第3話 老いたわんこのこと。

弥生さんの家には、もうひとり、わんこがいた。

彼女はもう年老いていて、目が見えず、オムツをしていた。


玄関先にフェンスで囲ったスペースがあり、そこが彼女の居場所だった。

囲っておかないと、グレーのわんこが飛びついてしまう、例えばご飯をあげる時や、スキンシップをする時など、嫉妬のあまりにトイプーは飛びついてしまうらしい。


彼女は、ジッとしているか、ぐるぐるとスペース内を周り歩いていた、ずっとずっと。

目が白濁し、白内障だと思う、と弥生さん。

ぐるぐる徘徊は、認知が進んでいるからなのか。

元気な頃は、散歩が好きで、よく出かけていたらしい。愛おしそうに、思い出を語ってくれた。



彼女と関わることは、殆ど出来なかった。

弥生さんがしっかりと世話をしていたし、10年以上の長い絆の中に、新参者がひょいと入り込めるようなものではなかった。


ただ、弥生さんの仕事が忙しくて、夜にまで及んだ日には、私がわんこふたりのご飯を用意し、声をかけて差し出した。



ところで私には、脳梗塞で寝たきり状態の祖母がいた。今年(2019年) 亡くなったが。


その頃はまだ、病院で24時間看護を受けていた。

老いたわんこの存在と、祖母の姿が重なった。


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キミは家族だから @nyana

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