魔女の素顔
「この辺りにしておこうか」
「頃合いですかね」
ライヤとリヒターの戦いが十分を超えた頃。
二人は示し合わせたかのように動きを止めた。
「このままではメインディッシュの時間が少なくなってしまいますからね」
「すまないな。楽しかった」
「こちらこそ。これからはもっと楽しませていただきます」
互いに一礼し、リヒターが体育場を後にする。
突然の決着に生徒たちは落胆を隠せない様子だ。
そう落ち込むな。
もっと面白いものを見せてやる。
「待ちわびたわよ!」
そんなライヤの思いを知ってか知らずかアンが大声で存在を主張しながら体育場へと飛び降りてくる。
その姿から漏れ出る闘志に生徒たちは落胆も忘れて歓声を上げる。
「いや、漏れすぎだ。抑えろ抑えろ」
「え? あぁ、そうね。すぅー、はぁー」
体の周りからチリチリと火の粉が舞っていたのだ。
気合入りすぎだ。
「学園長、出番です」
「……私はこの結界を維持するのに忙しいの」
「ご心配なく。教師一同、協力して結界の維持に努めます。一人では決して学園長に及びませんが、これだけ集まれば結界の維持で個人に遅れは取りません」
観客席に戻ったリヒター先生が会場の各場所に散っている教師陣とともに結界を張りなおす。
流石に学園長といえど、常時魔力展開を必要とされる結界維持においては集団のほうが有利だ。
それも教師陣はS級とA級で構成されている。
そう簡単に魔力も尽きない。
「……あなたがそんなことするなんてね」
「先輩が望まれていますので」
「悪い先輩にこれ以上影響受けちゃだめよ」
学園長はしぶしぶ立ち上がり、観客性の柵を乗り越える。
荒々しく着地したアンとは違い、風魔法で減速しながら静かに地面へと降り立つ。
「流石、『静謐の魔女』」
「あまり光栄なものでもないのだけど」
学園長につけられた二つ名、『静謐の魔女』。
最初はその魔法発動のよどみなさからつけられたそうだが、ここ最近は何年たってもその容姿に変化がないことから主に女性に羨望の意と共に呼ばれているらしい。
「いつの間にか王国の公式情報からも貴方の年齢が消えていたっていうけど、どういうことかしらね?」
「さぁ? どうしてかしらね?」
「毎年更新するはずの教師免許ではどう年齢を書いているのかしら」
「……」
アンの疑問にしらを切った挙句、黙秘。
この人マジでそんなやばいことやってんのか……。
「場もあったまってきたことですし、そろそろ始めましょうか」
「だな、号令を」
「では、このリヒターが立会人を務めさせていただきます。……はじめっ!」
ゴウッ!
物体が一瞬で加速する音がしたかと思うと、アンが学園長と切り結んでいた。
アンはいつもの長剣で学園長は細身の短剣。
良く力負けしないな。
「ライヤ! とりあえずいつも通りで!」
「了解」
つまり、アンが暴れてライヤが策を練る。
その間に相手に嫌がらせできれば完璧と。
【あとがき】
原神復帰したら死ぬほど任務溜まってて引退寸前です。
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受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける- haruhi8128 @haruhi-8128
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