第48話 ギルドは官庁

あれから宿に戻った私達は、各部屋に移動して各自休んだ。空いていた部屋数の関係上琴音ちゃんと一緒だったが、普通のホテルでシャワーやら電気やら完備された部屋は日本の安宿とそん色ない。贅沢を言えばエアコンがあれば完璧だった。


「ふわ、おはようございます。」


「あれ、香川さん寝れなかったの?」


「いえ、なんか琴音ちゃんと二人部屋だったから修学旅行のノリになっただけですよ。」


女同士の話は秘密です。


「そうなの?結構いい部屋で僕はすぐ寝ちゃったよ。」


湧帆さん「何それって顔」をみて、すぐに自分の失態に気づく。湧帆さんは6歳でこっちの世界に来たのだ。修学旅行なんてピンとこないのは当たり前だ。

こんな些細な事だが、急に湧帆さんが持っている普通の日本人とは違う不思議な魅力は特殊な環境で育ったことが大きく起因している気がしてくる。


「えぇ、私も部屋には満足でした!基本的にはぐっすりでしたよ。」


「そうなんだ、それは良かったね!女性に野宿きついもんねぇ。イオリさんも良くボヤいてたよ。」


簡単に想像できる逸話だ。


「それじゃ、皆さん行きますよ~」


全員が集合したのを確認して、ちゃんとした仕事着に着替えたアンガスが号令をかける。昨日たらふく食って満足したのか今日のコーディネーターは機嫌が良さそうだ。


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ギルド呼ばれる建物は木造のログハウスみたいな外観をしているが、これは一種のアピールで、どの町のギルド会館もこんな感じらしい。


ギルドとは、私の異世界偏見知識によると、業種ごとの労働組合みたいなものを想像していたが、実際には国営、もしくは準国営の業種すべての管理窓口になっており省庁を一括管理しているような組織になる。


しかも、帝国は王制度とは言え、商業的発展には前向きで株式制度や法人などのシステムが浸透し始めているらしい。


投資なんかが成立したら貴族が成り立たないのではと思ったが、そもそも帝国貴族は軍功による一代貴族のみで、所有財産は税金によって賄われる感じだ。領土運営とかは存在しないらしい。

要するに日本でいえば選挙が戦争になり。軍功があるものが国会議員として統治することになるので、金もうけは市井でやって国を潤してねっていう国策らしい。

金と政治を分けるのが狙いらしい。。。


ただ、軍人ばかりで政治をすると馬鹿なこともするので王族のみ継承されて政治家として国策(主に行政)を担っている。その行政の相談役として義勇軍は力を持っているらしい。


これは、これで危うい政治形態だな…クーデターとか起きそう。。


「ゲレイロさん!お久しぶりです。本日は買取でよろしいですか?」


「そうでやんす、ただ玩具ではなくて食料と討伐証明の引き取りでやんす!」


眼鏡にお団子頭をした聡明な雰囲気を醸し出す窓口嬢はゲレイロの顔見知りらしく、意外な商品に一瞬顔を崩すがすぐに営業スマイルに戻り了承の意を示し席を立つ。


ほどなくして、バンダナに革製の服を着た屈強な男が奥からやってくる。


「冒険課のヒースと言います。門番のガレスより報告を受けていますのでこちらでどうぞ」


そういうと、事前に手続きがされていたようでスムーズに奥の倉庫みたいな所に案内される。

よく異世界もののお約束で公衆の面前で討伐した魔物を出して他の冒険者から歓声を浴びたり、女だからっていう理由で絡まれたりもしない。

むしろ、日本よりも情報の伝達がスムーズで応対が洗練されている。周りの客を見ても仕切りなどがきちんとして防音の魔法でもかかってるのか話してる内容も聞こえず、プライバシーにも配慮されている。異世界の農村すげぇ。。


「魔物は外の車ですかね。アンガスにカギを渡すのでこちらに運び入れてください。その後にまた私に声をかけてもらえれば討伐証明も含めて金額の計算しますね。」


見た目のいかつい感じとは裏腹に丁寧な言葉づかいでお役所仕事をするヒース。

私が、念のため確認のため八神さんを一瞥すると右手を差し出して「どうぞ」とジェスチャーをする。それを確認すると空いてるスペースに必要なものを召喚する。


「うお!!こりゃ、収納ですか?」


ヒースも目を見開いてるがコメントに困った表情をしているので、草団子で親交を深めたアンガスが代わりに質問する。


「そうですよ。私の収納は特別性ですので、秘密ですよ?」


すこし、お道化た感じで答える。実際問題、ギルドの担当者の反応を見てもヤバイ能力を保有してるのが分かるので、それとなく口止めしておく。


「なるほど、ゲレイロさんほどの人が従者に就くわけだ。。。」


アンガスは簡単に「すごいっすね~」ってリアクションだったがヒースの方は収納に関して正確に効果を把握しているらしく慄いている。しかし、ゲレイロさんほどという言い方で表現されるのはなぜか府に落ちない。最初に出会った時の残念感がすごくて凄いイメージがゲレイロに中々持てない。。


「少し、お話を聞くことは可能ですか?」


そうするとヒースが交渉を持ち掛ける。


「彼女は義勇軍所属なのでスカウトは無理ですよ」


「いえ、グローデンをこんないい状態で3頭も、しかもボアとkの討伐証明の数を含めれば、もっと収納の容量があるように愚考します。帝都のギルドはもっと素直に利用しようとするでしょうが我々のような農村では優先的にバダ村のギルドに卸してもらえるだけでとんでもない利益が見込めます。私の独断では難しいので今からギルドマスターと会談させてもらい、情報を帝都に流さない代わりに少し不便でしょうが、こちらで卸してもらえないでしょうか?帝都のギルドからの勧誘などのご不便が無くなって互いに利がある提案かと。。」


真剣な顔つきで八神さんが交渉する。私はデメリットが分からないのでとりあえず、場に流されることを選択。


「なるほど、話は聞いてみたいな。ただ、組織レベルのつながりになるようならこちらも元帥を通さないでの約束は出来ない。持ち帰っでの話でもいいかい?」


「もちろんです。こちらから提案ですし破談になったとしても今回分だけでも相当な利益になりますので。」


「了承した。ゲレイロさんもそれでいいですか?」


「あっしは今は従者でやんすよ。約束事はお任せするでやんす。」


聡明なモグラだ。。


「それでは、情報を出来るだけ抑えたいので少人数で計算に当たります。少し換算にお時間を頂きます。その間に、アポイントを取ってきますのでお話ができれば思います。」


そういうと、ヒースは私達を残して部屋から出ていき5分も立たないうちに一人の男性と先ほどの団子頭の女性が倉庫に入りに、こちらに会釈をして検分を始める。


「では、こちらへ」


すると、すぐにヒースが戻り移動を促す。


「随分と早くアポイントメントが取れやしたね?」


「時は金なり、これほどの案件はそうありません。他を後回しにしてでもお話をさせてもらいたいとギルドマスターが。」


ゲレイロが世間話のように相手の思惑を探り出す。

2,3やり取りをしてるうちに目的地に到着する。


ドアを開けると昂暉トレーニングルームとは違い、ちゃんとした応接間に作業場のような机が併設され、多くの本や木製で出来た家具や色鮮やかな調度品の数々が権力を示すように佇む。


テンプレートなギルドマスター部屋に若干の緊張が高まるが、そこにはギルドマスターと呼ぶには些か違和感のある若い金髪の男性だった。


ふむ、イケメン。。



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我らが東邦義勇軍246 ~香川唯は異世界に転生しましたよ編~ ライシ @kotapy0813

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