第2話 コナン・ドイル(ホームズシリーズ)の「赤毛連盟」を解析してみた

前回の「犬のお告げ」と同じやり方でいきます。



1 プロローグ P45~49


依頼人のウィルソンがやってくる。

ホームズの能力の凄さを、ワトスンとの比較で表している

(ここの推理パートに関しては、読者が推理する事は不可能)。

要は、名探偵Sugeeeeeeeというパートです。

実際のところ、屁理屈的な印象が強いですw


2 事件のあらまし P50~65まで


赤毛連盟という奇抜な組合の物語が明かされる。


質屋のウィルソンはある時、従業員のスポールディングから変わった話を聞いた。

「簡単なバイトで高給がもらえる求人 条件:ロンドン在住の赤毛の大人」←ウィルソンにピッタリ。


スポールディングは、ウィルソン質店で給料半額で働いている社畜……感心な従業員。

写真マニアで、すぐに地下室の暗室に行くのだけが欠点です。


――


赤毛連盟の面接に行く、ウィルソンとスポールディング。

大勢の人が集まっているが、ウィルソンは一発合格。

辞書を写す仕事。仕事中は絶対に事務所から出てはいけない。


――

シーンは8週間後へ。

仕事中の描写はスピーディーに描かれ、物語に濃淡をつけています。


――


赤毛連盟、突然の解散。

良い働き口をなくしたウィルソンがホームズを訪ねてきた。


スポールディングは、「赤毛連盟」にウィルソンが行く1カ月前からの従業員。

彼を雇った理由は、自分から「給料半分でもいいから仕事を覚えたい」と言ってきたので。



3 ホームズの活躍 P65の4行目~71の3行目


ウィルソンの店に行って、彼の膝を見るホームズwithワトスン。

その後、音楽ホールへ。リラックスするホームズ。

別れ際。

ホームズ「夜10時に来てほしい。ピストルを持ってきてくれ」

ホームズは真相がもうわかったらしい。驚くワトスン。

(ここでもワトスンは、ホームズageの提灯持ち的な役回りに終始する)



4 決戦準備 P71の4行目~P77の5行目


ワトスンがホームズを訪ねると、

銀行の頭取メリーウェザー、スコットランドヤードのジョーンズもいた。

「ジョン・クレイ」という凶悪犯の話が出る。


メリーウェザーに連れられて怪しげな路地から地下に潜ると、ロンドン銀行のシティ支店の地下室に繋がっていた。

フランス金貨がこの地下室にあるらしい。


暗闇の中、光もつけずにたたずむ一行。

ホームズ「山場は1時間後に来るだろう」


クライマックス直前である。

これから来るクライマックスに向けて、読者を「じらす」作者の手腕が光る。

緩急の付け方を参考にしたい。



5 決戦&種明かし P77の6行目~最後


暗闇にふっと手が現れる。

侵入者とのバトル。ジョン・クレイを捕縛。


「赤毛組合」は、質屋の主人を事務所に釘付けにしておき、質屋を留守にさせる罠だった。


その他、質屋には女がいないので情事とは関係がない、スポールディングの穴倉へとこもる癖、土曜なら犯行が露見するまでの時間が稼げる、などなどの、ホームズの推理が語られる。


以上。



前回解析した「犬のお告げ」に比べ、『パズラー』としての密度は正直低い。

その分、「赤毛組合」という奇妙な組合を出してきたり、

ヒーローであるホームズの能力の凄さをこれでもかと見せつけ、

クライマックス直前には読者をじらすためのタメを作り、

最後はバトル&推理で〆るなど

「犬のお告げ」に比べてエンタメ方向に舵を切った作品と言える。


「赤毛組合」が詐欺であり、店員のスポールディングが怪しい事は推理できるが、

ロンドン銀行だのフランス金貨だのジョン・クレイだのは後出しなので、推理は事実上不可能。

この辺は「パズラー」としてフェアとは言いかねる……というかパズラーではない。


また、「赤毛組合」の新聞広告は詐欺にしか見えず、

これに引っかかる人が大人数いるものかという疑問もあるが……

現代でも未だにスパムメールに騙される人もいるので、いるのかもしれない。

更にツッコミを入れるなら、確かに給料は超高給には変わらないが、

「10時~14時;週7;病気でも絶対出勤」は

『軽微な作業』とは言いかねる。

労働時間の短さは救われるが、休日皆無で病気でも絶対出勤という条件で仕事を受けたくなるだろうか?


さて、「パズラー」としてフェアとは言いかねると書いたが、じゃあどう読むべきかというと、この作品はヒーロー厨二バトルモノとして読むべきではなかろうか。


ホームズがヒーローで、ワトソンはホームズageの太鼓持ちである。

赤毛組合という謎の陰謀組織が現れ、向かってみるとジョン・クレイという凶悪犯とのバトルまである。

まぁ、ホームズなのでバトルシーンで魅せる、というわけにはいかないのだが、

現代風にアレンジするなら


1 ヒーロー登場。ヒーローの凄さを見せつけるエピソード(ワトソンとの比較)


2 怪しげな組織登場


3 向かってみると、敵とのバトル(ここの尺を増やす。ヒーローのカッコよさをアピール。ワトソンが単独潜入してあっけなくやられ、ホームズが助けに来て相手を倒す、という展開などが考えられる:安直w)


4 無事解決。謎解き(ここはサラっと終わりでいい)


みたいな感じになるのだろうか? なんだか出来の悪いラノベみたいになりそうだな……。


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本格ミステリの仕組みを解析してみた DOI @fee1109

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