第4話 瓦屋根に咲く花

8人兄妹の大黒柱だった、私の母が、男を連れて来て結婚するという。祖母にとっては晴天の霹靂以外のものではなかった。しかし、祖母は反対はしなかった。すぐに二人の住む家を探してくれた。駄菓子屋の二階である。その家の主人は戦死して、やもめになった奥さんは、少しの家賃でも稼がなければならなかった。海に近いその駄菓子屋には幼い子どもたちが3人もいた。寡婦になった奥さんは、独りで3人の子どもを養わなくてはならなかった。だから、この若いカップルを快く迎えた。

私は、母の連れ子として、この若い夫婦と共に暮らすことになった。

夜は3人で川の字になって寝た。

昼間は、その家の二階で、一階の屋根の上を歩いたりして遊んだ。

屋根瓦と瓦のつなぎ目に、名も知れぬピンク色の可憐な花が咲いていた。その花を摘んだり、男が教えてくれる読み書きを習ったりして過ごした。

男は、幼い私がかわいかったのだろうか。「いろは」を読めるように指導してくれた。男のおかげで、私は小学校に上がる前に、既に本が読めるようになっていた。

「いろは歌」は、ただ平仮名を覚えるだけでなく、和歌としての意味があることも男から教わった。男は、貧乏な家に育った母の夫にしては、学があった。おそらく、商船学校の出身だったのだろう。学があるだけでなく、連れ子を教育するほど愛情のある優しい男だった。

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私生児 @chayoi

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