フレンズから国民を守る党 1章
「うはああ!! 出来たぞお前ら、大きなかぼちゃが大量だ!!」
東京の山奥のとある村ーー「ヒノハラ」と呼ばれる小さな集落にて、ハヤブサのフレンズが大きな声を上げてフレンズたちを呼んだ
フレンズたちは歓喜の声やそれぞれの鳴き声をあげるなどして喜び手を取り合った
「ふむ。この様子だと順調に育って盗みをしなくても良くなるだろうね。よく頑張った、これは君たちの努力の結晶だよ」
「ああ、ありがとう人間のじいさん。これでフレンズたちは安全に暮らせるようになるだろう。少しはまとめやすくなるかもしれないな」」
怪我をしていたハヤブサを助けたことで唯一ヒノハラのフレンズたちと共に生活している10人ほどの老人たちも、それを嬉しそうに見ていた
少子高齢化が進んだことでこういった小さな村落からはどんどんと人が流れ出てしまい、久しぶりに若い世代が活気付いてるのを見れたのも嬉しかったようだ
「楽しそうね」
「君はあの子達とは遊ばないのか?」
村の看板に腰掛けていたタカに、一人の老人が話しかけた
「私は別の場所で暮らしてるの。フレンズを大切にしてくれるいい人が居るのよ。だから私はここで関係を作る気はないわ」
「でも友達を増やすのはいいことだ。フレンズだって人間だって、腹を割って話せる友は多ければ多いほど楽しいもんだよ」
タカは何も答えない
集落では鶏のフレンズを中心に養鶏場の建設が始まっており、多くのフレンズが資材を持って行き来していた
「私は帰るわ。また話しましょう、優しい人間さん」
「おうよぉ…」
老人が返事した時には既にタカはどこかに消えていた
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「って感じ」
「って感じだそうです、ミライさん」
『って感じですか。農耕の上に簡易的とは言え畜産まで……ご老人の助けはあったとはいえフレンズさんの力は底知れませんね。今日も報告ありがとうございます。あ、そうそう、事務所を増築することで…本当に良いんですね?』
「構わないですよ、家が経費で増えるようなもんですし」
『了解です』
実はこの事務所は元々すんでいた家の隣に設置されていた
父含め三人一緒だったときにローンは払い終わっていたが老朽化も気になる上に移動も大変なので土地含め売却しそこに事務所を増築するという決定を下していた
という名目だが実際には取り壊しなどはせず、少しだけ壁をぶち抜いてつなげるだけのようだ
家の原型も残り土地代も帰ってくるとは何たる良心的な対応だ
「これでお父さんの借金は払い終わっ……え?」
母が唖然としていたので携帯を覗き見ると、父親の名義で既に返済は終わっていた
いや……詳しくは言わないが7桁レベルのをどうやって?
「ハッハー!!!! 帰ったぞ!!! ただいま!!!!!!」
「あなたっ!!??」
「え? えええ????」
3年ぶりに聞く父の声だ
何と今になっていきなり帰ってきたのだった
詳しく話すと長くなるのでまとめると、父は4年ほど前に研究で大失敗し、借金を抱えた状態で同居はできないと言って母の静止も聞かず飛び出していた
「お前らフレンズは知ってるか? 父さんはその研究で大成功して借金が消し飛んだんだ。
……三年間帰れなくて済まなかった」
「もういいのよ、あなたは悪くないんでしょ」
「もう終わったことだしこれからはまた家族三人だ、それだけだろ?」
「そうだな、家族三人だ。ってことで、焼き肉だ!!!!!!!」
「妹たちが怖がってるでしょ、今すぐ黙って……だ、誰!?」
父のテンションに半ギレのタカが出てくるも、見慣れない顔を見ると爪をむき出しにして構えの姿勢をとった
「今父さんの頭の中で~歯車が回ってるぞ~はい、答えが出ました。
ずばりお前結婚したな? 随分凶暴に見えるが早速相手の家に挨拶しに…」
「いや未婚だよ」
「じゃあ彼女か?」
「それも違う…うん、違うと思う、たぶん」
「私に状況を説明してよ! 一体誰なの?」
タカに説明してやるとようやく警戒を解き、若干怪しみながらも父さんの目の前に詰め寄った
「もしやお前、フレンズか」
「…そう。あの人間が色々助けてくれてここに住んでるの。妹も一緒よ」
「おお~居ない間に大所帯じゃないか。ということはこの隣のおっそろしい数のフレンズたちもお前か。……もしやミライさんの言ってたフレンズを教育する青年って……そういうことか。とりあえず焼肉行くぞ、話はそれからだ」
その後7人で焼き肉に行きました
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『フレンズを、このままにしていていいんですか! 今どんな外交よりも、税よりも、法律よりも! やるべきことがあるんじゃないですか、皆さん!! さあ、声を上げましょう! 人間の力を見せてやりましょう!
さあ一緒に、ジャパリパークをぶっ壊す! ジャパリパーク計画を進めてる職員さんも一緒に、ジャパリパークをぶっ壊す! やるわけないですね!』
「お腹いっぱいじゃなかったらあいつを八つ裂きにしてやってたわ」
「…はは、お腹いっぱいになったなら良かったよ」
焼き肉に行った帰り、車に乗っていると選挙カーでフレ国党首のタテバナが演説をしているのが聞こえてきた
オオタカキッズは熟睡していたが、タカは俯いて目だけ閉じていた
「フレンズを保護するはずのジャパリパークまで壊すなんて、あいつらのやっていることはふざけ半分じゃ許されないよ。フレンズちゃん、父さんは君たちを家族の一員として受け入れるし、研究者としての立場を抜きにしてフレンズを助けたいって思ってるんだ」
外を見ると多くの人だかりができてタテバナを囲み、演説に合わせてコールしたり同調しているものも数多く居るようだ
「フレンズに人権を与えて保護できないのか?」
「国連はフレンズをどう扱うかの議論を続けたまんま、だんまりだ。政治家の殆どはフレンズ反対派が後ろに付いてるから国会もだんまり。こうなったら人には任せないでフレンズだけで何とかさせたほうが良いのかもな」
「なあ父さん、ヒノハラのことは知ってるか」
「ああ、フレンズが農業やったりして自由にやってるらしいな。沖縄でもフレンズ達がマングローブを占拠したらしいが観光の邪魔だからって強制排除だ。いずれヒノハラもダメになるだろうな」
「…タカ?」
「ちょっと…横になる…」
急にタカが俺の足の上に頭を置いたかと思うと、妙な水気が太ももに触れた
「…すまん、少し喋り過ぎちまった。ただ良いこともある。
PIPって言ってな、四人のペンギンフレンズを集めたアイドルグループがデビューする予定なんだ。そうすりゃ若いオタク層の世論はこっちのもんだし、国会も少しは動くだろう」
フレンズがアイドルか、なかなか面白そうだ
満腹になって爆睡するタカの顔を見ているとこっちまで幸せになりそうだ
俺のアイドルは……今膝の……なんてな
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父の帰還から数日後
「ああ……あああ………」
「な、なんっじゃこれはぁ! こりゃ除草剤でも撒かれたか…?」
ヒノハラに再び衝撃が走った
今度は悪い衝撃だ
フレンズたちが丹精込めて育てていた野菜の殆どが一晩の内に枯れてしまい、育っていたかぼちゃも何者かに踏み荒らされ食べ尽くされていた
「ハヤブサ。農業はこういうこともあるのだ。お前らも昔動物だったから分かるだろうが動物は目の前のものを食べるだけだ。人が頑張ったことなんて知りもしない。うまいから食うんだ。…こんな事は言いたくないが、お前らが盗みを働いた店の人間はこういう気持ちになることを肝に銘じておけ」
「そんなこと分かっている! くそ、まずは犯人をあぶり出して事件を終わらせるぞ」
ハヤブサは昨日建設したばかりの砦に飛び移ると、村中のフレンズを全て集めた
数にして100…いや300…もっとだろうか
ハヤブサ自身でも把握できていないところで勧誘が進み続けた結果、廃村レベルだったヒノハラはいつの間にか凄まじい人口密度を有する村となっていた
ハヤブサと同じく人に傷つけられた者、野生で生きていた者、動物園から逃げ出した者、さらに勧誘によって引っ越してきた者……
「私はこの村の長、ハヤブサだ! 初めに言っておくが
私達はフレンズを力で押さえつける人間たちに反旗を翻すためにこのヒノハラに集まった。そのためにはまず協力だ! この中では盗みも喧嘩も許さないぞ!」
フレンズたちが答えるように上げた叫び声は近くの森が揺れるほど響き渡った
志を同じくして集まっただけに士気はとても高い
そしてそんな状況を打破するかのように、女の園に聞こえるはずのない男の声がフレンズたちの耳に入った
「みなさん聞いて下さい! 私がなんとかしてみせます!」
男は無謀にもハヤブサのいる砦に飛びつき、ハヤブサのところまであっという間に登った
当たり前だが一瞬でハヤブサに捕まり砦の端で拘束された
「誰だっ! 誰がこいつを入れたッッッ!!!!!」
ハヤブサの脳裏に自分の毛皮を剥いで気味悪く笑っていた男の顔が浮かび、捕まっている男とすぐに重なった
するとハヤブサの側近のチョウゲンボウがハヤブサの元に降り立ち男を救出した
「こいつはヒノハラに迷い込んでいた人間だ。この集会を見られた以上やすやすと人の世界に返すわけはいかないし、頭は良いようだから利用することにしたんだ。もちろん猛禽の集いのメンバーでこいつを一日中監視する。昼はノスリ、夜はコノハだ」
「任せろハヤブサ!」
「我々は目がいいので、怪しい動きは見逃さないのです。気にせず任せるですよ、ハヤブサ」
ハヤブサの脳裏に、スイカの畑を襲ったときに捕まりさんざん辱めを感じさせられた男の顔が浮かびそして目の前の男と重なった
正直言えばこいつも今すぐ八つ裂きにしてやりたい
しかし今は自分を慕うフレンズと自分を村に受け入れてくれた人間の老人が見ている
それにまだ何かをしたわけではない
「うぐ…ぐ…クソっ! さっさとこいつを倉庫に入れておけ、逃がすんじゃないぞ」
「わ、私フレンズさん達のために一生懸命頑張ってみせます!」
「黙れ!!」
男は何かを言おうとするもフレンズたちに引きずられてどこかに連れて行かれた
男の乱入によって場は崩れ、すぐにフレンズたちはそれぞれの持場へ戻っていった
______________
「ふーんふーんふふーんふーんふーん……」
「君は人間である私に抵抗はないのかい? ここのフレンズは皆始めから私を嫌っていてとても怖いんだ」
いつものようにタカがヒノハラで作業を手伝っていると集会の時の男が喋りかけた
「勘違いしないで私もあなたのことは嫌いよ。でもヒノハラの発展に役立つことを知ってるからこうやって協力してるだけ」
事実、男が来てからヒノハラにいろいろな制度が取り込まれかなり近代化した
夜行性のフレンズ用の住居や公園を作ると今度は山を開拓してヒノハラを拡大し、更にフレンズを能力ごとに班に分けることで仕事の効率も信じられないほど上がった
それのおかげか食糧問題はほぼ解決し、人の街に行く頻度もかなり抑えられている
それ故に元は敵対していたフレンズたちも少しづつだが認めるようになったようだ
「そういえば君は、人間の家で暮らしているんだろう? 人間を忌み嫌うヒノハラに居るのに矛盾しているじゃないか…」
「黙って! あなたには関係ないわ!」
「おっと、大きい声を出さないほうが良い。これがバレれば君は間違いなく追放されるだろう。ハハ、人間はすごいんだ、舐めてもらっちゃ困る」
その時男が不気味に笑ったのをタカは見逃さなかった
視力が良いだけに少しの表情の変化も簡単に感じてしまう
そしてなぜかタカはこの男に見覚えがあった
よくはわからないがとても嫌な雰囲気を感じた
「もう関わらないで」
「おおっとまだ話は終わっちゃいない。調べたところ君は4件の強盗事件と複数の窃盗事件、更に傷害事件も起こしている。その被害者は大量出血で未だに意識不明」
「あっ…あれは……!」
「命がかかってるから? 妹とやらが飢えていたから? 何だか知らんが君の勝手で起こした事件なら何をやっても許されると思っているのかい? 残念ながら人の世界はそんなに甘くはないんだよ……!」
ついに滲み出した男の本性にタカは恐怖し飛び去ろうとしたが謎の男はそれを見逃さなかった
「悪いのは君だ。犯罪行為を働いた君が10:0で悪いのさ。でも今すぐ捕まえやしない。私の言うことを聞いてくれれば君や妹たちの安全は保証する」
「わ、わわわ分かったわ…言うことを、聞くわ…いやぁっ!?」
男がドライヤーのような機械をタカに向けると羽の動きが止まり、タカは受け身も取れずに真っ逆さまに地面に落ちた
「これはサンドスター不活性化装置。言うことを聞かなければいつでもこれで動きを止める。……さあ命令だ。ヒノハラのフレンズたちを鼓舞して人間の街に対しての戦いを起こせ。ハヤブサとやらに言えば一瞬だろう? 馬鹿なケモノはすぐに感情に流されて実行するはずさ…!」
「なんでそんなことを…? ぐっあ!?」
「理由を知る権利はない。弱みは全て私が握った以上選択肢は1つに絞られるはずだ。さあやれ今すぐだ! 人とフレンズの戦争を……起こせぇ!!」
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