第5話『Dora』
ベルンハルト・シュレーゲルは、帰らなかった。
曇天の中で騎士のように駆け抜けた彼は、どこで、どのように撃墜されたのか、誰も分からなかった。
シュレーゲルの友人であり、相棒でもあったギュンター・アイクは、這う這うの体でベルギーからドイツへと逃げ延びたが、友軍の機関砲に迎撃されて死んだ。
勇敢で実直なものほど、戦争ではよく死んでいくものだ。
ベルンハルト・シュレーゲルも、その一人だったということなのだろう。
緒戦から生き延びてきた古参の兎も、まるで他の新米と変わらないかのように死んでいく。
私は彼と共に朽ちていく。
私は彼らと共に忘れ去られていく。
私たちのしたことは、きっと野蛮な行為と罵られる。
けれど、それでも彼らはいたのだと、覚えておいて欲しい。
私たち、あらゆる飛行機たちと共に戦い、そして死んでいった者たちのことを。
曇天の騎士 狛犬えるす @Komainu1911
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます