第214話 幸せになろう。
そして牙狼村は。
広がった。
途方も無く広がった。
でも、森はそのまま。
草原は大草原になった。
畑も増えた。
田んぼも増えた。
海も全部、牙狼村になった。
人魚の嫁たち、アンジェリカスもフラビタエニアタスもムルティプンクタータスも帰って来た。帰って来てくれた。
日本の海で精一杯頑張ってくれたけど、もうあそこには残る者も少なくて抗え切れないと言うのが結果だった。
自然との共存を捨てて、目先の利益にしがみ付き、海を汚して、埋めて、もう抗えない。たかが100年の寿命しかない人間たちが、億年単位の自然を殺して行く。
先は見えてしまったそうだ。
だからココは壊さない様に、殺さないよ様に、守るよ。
日本で見た、海の世界。
作ろうよ海の皆に協力して貰えるよ。
ジンベエもオルカもシロナガスもみんな来てくれるって。
それなら、俺らが海の中に行ける様にすれば良いか。
牙狼村最大の観光施設。シーワールド。
ゴンドラに乗って海中探検。1艘10人~100人まで。
完全予約制。 現在予約は3年先まで埋まっています。
大型定員艇、造船中。
ゲラルディーニとロンシャン兄弟が作ってた塩産業。
塩の販売が急増のため大規模設備投資を実施。世界各国にも塩を輸出。真っ白な塩は牙狼村産の証。
それに伴って大型貿易港を建設。
シーワールドへはこの港を経由しないと行けない為、観光客が集まり、宿泊施設も増えて観光貿易港として発展していた。
そんな中、ゲラルディーニとロンシャンは人魚の嫁さんたちと昔ながらの海の家に住んでいた。
「やっぱこのくらいが俺にはいいな。」
「そうだな。この海と変わらない嫁さんたちが一番だよ。」
皆でアワビのバター焼きを肴に日本酒を傾ける彼らは、牙狼村どころかルバン王国きっての大富豪には見えない穏やかな暮らしで幸せそうだった。
大草原の中にある牛たちの厩舎。
ここで一つの時代が終わろうとしている。
「姐さん。」
「何だい。みんな情けない顔するんじゃないよ。」
「うぅ・・・。」
「馬鹿だね。泣いてどうすんだい。・・・そうだね。集まったみんなに言っておこうか。・・・もうあたしは旅立つから、肉も骨も皆の血肉にしておくれ。中途半端に捨てるんじゃないよ!皆の中で見守っているからね。牡牛ならもっとカッコよく決められたのかもね。あたしは牝牛だったから、だから皆にお乳を振舞えたし、皆の血肉になれた。これからも一緒だよ。真悟人、サラ、本当に世話になったね。あの時、アルに喰われて終わると思ったけど・・・
「姐さん。こんな時言わんで下さい。」
「あっはっは。幸せだったよ。皆のお陰だね。ありがとう。・・・・・・」
「姐さん?・・・えっ?姐さん?・・・・・・」
某日、また一つの時代が終わった。
「そうかい。牛の姐さんも逝ったかい・・・」
「ああ。・・・最後の言葉は、ありがとう。だったよ。」
「そうかい。・・・あたしも最後はそう言って逝きたいね。」
「祖母ちゃん・・・」
「なに神妙な顔してんだい。あんたが看取るんだからしっかりしな。」
「・・・・・・」
「馬鹿だね。この子は。今から泣いてもしょうがないだろ。」
「私はね。お前をこの世界に引き込んで良いのか。悩んださ。」
「祖母ちゃん・・・?」
「私も弱いのさ。・・・一人じゃね。」
思わず祖母ちゃんを抱きしめた。
「祖母ちゃん。ありがとう。呼んでくれてありがとう。会えて嬉しかった。全然孝行出来なかったけど、まだ、これから孝行するから。全力で孝行するから。これからも元気で居てくれよ。頼むよ。」
「ああ。ああ。元気で居るさ。孫が元気になってひ孫も見れた。スティングとエリザベスの子供も見ないと死にきれないねぇ。」
そう言って祖母ちゃんはニヤッと笑ってくれた。
「ああ。俺も異世界来て、人生やり直しじゃ無いけど、幸せだよ。」
皆様。ありがとうございました。
このお話は一旦終了いたします。
始まりは千葉県印旛郡冨里村でした。
とても良い所で自然豊かで、山の向こうに成田山の花火が見える所でした。
今は開拓されて面影も何もありませんが、最後に訪れた時に近くの竹林で花が満開でした。白い小さい竹の花が咲き誇っていて、ああ最後だって解ってるんだな。って思わず泣けるくらいキレイでした。
拙い文章にも関わらず最後までお読みいただきありがとうございました。
人生やり直し?ってワケじゃないけど。~異界の指輪で幸せになろう!~ 三六三 @smkytt
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