朕の息抜き短編集

ペロ2

もしフレ

オオタカ編

もしもフレンズが本当に居たら オオタカ編1

 どうも


 こんにちは


 ねむいです


 おねがいします



 ______________


 舞台は20XX年、世紀末ッッ!!! 

 なんかヤベー感じがするだろ? いや本当にヤベー。


 具体的に言うと富士山がぶっ壊れた。ぶっ壊れてどうしたかって? いきなり虹色の物質が吹き出してきてそこら中の動物が女の子になりやがった。


 やべーだろ?

 意味わかんねーだろ?


 しかも山体崩壊した富士山からは謎の虹色の物質が吹き出し続け、動物の女体化はどんどんと進んだ。


 ああそうだ、わかり易い名前があるからそれを使おう。


 フレンズとサンドスター。


 虹色のほうがサンドスターで、女の子のほうがフレンズ。ハアーまるで変な宗教みてえなネーミングだな!! マジ色即是空!! アッラー万歳!! 


 ____________



 テレビからはフレンズのニュースばかりやっている。ちなみにフレンズ自体はあまりの数のせいで珍しくもなんともなく、普通にそこら辺に居る。



「オラあ!! 失せろ害鳥!!」



 ゴミ袋に集まっていたカラスとそのフレンズが家の主によって追い出された。

 フレンズは元になった動物の習性をそのまま受け継ぐらしく、街に出ると電柱に登る女の子やゴミを漁る女の子、空を飛んだり川を泳ぐ女の子までいる始末。


 もちろん政府が黙っているわけもなく、彼女らをどこか一箇所に集めて暮らさせようとする試みがあるらしいが

 フレンズは共通で日本語を使い、会話程度ならできるらしいが本能に従って動いているためやりたくないことはとことん拒否する。


 昨日も自宅に近づいたフレンズを捕まえようとして八つ裂きになって発見された男のニュースが流れて話題になった。



 そんなこんなで……ほぼ人間と同じ姿のフレンズとどう接していくかが社会問題となってしまったのである。



「ねえ君…フレンズ、だよね? お金は持っているのかな?」



 言い忘れたが俺は苦学生のコンビニバイターです。お金がほしいので深夜頑張ってます。


 フレンズについて考えていたらお菓子売り場で物欲しそうに棚を眺めているフレンズを見つけた。種類はわからないが猫のフレンズだろう、一対の耳が頭から生えている。尻尾は隠しているが簡単にわかる。



「俺だってこんな事は言いたくないんだけどさ、お金を持っていないなら居てほしくないんだ。他のお客さんが来なくなっちゃうからね。君には魚とか虫とか食べるものがいっぱい……


「……ッ!!」



 油断していた。

 フレンズはお菓子を掴み取ると俺と逆方向に走り出し店の出口へと向かう。恐ろしい身体能力なので足では追いつくことは出来ないが……



「キャア!?」



 隠し持っていたテーザー銃(スタンガンの飛ぶバージョン)でフレンズを狙い撃ちし動きを止めることに成功した。


 実はフレンズによる被害額は年間なんと5兆円。主に器物破損、次に万引や窃盗が後を追う形だ。そのため政令によってテーザー銃の所持が義務化されている。



「暴れるな!! まず落ち着け!! 落ち着け!!」

「シャアアァァァ!!!! 人間はフレンズを捕まえて酷いことするんだ!! 離せ!!」



 女の子の姿なのに恐ろしい力。

 踏ん張って押さえつけるのがやっとなほどだが、もみくちゃになっているうちになんだか今の自分やっていることがわからなくなってしまった。



 俺は今まで何人ものフレンズを捕まえてきた。警戒心と体力がすごいので逃がすことも多いが…


 捕まえたフレンズは皆抵抗した。俺はそのたびに怪我をしたが、フレンズを捕まえることで一種の快感のようなものを覚えていたのかもしれない。


 しかし彼女らは皆必死に生きていた。人間の犯罪とは違い悪意はなく、ほとんどがフレンズになってすぐ街に迷い込んで万引き以外に選択肢のない者ばかりだった。


 街に迷い込んだフレンズはまともな教育を受けることもなく盗みを働き、捕まれば自由など程遠い……



 あくまで噂だが、こうして捕まったフレンズは皆強制的にサンドスターを抜かれ動物に戻されているらしい。


 そんなこと、あっていいのか?



「猫ちゃん」

「な、何だ!?」

「俺が離せば落ち着いてくれるか? 下手に騒げば危険なのは君だ。今は店長が仮眠室で寝てるから起こさないうちに黙ったほうが良い」

「嘘だ!! どうせ騙して捕まえるんだろ!」



 これ以上話しても意味はない。行動で示したほうが手っ取り早い。


 俺はフレンズを拘束していた手をどけ、立ち上がった。



「さあどうだ?」



 フレンズは目を丸くしていたが、俺の方を見つめた後



 俺を突き飛ばし



 思い切り引っ掻いた後



 俺が脳震盪で気絶している間に夜の街へ消えていった。




 ___________



 親と警察と店長と、凄まじいメンツに囲まれて最悪の一日を過ごした。


 結局俺を襲ったフレンズは特定できず、捜索はしているらしいが手がかりは0。フレンズの犯罪のほとんどはこうらしい。


 ちなみに時給が上がりました。最高です、神様仏様店長様。



 __________________



「いらっしゃいませ」


 そして相変わらずの夜勤。軽い脳震盪と裂傷を3針だったのですぐに退院できた。


 今日もフレンズが来たらどうしようか…

 フレンズが来店する頻度は週に2回ほど、盗まずに逃げていくパターンもあるが次はそのパターンで来てほしい。


 っていうかフレンズは来るな!!!!



 そんな事を考えているとガラスの割れるような音が響き、現実に引き戻された。



「お、おいなにして…ぐわあああああ!!!」

「ひでぶ!!」

「ぎゃああああ!!!!」

「うわらば!!」

「やめろおおおお!!!!!!」



 なんと店内で白い服の少女が暴れまわっている。大きな翼に黄色い前髪は……猛禽類のフレンズだ。

 猛禽類のフレンズは知能が高い上に戦闘能力も高いので遭遇した場合は逃走が基本となっている。見た目も高校生くらいなので舐めてはかかれない。


 ちなみに客を含め店内の人間はすべてボコボコにして黙らせたようで、監視カメラまでが丁寧に壊されている。さすがとしか言いようがない…いやそんな場合じゃない。



「ちょっと待ちなさい、逃がすわけ無いでしょ? あなたはレジを開けさせるために残したの。さあ早くありったけの現金を袋に詰めて渡しなさい」



 ダイナミックコンビニ強盗~~~~



「ひっ…お金は渡しますからっ…! なわけないだろ強盗め!!」



 俺はテーザー銃を早打ちの要領でそのフレンズに向けて撃ったのだがきれいに避けられた。いくらなんでも動きが速すぎる。反応速度と運動能力が生き物じゃない。


 …実際フレンズが登場した後目に見えてオリンピックのチケットの倍率が低くなってしまったほどだ。家をすこし出ればフレンズ達が恐ろしい挙動で駆け回ってるからね。




「そうやって私の仲間は何人も捕まったのよ…! 命は奪いたくないの…!」



 襟を掴まれて引き寄せられた。



「いくら教育を受けていなくても何をやってるかぐらい分かるだろう!? 無抵抗の人間を殴り倒して金を奪うなんて許されると思っているのか!?」


「スタンガンだから殴ってなんか無いわ! それに人間のほうが酷いことをしてるじゃない! 目が合えばエアガンで撃ったり殴ったり、住処だって何度も燃やされたわ! 人間にはわからないでしょうけど私達だって守りたいものはあるの! 他に方法があったらこんなことしたくないのよ…」



 よく見ると俺を掴んでいるフレンズの鎖骨のあたりには痣があり、腕には火傷のような痕がある。かなりひどい仕打ちを受けてきたようだ。



「み、見ないで!! 早くお金を出して」

「どうせ警察が来ても逃げられるんだし、色々教えてくれよ、お前のこと」

「フン…物好きね! 私に興味を持つ人間なんて初めて。みんな初対面で刃物を向けてくるわよ。あなたもまだなんか隠し持ってるんでしょうけど」



 フレンズはカウンターに腰掛けて自分の羽で遊び始めた。



「いや、それはお前が強盗するからだろうが。ていうか強盗のくせに店員の前で隙見せて良いのか?」

「人間にはやられないわ。知能は高いけれどバカばっかりよ。前強盗に入ったコンビニの店員も無駄だって言ったのに抵抗を続けたから少し喋れないようにしてあげたわ」


 知能が高いだけのバカはどっちだよ。

 しかしこのフレンズ、さっきから自信に満ち溢れている。よほどの強盗常習者なのだろう。


 もし犯罪に手を染めていなかったらどうなってたんだろうなぁ、この子。

 ていうか羽根はどうでもいいけど結構かわいい。



「あ、あまり見ないでちょうだい。お金を出す気にはなった?」

「もう一つ。お前そんだけ頭いいなら働こうとは思わなかったのか? 慎ましい態度で都庁とかハローワークとか行ったら少なくとも話題になって肉体労働くらいなら紹介してくれるだろ?」


 その時初めてフレンズの表情が曇った。


「辛いこと、あったのか?」


 フレンズは首を横に振った。


「強がんなよ」


 フレンズは動かなくなった。


「ここで働いてみないか? 強盗の前科はまあ、うちの店長優しいしなんとかしてくれるはずだ。お前が生きるくらいの金ならすぐに稼げるだろう。どうd

「黙って!! 私だってあなたの言うまともなことはしたわ! でもダメだったの! あなたに分かるはずがない!! はやく、早くお金を……出して……」



 俺日本人で初めてコンビニ強盗に同情したかもしれない。仮にここまで仕組んだ上で強盗に来ているのならこのフレンズはハリウッドに出れるだろう。


 初めて至近距離で女の子の涙を見たというのもあるが、俺の心は昨日のことを忘れ……ああ、思い出した。


 こいつも生きるのに必死だ。しかし昨日のことがあるので……昨日のことがあるので……くそ、どうしても良心が先に行く。しかしもう怪我はしたくないし、バイトに支障をきたしたくないのでこいつには手を出さない。



「お前らのことは嫌いじゃないがこんなことは辞めておけよ。ああほら、金だ。女一人ならこれでなんとかなるはずだ。さっさと失せろ!」

「ひ、ひとりじゃなっ…どうも!!!!!」



 その後強盗フレンズは見つかることなく、俺が店長にガチ土下座(途中で止められて出来なかったけど)することによって事件は終了…してないけれども、一旦は落ち着いた。




 _______________



 それからしばらく経ち、少しだけ分かったことがあった。


 あの時強盗を行ったのはオオタカのフレンズらしい。元は里山に住み里山の王者とも呼ばれていた狩りの名手だとか。

 さらに俺が遭遇したのは近所でも有名で、数年前からいきなり押しかけてきては強盗を繰り返しているらしい。



「これ、あなたが遭遇したフレンズじゃない?」



 ある日給料明細を整理していると母に呼ばれた。テレビを見ると、緊急速報として……アイツだ! 俺の遭遇した、胸と腕に傷のあるオオタカのフレンズ!



『警察庁は新たに30名のアニマルガール、通称フレンズを指名手配することを発表しました。被害の多い場所が集中していることから対象地域での猟銃使用を特例的に合法化し、また……』

『犯罪者とは言え少女に実弾を使うなんて……』

『フレンズは変異した伝染病を媒介するとの噂が…』

『若干ゃ残酷すぎませんかねぇ…』



 ネットを見ると主に店の経営者や被害にあった人間たちとフレンズ擁護派で争っている。確かに強盗にあって売り上げを持っていかれた恨みはある。


 しかしそれ以上に彼女の必死な表情が脳裏に残っていた。学業のために睡眠時間を削ってやりたくもないバイトをする自分とシンパシーのようなものを感じてしまった。


 アイツもやりたくないことをやってるんだ。


 せめて、今回だけ。



「ちょっと出かけてくる」

「気をつけるのよ。職質されないように」



 _________________



『今すぐ姿を見せろ!! お前のおかげでどれだけ損をしていると思っているんだ!! タカならおとなしくネズミでも食べていれば良いじゃないか!! おとなしくでてくれば捕まえたりしないぞ!!』



 オオタカのフレンズが強盗を繰り返した結果怒り狂った商店街の店員達が武器を持ち出し、住処の山に入り込んで拡声器で威嚇していた。


 元々警察が密かに捜査していたが逃げ回るフレンズの情報を掴めなかった上に怒り狂う住民を押さえきれず、増援を待つしかない状態になっていた。


 何発も威嚇射撃を繰り返しながら山をくまなく探したが見つからず貯まるのは怒りばかり。時間が経つほど放火を考える人間が増え、ついに怒りが最高潮に達した。



『フレンズ以外逃げろ!! 火を放つぞ!!』



 警察の増援が到着したときには既に山は火に包まれていた。


 _____________




「見ろ! へへ、ガキのフレンズだ! こいつでおびき寄せるぞ! いくら強盗常習犯でもこれは無視できないはずだぜ…おい! 仲間の場所を吐けよ」

「私何も知らない! 早くお姉ちゃんと一緒に……あっ」

「おいお前ら聞いたか!? こいつあの強盗フレンズの妹だってよ!!」



 地面に押し倒された小さなフレンズはあっというまに住民たちに囲まれた。



「さて、本家を捕まえる前に憂さ晴らしだ。死なない程度にいたぶってやれよ」

「や、やだ!! いだっ…お、おねーちゃ……」

「分かるか? お前らは人とは暮らせないんだ。半端に人の暮らしを知ったら生きて返せないんだよ! 人の姿だろうが所詮動物だろうが!」

「人語を話すな!! どうせ全員捕まえて動物に戻すだけ……ぐわぁ!!」



 小さなオオタカを殴っていた男が唐突に吹き飛んだ。

 人が吹き飛ぶ……想像しづらいが文字通り、なにか圧倒的なエネルギーによって吹き飛ばされてそのまま気を失った。



「お尋ね者のお出ましだ!! 撃て!!」



 その場にいるだれもが見覚えのある白い影。


 同時に猟銃の一斉射撃が始まった。しかし高速で飛び回るフレンズには複数発しか当たらず、動きを止めるには至らなかった。


 複数発……



 小さなオオタカのフレンズを取られまいと大男が羽交い締めにするが、わざと隙を見せて無駄玉を消費させつつあっという間に距離を詰め男ごと持ち上げてしまった。



「私の…大切な……返し、て!!」

「強盗め!! お前俺の店から二枚も布団を盗んだだろうが!!」

「離しなさい! おとなしくしないと落とす…!」

「殺人の罪は思いぞお! そんな血だらけで長くないんだから下に降りて楽にしてもらうことだな!! さあ選べ、空中で失血死か、楽にくたばるか!!」

「どっちも嫌…絶対生きて帰るん……うっぐ…」



 しかし犯罪を犯してしまった罰が当たったというやつか…

 もう一人の小さなオオタカが見つかり、これまた大男に羽交い締めにされていた。


 追い打ちをかけるように拡声器を持った男が叫ぶ。



『10数える間に降りてこないとこいつに0距離で撃ってやる!! さあ降りてこい!! 9!! 8!! 7!! 6!! 5!! どうした!! 悪あがきか!? 4!! 3!! 2!! 1!!』


「ごめんなさい…どうせだったらもうちょっと、もうちょっとだけあなた達と生き延びたかった。でももうダメなの…

 だから最期くらい皆で一緒に居たい。


 人間。下りるって、伝えて」


「おねーちゃ! あああああん!!!」


「おい!! こいつら下りるってよ!! 全く感動モノだぜ!! 最期まで一緒にいたいだってよ!!」



 猟銃を構えた住民たちから笑い声や罵詈雑言が上がる。


 覚悟を決めたフレンズはついに男を抱えたまま猟銃を抱えた人間たちの元へ降りていく。どんな未来になるかは体験せずとも既に分かっていた。



 フレンズが地面に降り……


 刹那、乾いた破裂音が何発も何発も街に響いた。







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