で500回も!? あんなにたくさんの女を囲っているのにもうそんなに? 」
「この短期間でそれほどしているのであれば、魅了が完全に効いている証拠ですね。さすが私の自慢の妹です」
「こ、これくらいわけないわ」
「なんだか怪しいわね……まさか魅了を発動するために好きになったのに、本気になってないでしょうね? 」
「そ、そんなことあるわけないじゃない! 確かにコウは私をいつも気遣ってくれてすごく優しいし、私の身を守るためだって貴重なマジックアイテムをたくさんくれるわ。それにベッドでも私を気持ちよくすることを第一に考えてくれていて、サキュバスの私が満足するまでしてくれるし、エスティナやオリビアにリズたちだって最初は疑っていたけど、今ではまるで家族のように接してくれていて毎日が充実してる。でも私は誇りあるカリーナ子爵家の娘よ。最終的には私情よりも一族のことを優先するわ」
「そう……それならいいんだけど」
「まあまあバルバラ。魅了を発動できて、アクツさんの中にルリアの魔力を流せているのだからいいじゃないですか。もう少し時間をかければ、いくらアクツさん相手でも隷属させることができます。そうなれば私たちがこの世界を支配できるようになるのですから。今はルリアには本気でアクツさんを好きでいてもらった方がいいです」
「そうね。確かにその通りだわ。変に下心を思い出させたら魅了が発動しなくなるものね。ルリア、余計なことを言ってごめんね。もうこのことには触れないわ」
「わ、わかってくれればいいのよ」
まずいわ。すっかり忘れていたわ。
そう、私の目的はコウを隷属させること。でもそれを考えちゃったら魅了が発動しなくなるかもしれない。それはつまり私がコウを愛していないことの証明になる。
そんなの耐えられない。
……もう一族のことは忘れなよう。
大丈夫。隷属できなくてもコウなら魔界にいるお母様たちを救ってくれる。だってあんなに強いんだもの。
コウならサキュバス一族を今まで以上に繁栄させてくれるわ。そして私とコウの赤ちゃんを族長にするのよ。そうだわ! それがいいわ! それならコウともエスティナたちともずっと一緒にいれる。
そうと決まったらもっとコウに子種をもらわなきゃ!
夜はローテーションが決まってるけど、日中はコウ次第で自由に種をもらえるルールだし。
確か今日は軍へ見回りに行っていたはず。
私は持ってきた料理を適当に置いてすぐに外に出て翼を広げ、コウのいるところへと飛び立った。
待っていて愛しのコウ。一緒に赤ちゃんを作りましょ♡
※※※※※※※
作者より
第2章は『時の古代ダンジョン』です。
ダンジョンの最下層には時の神が!
その神は主人公にとんでもない能力を与えてくれて……
乞うご期待!
ニートの逆襲 〜俺がただのニートから魔王と呼ばれるまで〜 黒江 ロフスキー @shiba-no-sakura
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