「自らの内にお入りなさい」リルケ『マルテの手記』より

婚活を通して、さまざまな出会いと別れがある。他者と向き合うことで、自身が求めているものが明確になっていく。結婚という「終着駅」に向かっているのだけれど、相手をもっと知りたい、また、相手からも同じように思ってほしい、という恋愛のカタチが浮き彫りに。読んでいて、惚れるから始まる恋愛は、両思いであっても、一方的な幻想なのではないか、と思った。本文の「食べ方がイヤ。好きならば許せる」は、好きという感情が消えた時には、食べ方だけでなく、相手のすべてを否定的に捉えるのではないか?好きという感情は重要だが、食べ方を許す、許せるではなく、その食べ方自体を、相手のあり方として受け止められた時、結婚へと繋がるのではないだろうか。ヒロインの毀誉褒貶を経て、読み手の我々は、自身の価値観を探っていける。内省的な書き方が、読み手自身、気づいていなかった思いを教えてくれる。書き手のうまさが、知らなかった自分を教えてくれる作品。これを読んだ後に、結婚生活を記した次作を読むと、一層、詳らかになる自身のありように触れられる。

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