フレ国編
フレンズから国民を守る党 序章
「チ○コちゃんが怒ってるんじゃない、この岡ちゃんが怒っているんだ」
「ジャパリパークを~ぶっこわ~す!!!!」
「不倫ですよ? 路上ですよ? カーセッ…」
タカが怒り気味にテレビのスイッチを切った
近頃は変な奴も多い、特に選挙の場を借りてフレンズの行為を糾弾するものまで現れ始めたほどだ
「だいぶ慣れたな。やっぱりミライさんの言う通り人並みかそれ以上の知能持ってるんじゃないか? 少し勉強すりゃ俺なんてあっという間に見下されそうだ」
「フフ、そうね。妹たちが育ったら人としての力をつけることにするわ」
「おーおーがんばれよ」
タカが自身に満ちた笑みを浮かべると念じるようにうずくまった
すると飛び出すように1対の大きな翼が出現し、そのまま開いた窓から飛んでいった
どうやらフレンズは念じることで人に化けることができるようで、広まって日本中のフレンズが変身しだしてはきりが無いのでミライさんだけに伝えておいた
「ごすじん、おはようございます」
「よく寝れたか」
「もちろん!」
ソファで寝ていたミケが目を覚ました
ミケ…こいつはタカの前に俺のコンビニを襲撃したフレンズで、詳しく検査した結果マンチカンとアメショの雑種がフレンズ化したものだということがわかった
実はタカを助けて家に連れ帰った翌日タカの妹たちがセルリアンに襲われていたところを助けてもらい、それから結局同棲することになっていたのだ
「点呼を取るぞ、集まれ!! 来ないと昼飯ないぞ~~」
俺が声をかけると事務所の中で好き勝手遊んでいたフレンズたちが集まり、俺の前に集まった
捨てられた犬猫、池で暮らしていた亀達、さらに野生で暮らしていた様々な鳥やネズミ…… さすがに動物が全てフレンズ化したわけではないが、数の多い動物を除けば大体100匹に一匹はフレンズ化したようで事務所の近くで軽く声をかけただけでもこれだけ集まった
おっと、事務所がなにか説明していなかったな……
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セルリアン大量発生事件から数ヶ月、ようやく社会でフレンズとセルリアンに対する議論が活発になり(さっきのような奴らも出てきたが)保護をしようと考える人間も多くなってきた
そこで将来のジャパリパーク計画の基礎づくり、また売名のためにも日本各地でこうした事務所を開き、野良フレンズへの教育、犯罪を起こしてしまったフレンズの更生、またある程度慣れたフレンズに対して労働力やマスコットとしての派遣を行っているのである
これも全てミライさんの行動力とカリスマ性あってのことだ、つまりあのひとはやべー
ちなみに警察はフレンズの数の多さに匙を投げ出し、それもあってこうして民営でフレンズを保護できている
ちなみに現在フレンズ保護事務所の数は日本全体で一つ!!!!!!!!!!
ここが原点にして頂点!!!すごいね!!!!!!!
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「さっきタカが出ていったのを見たと思うけど、移動が得意なフレンズはああしてパトロールに出てほしいんだ。悪いことをしているなら今すぐ止めてほしいし、それが難しいなら電話を使って俺につなげてほしい」
ミケに声をかけると、経費で買った子供用の携帯をフレンズたちに配りだした
その後外に出せると判断したフレンズは少しずつ外出させ、事務所には数人のフレンズと俺だけが残った
許可とは言ったが望んだフレンズは全員外出しており、残ったのは亀のフレンズだけである
彼女らは何故か自分から外出を拒み、毎日窓際で甲羅の日干しを続ける生活のほうが好みのようだ
「はぁぁぁああ安心できる場所でぇゆっくりできるのはぁとっても良いですね」
「あったかい…」
「たまには外に出ても良いんだぞ」
「いえ、私は良いんですぅ。だって人間は怖いですから。動物のときからひどい扱いでしたよ、もう」
そういうミドリガメの顔は相変わらず和んでいるが少しだけ影がさしたのを見逃さなかった
そういえば今のように動物のときの記憶があるフレンズも居ればタカのように忘れているフレンズも居るようだ
「ねえ、人間さん」
「ん? どうした?」
「とぉっても気になることがあるんですぅ。今思い出したのでぇ話しておきたいなあと思って」
話を聞いてみると、どうやら人間に反抗したいという考えを持ったフレンズたちが組織を作り、その上町のフレンズたちに組織への加入を勧めて回っているらしい
「まあ私は動きが遅いのでぇ、そーゆーのは断ったんですけど、手の指が足りなくなるほどには誘われたフレンズがいましたね~」
人間への反抗
組織化したフレンズ
まずい匂いがする
すると持っていた携帯に着信が入り、取ると焦った様子のミライさんの声がした
『今すぐテレビをつけてください! SNSでも良い!』
指示された通りにテレビをつけると、画面には一面に貼られた規制線と忙しく動き回る救急隊員の姿があった
『組織化したフレンズがスーパーマーケットを襲ったようです。死亡者はいませんが止めようとした従業員はみな引っかかれて最低10針……かなりの数だったようです』
「そのことなんですが…」
俺はミドリガメから聞いたことをすべて話した
『このままだと戦いに発展します! もし戦いになれば…』
「…フレンズに勝ち目はない」
『私なりにも頑張るので、あなたもできることをしてください! フレンズさんの未来のために!』
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「ただいま、ごすじん!」
「おいどうした!? 何があった?」
電話が切れてしばらく寝ていると、ミケが息を切らして帰ってきた
「怪我はしてないですよ、ごすじん。でも手足の指を使っても数え切れないくらいのフレンズがいきなりやってきて、『人間が嫌いならヒノハラに来い、もう好きにはさせない』とかなんとか言ってきたんだ」
「ヒノハラ… そ、それで? なんて言った」
「丁重に断って、この事務所のことを教えてあげたニャ」
「……ミケ、お前は何一つ間違っちゃいない。ただ相手が悪かった。大切なものを今すぐしまって、できるだけここでリラックスしているんだ。きっとそいつらはここに来るだろう」
ーーウウーガルルルルルル!!! ギャン! ニャー!! ーーー
「いらっしゃった」
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「いらっしゃい」
一瞬で事務所は数十人のフレンズたちに囲まれた
二人のフレンズが指揮しているようで、他のフレンズたちはギャーギャーワーワー己の鳴き声を上げて叫んでいる
「お前、フレンズを人に変えてるんだってな! こんなせまい建物に閉じ込めて、一体何のつもりだ!!」
「「「「「「「そうだーフザケンナー」」」」」」」」」
「いいかよく聞け。人にしてるんじゃない。人と一緒に暮らせるように、人間の社会でのやり方を教えているんだ。どちらかが侵略されて片方が抑圧されることのないように、共生の仕方を教えているんだ」
「そんなの無理ニャ! 魚を取ったら殴られたし、肉をとっても怒られた!」
「自分で海や草原で狩りをしたのか? 違うだろ、それは人間が狩り…みたいなことをして、お金と交換するための売り物なんだ。勝手に持ってって良いものじゃない。資本主義が流行ってるこのご時世そういう方法しかないんだよ、わかるか?」
「人間が勝手にシンリャクして動物を勝手に自分のものにしてるニャ!!! 勝手に自分のものにしといて調子に乗るな!!!! よくわかんないルールは消せばいいニャ!」
フレンズたちの大半は事務所に入り込んでいて、どさくさにまぎれて壁で爪をといでいるものや寝転がっているものも居る
…今度は俺が畳み掛ける番だ
拡声器を掴むとフレンズに向かって俺は叫んだ
「はいじゃあ!!!!!! この中で動物の時狩りをした記憶があるフレンズは手をあげよう!!!!!!!」
気迫に押されてガヤが静まり、あちこちでちらほらと手が上がった
「はいじゃあそこの君!!!! 狩り簡単だったよね、いつでも獲物が手に入ったよね!!!!??? え? 違う!!?? そうだよ、そういうことだよ!!!!! 狩りは大変なの!!! だから技術のある人間が狩りをして、余った獲物をお金と交換できるようにしたの!!!!! 分かった!!?? お金は努力の具現化みたいなもんで、君は得意な分野で何か努力をすればお金がもらえます!!!!! あれ不思議お金で獲物がもらえます!!!!! 狩りをしてません疲れません怪我しません!!!!!! でも貰えます!!!!!! 多分君たちの言ってるのはソ連型社会主義だから!!!!!!! 崩壊しちゃうよ、デエエエエンだよ!!!!!!!」
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事務所のフレンズの数が一日で37人増えました♡
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場所は離れ東京の山奥……
ついでに何年か前……
一人のフレンズが畑に入り込み、スイカを盗もうとしていた
「ぎゃああ!? あ、足が!!! 誰か、誰か助けてくれぇぇ!!!!」
「やっと捕まえたぞ、こそ泥め! トラバサミを置いてよかったよ、お前みたいな馬鹿はすぐ捕まると思って特注したんだ」
「わ、分かった! もう盗まないから離してくれ! お願いだ、頼む!!」
「離すわけ無いだろうがっ」
「あああああああああああああ!!!!!!」
男はトラバサミに捕まったフレンズの足を思い切り蹴飛ばした
さらに木の棍棒を取り出すと、思い切り振りかぶって何度もフレンズを……
「へへ、これに懲りたらもう二度と…とはいかないんだよなぁ」
「た、たす、け……」
「まだしゃべるのか、恐ろしい生命力だ。さすが猛禽類だな…」
フレンズは男に担がれ家に運ばれていった
フレンズはトラバサミに引っかかってしまったのでアキレス腱が切れて動けず、その上に何度も殴られて全身内出血を起こしていた
フレンズの圧倒的な頑丈さで骨折も肋骨と腕くらいしかなかったが、動きを止め心を折るには十分すぎる負傷だった
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それから一週間
そのフレンズはつついても、毛皮を取り払っても、目はわけの分からぬ方を向き、傷も治らないままだった
すぐに男の仲間が呼ばれた
半信半疑だったが男たちは瀕死のフレンズの姿を見て歓喜した
すぐに手足が押さえつけられ完全に着ているものが取り払われたが一切の抵抗もなかった
「腐る直前ぐらいが良いって言うからな、さあ思う存分やっちまえ」
「…やめ…て…く…」
「お? 遺言はしかと受け取ったぞ。大丈夫、すぐに天国に行かせてやる」
一糸まとわぬ姿のフレンズに男達は群がるように飛びかかった
……瞬間、男達は一人残らず肉と化した
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「とまあ、こんな具合だ。オオタカのフレンズ、お前はどうする? 私にも敵うほどの飛行能力はぜひ私のものにしたいぞ」
「あー、考えとくわ。私今の生活で満足してるの。それにしてもその人間は酷いことしたのね」
「そうだな……仲間は?」
「私一人よ。いやまああなたの気持ちはわからなくもないけれど、戦いとかは好きじゃないの」
かつて人間が使っていた椅子に堂々と腰掛け足を組んでいるのは、フレンズの組織のリーダーハヤブサだ
タカは街を回っているときに勧誘を受け、この本拠地を訪れていた
「ねえ、あれ人間じゃない?」
タカが指差す方向には何人かの老人がおり、フレンズに囲まれながらなにかの話をしていた
「あいつらは人間だが私が八つ裂きにした人間とは違う。野菜を作る技術も持っているからむしろ感謝しているよ」
「そう……じゃあ私は帰るわ。良いもの見させてくれてありがとう」
「また来いよ、オオタカ」
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「っていう感じよ」
「っていう感じらしいです、ミライさん」
『複雑な過去を持ったハヤブサのフレンズさんがフレンズの組織を統制している、と… 人が何人か亡くなっているので公には出来ませんし、私達の力でハヤブサさんを説得してみましょう。頭を失えばすぐに組織は崩壊するはずです』
またタカと同じ、教育を受けられなかったゆえに犯罪に手を染めてしまったフレンズだ
しかもとびきり暗い過去を抱えてる上に組織まで統制してるとなると手強いことこの上ない
もし対処が遅れれば人間と戦って全滅もあり得る
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夕食を終えて俺とタカは一緒の寝室へ…
というかお互い別の部屋に布団が用意されているのだが、俺の個人的な好みで勝手に同じ布団に入っている
しかもタカはそのことを一切気にしていない
やはり人間とは全く違う生き物だとこういうところで気付かされる
「でも私はなんか良いなって思ったの。人間の村で協力して野菜を作ったり狩りをしながら皆で楽しく暮らす…すごく楽しそうだったわ。動物とも人間ともまた違うって感じ」
暗かったので表情は伺えなかったが声だけが聞こえた
いつになく楽しそうな声色だった
「なあ…今の簡単に食べ物が手に入る生活で、満足か? 動物らしく生きたいとかあったら俺はタカの意見を100%尊重したい」
「満足よ。それに人間としての強さを身に着けてお金を基準とした人生を送るのも新鮮で楽しいわ。妹たちのためにもそれが一番、安全なの。…あなたにもなにか恩返しができるかもしれないし」
「そっか、妹が居るもんな。ていうかそんなに大切なら一緒に寝たらどうだ? どうして母さんに預けるんだよ」
「早く強くなってもらわなきゃダメなのよ。タカは数々の壁を超えてやっと鷹になる。ずっと甘えてちゃただの臆病で神経質な鳥になるだけなのよ」
「…あいつらは十分強い。あの時助けに来たのは何だって言うんだ? とにかく今は一番甘えたい時期だから今度からは一緒に寝てやれ。
ああ、あと恩返しはその、結構返してもらったから気にしなくていいぞ…夜の方でな」
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