もしもフレンズが本当に居たら オオタカ編3

「助けたいんだ。お前に売上金を根こそぎ奪われちまったがそれでもだ。

 俺はな、毎日毎日やりたくもないバイトをやってるんだ。親父がクソでかい借金作っちまったからその返済と、学費、さらに家の色々もどうにかしないといけない。


 そんな中お前に強盗にはいられて金を根こそぎ奪われた」



 流石に難しくて分からないか…と思ったがタカは大きくうなずくとジャングルジムに寝転がった。



「じゃあこうすれば、いいの…?」



 タカはなんとスカートを掴んで持ち上げると


 いやちょっと待て! セクシーな中身が見えそうですよ!!!!



「待て!! なんでそんな人気に飢えた痴女が生中継サイトでやるようなことをするんだ!?」


「妹達を連れて人間の家に助けてもらいに言った時教えてもらったの。妹がその家の人間をものを壊しちゃったときに『これから追い詰められて成す術なくなったときには最終的にこうしろ』って。その時これをやったらすごい近寄ってきて触ろうとしてきて……怖くて……


 結局その家の人間をボコボコにした後お金と毛布を二枚だけ盗んで逃げたわ」



 何も知らないフレンズに売春させて何が面白いんだよ、クソ。


 タカはもしここで変なやつに見つかっていたら抵抗できずにそのまま心身に一生残る傷を負わされていたことだろう。そうなったら妹たちもちゃんと成長できるわけがない。



「いいか。今のは二度とやるな」

「分かったわ。…でも、あなたすごく怒ってるんじゃ」

「怒ってない。俺はお前と同じで生きるためにやりたくもないことをやらされて生きてるんだ。だからこそ同情するし気持ちは痛いほど分かる。


 助けたいんだ、お前らを」


 タカは黙り込んで俯いた。強がってはいるが声は小さく、本当の感情は簡単にわかった。



「信じてくれるか?」



 しばらく時間が過ぎた。黙り込む両者と、それを囲んで見守る(?)セルリアンの群れ。


 タカは頭を上げると


 一気に飛び出して俺の首に手をかけた。



「そんな甘い言葉で信じると思ってるの!? そうして信じて来たら今まで何度も痛い目にあった。こういうのはあなたを含めて17人目よ! 前の16人は全員私か妹を捕まえようとするか殴るか触るか燃やすか蹴るかのどれかしかなかった。みんな……みんなニコニコしてたわ、あなたみたいにね!!!」



 タカの瞳が爛々と輝くと同時に首を絞める力が格段に強まった。


 さすがに意識がやばい…思考がまとまらない…助けて…



「さあ、何が目的なのか吐いて」

「お、おえ、おばえぼおまえをだずげどぅたすける

「まだそれを……げほっ…がはっ」



 首から手が離れようやく開放された。なんとか息を整えて起き上がると妙に鉄臭い匂いが鼻につく。



「おい…おい!! お前何吐いてんだ!? ボロボロなんだから無理するなっ」

「黙って。妹も助けないといけないの。だから私は…」


「じゃあこうしてやる」


 タカの手を掴むと首筋に押し付けた。手を振るった時に光る爪が伸びて物をいとも簡単に切り裂いているのを何度も見ているのでどんなことをしているかは分かっている。



「お前は今行っても途中で死ぬだけだ。もし本当に俺を信じられないって思うならさっさと終わらせてから行け。俺はお前に同情しちまった以上お前が何と言っても粘り続けるだろうし俺も気持ち悪い。


 頸動脈はここだ、お前が爪を出せることは知ってる」


「…ッ!」



 なんていうか結構かわいいし…あんな小さい子を食べさせるようないい子に殺しの前科を負わせるのは心が痛む。俺のワガママでしか無い。


 タカも元は狩りの名手だったんだな。心の奥底を射抜かれるほどの鋭い視線で見つめられるとネズミになったような気がしてしまう。



 そしてついにタカの手に力が入り、首筋に鋭い痛みを感じた。さっさと終わらせてくれれば俺もようやくバイト漬けの日々から開放だ。


 天国に行ったら今まで潰した蚊と蟻に土下座しよう。



「最期にいいか? お前、火傷治ってよかったな」

「か、勝手に治ったのよ」

「ポケットから薬が見えてるぞ。ああーやりづらくなったな。忘れてくれ」

「もういい!」



 俺の首から手が降ろされた。多少どころじゃない邪魔をした気がするが目を瞑ろう。



「ま、まだ信じたわけじゃないのよ!! そう、下手に動けば病院で捕まってる妹が傷つけられるかもしれないわ」

「捕まえてねえよ。とにかくここで落ち着くまで一緒に待ち続けよう」


 未だに少しバツの悪そうな顔をしたタカが薬を取り出し手に塗り始めた。しかししばらくするとチューブが間の抜けた音を出して薬は出なくなってしまった。



「あの時教えた店に行けばまた買えるはずだ。ちゃんと俺が教えた通りの時間に行って教えた通りの店員に頼むんだぞ」

「うっ……ありが、とう」



 実はタカが強盗に来た時、話をしている間にメモを書いて金と一緒に渡していた。主に内容は薬とか日用品とか食べ物の買い方だ。俺の居るコンビニの近くにはオーイシというフレンズに理解のあるオッサンが働いている店があるのを知っていたのでそれを詳しく書き込んでおいた。


 タカはそれを元にしっかりと薬を買い、ご飯もちゃんと食べられたようだ。



「そういえばタカ何食ってんの?」

「おにぎりが手に入ったら妹たちに食べさせてるからいつもは……捕まえたネズミとか、蛇とかよ。捨ててある弁当を置いておくと集まってくるから」

「鷹なんだし思い切り空を飛んで探せばいいじゃないか?」

「妹たちがまだ飛べないから無理よ。それに前試してウサギを狙った時は人間に…お腹が減ってて倒れそうで……必死に頼んだのにっ……!」



 胸元の痛々しい痣を咄嗟に隠すように手で覆った。しかしそこで触ってしまったことでかなり傷んだようだ。


 …とりあえず抱きしめてやった。



「今までよく頑張ったな、タカ」

「ねえ、いつかは人間に分かってもらえると思う…?」

「ミライって人間がお前らを安全な場所に集めて暮らさせる計画を進めてるらしい。それの真偽は分からんが、つまり人間とフレンズの努力次第、としか言えないな。少なくとも物を盗むのだけはやめとけよ、大泥棒さん」

「だったらどうやって!」


「それは助かった後考えようか。下、見てみろよ」



 さっきふと覗いた時気付いたことだ。セルリアンが登って来ている?

 そんなレベルじゃない。さっきの救急車と同じだ。



「う、うそ! ジャングルジムから目玉が生えて…このままじゃ!」

「俺が飛び降りて囮になる。タカもだいぶ回復したようだし、その間に走って逃げるんだ」

「飛ぶに決まってるでしょ! …あ、あれ? 私の羽が」



 さっきセルリアンを蹴落としてすぐのことだ。寝ていたタカの頭から溶けるように一対の翼が消えてしまった。おそらくだがもうサンドスターが足りず、結果鷹の力が抜けてしまったようだ。



「それにお前、目も見えてないんだろ。耳の聞こえも悪い」

「す、少しは見えてるわよ…でももう遠くは全然見えない。色もよくわからないの…」

「なあ」

「何?」

「最後に…お前たちに会えてよかったぞ。たった数日…それから何ヶ月かは経ったが、お前らのために生きれてよかった。今までゴミみたいな奴に立場上手を差し伸べることはあったがお前らみたいなやつは初めてだ。純粋で、弱くて、それでも頑張って生きてる」

「え? だから何よ」




「絶対生き延びろよ」



 さっきフレンズがセルリアンに襲われて一瞬で動物に戻っているのを見た。だから俺が廃人になるぐらいどうってこと無い。


 俺はジャングルジムを飛び降りるとセルリアンを飛び移りながらタカから離れた。もちろん触ればただでは済まない。どんどんと力が抜けたし、記憶も消えていった。



「イヤあああああ!!!! 何考えてるのよ!!!!」

「大きい声を出すな!!! フレンズはセルリアンにやられると一瞬で動物に戻る! だから俺が引きつけている間に逃げろ!! 恩を仇で返したくないなら最後くらい言うことを聞いてくれ!!!」



 俺何やってんだろ…もはや名前も思い出せない。

 それでも俺は走り続けた。セルリアンの群れを越えると叫びながらまた走り出した。群れはフレンズどころではなくなり、俺を狙って突進し始める。


 大きいやつを押しのけて、小さいやつを蹴飛ばして。



「ウオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」



 ついに転んでしまった。もう意識が朦朧としていてどっちがどっちかもわからない。体の感覚もない。


 それでもまた走り出した。


 もう何が目的かもわからなくなっていた。


 また転んだ。今度はセルリアンが足にまとわりついている。蹴飛ばす力は既に残っておらずもがく気力もない。



 少し無理しすぎたようだ。まあ廃人になってあいつらを救えるなら等価交換だ。家族の顔も忘れたので走馬灯ってやつも来る気配がない。



 達者で生きろよ、俺の心も持ってった責任はとれよ……



 ____________________



 恐怖の怪物、セルリアンの発生はその日日本で同時多発的に発生し、多くの人間やフレンズが巻き込まれる大事件となった。


 人間は良くて記憶喪失、悪くて廃人になり、


 フレンズは動物に戻る。


 死んだわけじゃない? 人間はそうだがフレンズはどうだ。動物に戻る? 人として形成された感情を持つ自我が奪い去られ、人としての体も消え去る。


 大事件は手慣れのフレンズによって1週間かけて収束したがそれはまた別の話。



 _________________________



 天井が見える。顔が見える。



「お、おい嘘だろ!?」



 声が聞こえた。どうせ30年とか経って奇跡的に目が覚めたとかいうパターンだろう。

 あいつら、今どうしてるのかな。



「大丈夫ですか? 私です、ミライです! さあ起きてください!」

「未来のミライさんですか? へへ、どんなおばさんが待ってるんでしょうかね

 あっあれ? 老けてない?」


 ミライさんは老けていなかった。その周りの医者たちも研究員も変わっていない。日付もそのままだ。


 横を見るとオオタカキッズが一人、二人、三人。

 まあ年頃の子だし一人はどこかに遊びに行っているだろう。



 そして…



 そのうちの一人の子が、泣きじゃくりながらをなでていた。


「ピャッピャー、ピィ~~」


「あ、あの…あの!」



 すると何も言わずに研究員の一人が俺を抱きしめた。



「オオタカだ…まだとても若い。あの五人の姉妹の一人だったようだ……」


 嘘だ。

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」



 心の叫びはすぐに声になった。


 悔やんでも悔やみきれない。俺は誰も救えなかった。


 そして俺だけは何故か助かった。


 何故?



「気持ちはわかるがここは病院だ。他にも多くの悲しみに打ちひしがれた人たちが入院してる。だから頼む」

「…頭冷やしてきます」



 そして病室を出ると、この間四人の妹たちが座っていたベッドに動物に戻ったはずのタカが横になっていた。羽が戻っていてキレイになっている。



「お前、無事だったのか」



 タカが顔を上げた。すっかり生気が抜けて真っ青になってしまっている。



「あの後私も走った…でもセルリアンに捕まった。ダメだって思ったら妹たちが来てくれて……そしたら1番大きい子が……飛べるようになってて……あなたを病院に運んだんだけど…小さいセルリアンが……」

「そうだったのか…でも俺らはよく頑張ったと思う。その子のことはすごく、残念だったけどな……」



 何人もの看護師や人間が前を通り過ぎていった。もうどれほどの時間を過ごしたかもわからなくなった。


 そういえばタカの手は女の子の割に大きくてとても暖かい。動物だからかそれとも…



「なあ…お前らこれからどうするんだ? あの山は完全に燃えちまったし、山に戻れても生きていくすべはないだろ。

 だからその、どうだ? 要領良さそうだし俺のコンビニで一緒に働かないか? 夜勤はやめてお前に合わせた時間でやるし、難しいことはやらせない」


「なんか人間みたいね」

「まあ、そうだな。でもそれしかない。

 ああ、あと下心はないんだが俺の家で暮らさないか? もちろんいやだったら強制しないし、準備ができたらいつでも出ていって良い」



 タカはゆっくりと、大きくうなずいた。


 その後少しだけミライさんたちと話をして連絡先を交換した後、タカの妹たちを連れて俺の家に行くことになった。いつまでも病院に居させては気持ちが切り替わらないと思ったからだ。母に配車を頼み、帰りは俺が運転した。フレンズとの同棲についてもすぐに許してくれた。


 ________________



「へえ…フレンズの姉妹。…フレンズってその、どんな感じで増えるの?」

「動物にサンドスターとかいうのが当たるとフレンズになるらしい。この三人は卵から孵ってすぐフレンズ化して親に追い出されたところをタカに保護されて、妹と呼んでいるんだ。調べてみたけど血縁関係は無いみたいだ」

「あなた達も大変ね。盗むことしか知らなくて、盗めば人間に追われる。でももう大丈夫よ、私もあなた達を助けたいって思ってる」


「わーやった!」「おねーちゃ、やった!」「ご飯!!!!!」



 オオタカキッズたちはすっかり母に懐いている。助手席に座らせたタカは何も言わず、車からの景色を不思議そうに眺めていた。



「で、この鳥は一体どうするの……」



 あの後姉妹の一人だったオオタカを逃がそうとしたのだが何度やっても離れることがなく、車に乗っても飛んで付いてきたのでキッズたちの要望により……



「飼う」

「ええ!? こういうペットって申請とか大きいケージとか、たくさんのお肉とか…」



 バキリ、と音を立てて窓の上の手すりが砕けた。



「ペットじゃない」

「ご、ごめんなさいね。そうよね、家族よね」



 人間として暮らすにはまだ少し慣れが必要なようだ。



 ____________________



「わーー!!」「あったかい!!」「すごーい!!」



 家につくとタカが呆れるほどオオタカキッズたちははしゃぎだした。やはりフレンズ言えど中身は普通のこどもだ。どうやら今から風呂に入るらしく、浴室の暖房に興奮しているらしい。



「あなたもお風呂入りましょう? 美人なんだから、汚いと損よ」

「別にいいわ」

「ええ!? ていうか今までどうしてたの」

「入ってない」

「水浴びは?」

「たまに」

「生まれたのはいつ?」

「時間はわからないけれど、暑いときに生まれて2回ぐらい寒い時期が来たわ」

「3年前じゃない! フレンズってお風呂はいらなくても汚くならないのね…」



 そういえば血痕も目を離した隙に消えていた気がする。



「おねーちゃもおふろ、入ろうよ!! ぜったいたのしーって!」

「………じゃあ入る」

「あなた本当に妹が好きなのね。ってことであなたはすっこんでなさい」

「ここからは音声のみでお楽しみくださいってか。分かったよ」



 そして離れた瞬間、悲鳴が。



「おい!! 何があった!!!」

「皮が!!! この人間皮を剥き始めたの!! 痛くないの!?」「わああ!!!!!」「いや!!!!!」「見てるだけで痛い!!」

「良いかしら!? 私は服を脱いだだけよ! 入ってきちゃダメ、私を信じて!」



 なんとフレンズは服が脱げることを知らず、毛皮だと思っていたらしい。新発見。後でミライさんにそのことを伝えたらとても興奮していた。おそらく学術的に素晴らしい発見だったのだろう、多分。



 _______________



「終わった」



 風呂上がりで髪が湿って、さらにいつもの軍服ではなく一人暮らしした姉の残した服を着たタカはなんだかとても……



「最高だよ、タカ」

「なにそれ気持ち悪い」



 少し引かれたがまあいい。


 その後6人で騒がしい夜食を終え、あっという間に夜が来た。


 __________________



「あんな賑やかにご飯を食べたの久しぶりで…うっ…」

「おいおいまじかよ。でも確かに楽しかったな」

「そうね…。さあ、寝ましょ!!」

「「「はーい!!!!」」」


 もはや親子である。


「あなたは妹さんと一緒でしょ?」

「今夜はこの子と一緒に寝るわ。妹たちを任せてもいいかしら」

「もちろん。二人も人間を0から育てたんだから舐めないでちょうだい。それじゃ、おやすみなさいね」

「俺は無視すんのか」

「あなたは…あの子と一緒に居てあげたほうが良いんじゃない? 間違っても手は出しちゃダメよ。分かったわね? 絶対手を出しちゃダメよ!!」

「分かったから、分かった。信じてくれ」

「うん! じゃ、おやすみね」

「ばいばいにーちゃん!」「にーちゃんおやすみ」「おやすみいいい!!」

「おうおう」


 ___________________



 タカは俺の肩に頭をおいて、ずっと妹だったオオタカを撫で続けていた。



「飯はうまかったか」

「うん」

「初めての風呂は?」

「…うん」

「なんか我慢してるものないか? 吐き出したいものは、ないか?」

「ない」


 再び抱き寄せた。怪我は治っていたので本気でやった。


「じゃあうちのソファーをボロボロにしてるその爪をむき出しにした手は何だ? もうお前は自由なんだ。できる限りなら俺が守ってやる。誰一人、傷つけさせやしない。

 たとえ相手がセルリアンでもな……」

「わ、私はつ、強いから、あなた、なんか…

 あっ、あっ…ああああぁぁぁぁああああぁぁぁ……」



 そこで初めて内に秘めたものが流れ出た。ダムが決壊するよりも激しく、涙と鼻水の混ざったものが俺の洋服を汚していった。

 普段妹達にに手本を見せるため弱い面など一度も見せていなかったその反動が、今涙となって流れていく。


 夜中だから? 上に妹がいるから?


 もうそんなことはお構いなしだった


 ただただこどものように心の内を叫び、俺は何も言わず全てうけとめた



「ピヤー」



 オオタカがタカの膝の上に乗り、優しく鳴いた後お腹にクチバシをこすりつけた


「最後は絶対幸せだっただろうな。皆に囲まれて笑顔だったってミライさんに聞いたんだ。恩返しできて嬉しいって言ってるんだ、きっとな」

「…そのまんまのことを今言ってたわ」

「動物に戻っても分かるのか?」

「そう。一緒に…居れなかったのは残念だけど、でもとっても……とっ…て、も……」



 その後どのくらいか分からないほど泣き続けた。もう時計は真上を指していた。



「私はこの子の分も、フレンズとして生きるわ。それと本当に、本当にあなたには感謝してるわ。いい人間も居るのね」

「母さんも、オーイシさんも、頼れる人はいっぱいいるさ。それに俺に取っちゃお前もだ。血もつながってないフレンズたちを保護して強盗で食わせるなんて聞いたこと無い」

「それはやめるって言ったでしょ」

「そうだな」

「だから私は……」



 タカは目を閉じると


 顔を俺の方に突き出した



 脱衣の仕方は知らないのにこういうことは知りやがって、このマセガキめ

 もしや誘惑の仕方を仕込まれた時一緒に教わったのか…まあいい、挑発には乗ってやる



 タカの首に手を回すとそのままゆっくり……











「わわっ。どうしても眠くて… そんなに顔近づけてどうしたの?」

「ああ、なんでもねえよ。じゃあ寝ようか。おやすみ、タカ」

「え? ここで寝るの? あとなんか顔近くない? ねえちょっとどういう」





 手を出しました手を出しました






 _________



 ちなみにその後どうなったかというと、ミライさんの勧めでコンビニ店員をする傍ら野良フレンズの保護をすることになった。暴れるならタカの力を借りて、人間界での犯罪をやめさせて最低限の教育を施す。タカの前に会ったネコのフレンズも保護することができた。妹達もすくすくと育っている。


 これで少しは理不尽な扱いを受けることも減る…と信じている。



 そしてさらに数年後、俺はジャパリパークとかいうテーマパークで職員をやることになった。だからこれからコンビニの店長に挨拶をしに行く。


 …つもりだったがタカが食欲不振と吐き気を訴えてきたのでそっちが先だ。


 …母の勧めで病院に行ったら陽性でした。

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