この世界の人々が、もし皆親切だったなら。
病院に強制送還され、安静にしてろと言われました。
これを書いてても安静って扱いになるよね? きっと。
さて、最後の話題。この世界の人々が、もし皆親切だったなら。
悪口を言わない人と同じような感じだけど、なんか……それの進化版って言うのかな?
なんだろ、よく分かんないけど。
親切だったらなあ、今頃募金総額とかヤバい事なっちゃってるんじゃないかな。
大震災からの復興とか、貧しい子供達を救う団体とかの。それこそ、レジに並んだ全員が百円以上箱に入れてるーとか。
クラスメイトも全員親切だったら、皆で協力して一つの事をやり遂げたり、陰口や悪口がなかったり、いじめもなかったり……。
うん、やっぱり君と私はあの出会い方してなかったね。クラスの皆と一致団結したらお互いの存在を知る訳だし、もっと平穏に出会ってた。
でも、不幸……なのかな。だったからこそ、君との当たり前の毎日がとっても楽しかったんだって、私は思うな。
それは私の病気と、君へのいじめがあったからで、皆が悪口とは無縁の人間だったり親切だったり、そんな世界なら、あの日々が強く心に残る事もなかったと思う。少なくとも、まだ何十年と続く人生を歩み続けている君はね。
やっぱり複雑だなぁ。私の脳が衰えているから? いや、元々バカだからかな。
でもこの事をずっと考える事ができそうにない。もう色々限界になってきた。
じゃあね、
____紙の下の方は元々何らかの液体がかかっていたのだろう。文字の一部分が薄くなっている。
そこに私の目から出てきた透明な水が被さり、余計君が遺したメッセージが見えずらくうなってしまった。
悪口がない世界、平和な世界、皆が親切な世界。望んでいる人は沢山いるし、人権啓発標語あたりの優秀作品を見ても毎年そのような内容の五七五だ。
けれど、悪口があるからこそ、平和とは言えない世界だからこそ、親切じゃない人もいるからこそ、特別な出会いがあって、毎日があって。
……学校に到着し、いつものように文庫本を開く。
この物語を紡いでいるのは所詮紙だ。破ろうと思えばいつでも破れて、物語の続きをないものとする事もできる。自分で文字を書きそれを挟めば、結末を変える事だってできる。
君のような死に方をした人々は神様がこの行為を行ったのではないか、なんて。
考え出したらやっぱりキリがないけれど。
もしこの世界の人々が皆親切だったなら、君と私のような出会いをして、その後の毎日が輝いて見えたりはしない。
この世界だからこそ、私達は毎日がとても楽しかったのだ。
……今日もどこかで¨それなりに良い出会い¨が起こるのだろうか。
この世界の人々が 幸野曇 @sachino_kumori
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