第11話

妃「うちの昔話、しても、いいかな…?」




……














………











うちは親がヤンキーだった。

そのせいでよく親同士喧嘩したり、ママが当たりが強くてよく殴られたり、夜中どこか出かけて朝まで帰ってこなかったりで、虐待を受けていたわけじゃないけど所謂一般的な子供の育て方をされなかった。

名前も結構キラキラしているせいで、クラスメイトから虐められていた訳じゃないけど、結構色々言われてた。

今はこんなキャラだけど本当はめちゃめちゃ人見知りで、学校でなかなか友達が作れなかった。そのせいでいつも1人だった。


学校だけならまだよかった。全然耐えられた。

でもそうもいかなかった。

中2の時に親が離婚した。

うちは一体どこまで運が悪いんだろw

夜遊びがひどいママの方に引き取られちゃった。だからもう最っ悪。

もし離婚するのがもっと早くてうちがまだ小さかったら所謂ネグレクト(?)に当てはまるやつだと思う。

ご飯はない。お小遣いもない。欲しいものはもちろん、必要なものすら買ってもらえない。だからうちは、ママには内緒で年齢を偽ってバイトを3つ掛け持ちしてた。そのおかげで、キッツキツのスケジュールだったけど生活には困らない程度にはなった。


うちはみんなが羨ましかった。

いい意味で普通の人の間に生まれて、普通に育ててもらえて、普通の名前をもらって、友達もたくさんいて…うちもみんなみたいになりたかった。せめて学校では居場所を見つけたいって思った。


色々考えた末に、流行りに乗るのが大事だとわかった。だからうちは食べ物、洋服、メイク、芸能人、歌手とかたくさんの流行りものを片っ端から調べて、流行りに乗れるように頑張った。

そのおかげで、高校からは所謂陽キャになれた。高校デビューってやつで、たくさん友達が出来た。

ずっと憧れてた放課後の寄り道とか、いつメンとかできた。とても幸せだった。

でもそんな幸せも長くは続かなかった…。


ある日、うちが偶然トイレの前を通った時に耳にしたいつメンの会話


?1「妃華莉ってさ〜なんか痛いよねww」


?2「わかるwwなんかめっちゃ頑張って陽キャになろうとしてます感やばいww」


?3「ほんとそれな!w

なんか色々気使っちゃってろくに楽しめないんだよね〜」


?1「わかるわ〜、正直邪魔なんだよねww」


?3「そそそ!ほんっとそれ!w」


?2「もう相手するのもだるいからさ〜

ちょっとずつ外していかな〜い?」


?1「うん、それでいいと思う」


?3「まぁだるいしね〜ww」


うちはショックすぎて受け入れられなかった。受け入れたくなかった。

でも迷惑はかけたくなかったから、次の日から少しずつ不自然にならない程度に距離を取るようになった。

そして、いつの間にかまた1人になっていた。


最初はまだ耐えられたけど、やっぱりメンタル的に来るものはあって…

うちは裏切らずにそばにいてくれる人が欲しかった。上っ面だけの友達じゃない人を求めてた。

そんな時にこのゲームに参加する事になって、結香里、ゆかちんに出会った。

最初は「うわ、こいつド陰キャじゃん…」って思って、正直あまり関わりたくなかった。

でも、澪ちゃんが前の友達に雰囲気似てたってのもあってなかなか近づけなかったから、ゆかちんと一緒にいる事が増えた。


最初はほんとマジで必要最低限以外話したくなかった。陰キャオーラ移りそうだったし?ww

でも何故かゆかちんがめっちゃ話しかけてきたんだよねww 仕方ないって思いながら相手してたら思いのほか楽しくて、前の友達みたいに話し合わせなくてもいいし、気を使わなくてもいいし、多分うちが人生で初めて心から笑えた時間だったと思う。

鬼ごっこは正直しんどかったし、うんざりしてた。だけど

ゆかちんがいたから頑張ってこれた。

ゆかちんがいたから今まで投げ出さずにいられた。

ゆかちんがいたから毎日生きようって思えた。

ゆかちんがいたから…

ゆかちん…ゆかちん、ゆかちんゆかちん…!!!

結香里…!!!!!



















……
















………









妃「だからね、澪ちゃん…

ゆかちんがいない今、もう、うちが生きてる意味なんて、どこにも、ないんだよ…」


澪「妃華莉ちゃん…」


そう呟いて澪ちゃんはうちを抱きしめた


妃「澪、ちゃん…?」


澪「全然気づいてあげられなくてごめんね…

酷いことしてごめんね…

何もしてあげられなくてごめんね…

妃華莉ちゃんの笑顔に頼りすぎてごめんね…

ただ謝ることしか出来なくてごめんね…

ごめんね…ごめんね、ごめんね…」


ひたすら謝る澪ちゃんにかける言葉を、生憎うちは持ち合わせていなかったから、ただ撫でてあげることしか出来なかった


澪「…妃華莉ちゃんは生きてる意味あるよ」


妃「…え?」


澪「妃華莉ちゃんが死んじゃったら、私は嫌だし、愁哉だって嫌だし、麗凰だって嫌だし、今はもう居なくなっちゃったけど武琉だって嫌だし、何より結香里ちゃんも嫌って思うし、悲しむよ。

結香里ちゃんに悲しんで欲しくないでしょ?」


妃「ゆかちん…嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。絶対嫌だ。見たくないそんなとこ。」


澪「それにみんなだって結構妃華莉ちゃんに助けられてるんだよ?」


妃「え…?どゆこと…?」


澪「最年少の妃華莉ちゃんがいつも元気で明るく居てくれるから、みんなテンション高くついてこられているし、妃華莉ちゃんの笑顔見るとなんだか元気になれるし、妃華莉ちゃんが頑張っているところ見ると「私も頑張らなきゃ」って思えるし、この事はうちだけじゃなくて愁哉も麗凰も思ってる。

私みたいな何も知らない人間が簡単に言えることじゃないのはわかってる。わかってるけど、妃華莉ちゃんには生きてて欲しい。」


妃「澪ちゃん……!」


うわぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁあ!!!


産まれたての子供のように泣いた。

澪ちゃんに抱きしめられながらただひたすら泣いた。

何かが切れたかのように、うちの涙は止まることを知らなかった。
































だからもちろん、不穏な影が近づいているのも知らなかった。

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鬼ごっこ 暁型2番艦 @melisaka

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