火魔法
火魔法は、熱を操る魔法である。それは熱するだけでなく冷やす現象も含むが、すべて合わせて火魔法と呼ばれる。古くは学術上も火魔法と氷魔法(どちらも、古来、その魔法によって火種あるいは氷を作り利用していたことから)と、呼び分けられていたが、時代が進み、物質の態や、熱現象への理解が進んだ結果、火魔法に統合された。ただし、火魔法による加熱と冷却の両方が得意な人、加熱得意で冷却苦手の人、逆の人、どちらも苦手な人、の四分類についてその比率は、1対80対10対9である(どちらも苦手な人の九割九分はそもそも魔法が苦手であろう)。よって、使用上の差異も大きいことから、学術を離れた実用面では、火魔法と氷魔法とやはり分類されて呼ばれている。
火魔法の本質は、質量粒子に作用する加速場と制動場の発生である。
加熱の場合、マナを構成する微粒子マギオンは、保有するエネルギー量に応じた加速場を展開する。電荷と電場、あるいは質量と重力場をイメージしたらいい。
この場を通過する質量粒子は、加速され、与えたエネルギーだけマギオンはエネルギーを消費し、加速場は次第に縮退する。これがマナ消費となる。
マクロ的に見れば、固体が対象なら振動を大きくし、液体や気体なら構成粒子の平均運動量を引き上げるので、それが温度上昇として表れるわけだ。
なお、エネルギー損失として、一部エネルギーは赤色の光となる。これをどれだけ抑えられるかは、使用者の技量次第である。ゼロにはできない。
次に冷却について。この場合、マギオンは制動場を発生させる。質量粒子の運動を阻害し、その分のエネルギーをマギオンが吸収する。その結果、対象の温度が低下するわけだが、問題はエネルギーの増大したマギオンである。
詳細は青魔法(マナの相互作用)にて扱うが、そもそも我々はマナの制御に魔法を使用している。例えば自分の身体から離れた位置で魔法が発動することや、思念によって魔法が発動することは、そうした制御の結果である。そして、各人には制御可能なマナの最大保有エネルギーが存在する。マナ量やMPと呼ばれる大きさは、マギオン1単位あたりの最大エネルギーと保有可能なマギオン量の積である。ちなみに、同じマナ量でも最大エネルギーが大きいほど火力が高くて燃費が悪いという傾向にある。
閑話休題。火魔法による冷却はマギオンのエネルギーを増大させ、これが制御可能なエネルギー量を超えたとき使用者を離れることで、マナが消費されるという仕組みである。冷却が苦手な人は最大エネルギーが低くマギオンあたりの吸熱量が少ないうちから放出してしまうのだ。逆に言うと、冷却が得意な人は制御可能な最大エネルギーが大きいということであり、それはつまり、総じて大火力でガス欠が早い人が多いということである。例外もいるが。
使用するとエネルギー損失で水色(赤の補色)に光る。この発色の違いも、伝統的に火魔法と氷魔法に分別されていた理由の一つである。
火魔法は火を扱わない。火は結果である。そもそも、火炎は燃焼によって生じる現象であり、その発生には可燃物が必要である。竜類など火炎を吐く種族が存在するが、彼らは可燃物を口腔付近に蓄え、それを火魔法で加熱して放出しているに過ぎず、火は酸素と触れた結果の自然発火だ。
まれに頑張る人がいるが、危険レベルの火魔法を自分に使用してしまっても自動防御が働いて問題ないのに対して、発生した火炎は無差別に熱を振りまく。結局自衛のために火魔法による冷却を行う必要があり非常に効率が悪い。
火魔法の中でも加熱は、攻撃を目的に多用される。生物や魔物の多くは熱に対する耐性を自然に身に付けることは少ないので、その生命力を削るのに有効であるからだ。周辺環境に熱源が多い場合(火山近郊など)には生物や魔物が熱への耐性を身に付けている場合があり、また熱の脅威を体感した魔物などは、やがて熱耐性を習得することがある。竜類の多くは熱への耐性を生まれつき備えていることが多い。彼ら自身が熱を攻撃に利用するためだろう。
手段として最も多いのは、武器を加熱させることだ。そのためには、物にマナを流す技術が必要であり、応用の第一歩とされている。他に、熱気の放出も攻撃に有効だ。風魔法などで気体を制御しつつ、火魔法で加熱、これを相手にぶつける技である。なお、空気は無色でも、加熱すれば損失光で赤く光るので視認は容易である。そのため、どうせ見えるならと、光魔法も混ぜて火の玉らしく見せる人もいる。というか、多数派である。
冷却は中々応用が難しい。一般には生活用途にしか使用されない。敵に触れれば凍結させることができると言うが、相手のマナを突破できるなら他の魔法でも同じだろう。ただし、使用者が大変な手練れで、水源を用意できれば話は別だ。風魔法で水を操り、冷却して凍結させることで拘束も攻撃も可能である。
魔法論草稿 TETA @TETA
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