Earthes

ヒガシカド

第1部

第1話

 宇宙空間が複製されている。

 どこかに、コピーされた地球がペーストされているのだ。



 目が覚めると、私は軽装でベッドに横たわっていた。壁に元々着ていた服、つまり宇宙服がかかっていた。ずさんな管理だ。私は笑ったが、まもなく重要なことに気がついた。私は技術を持つ何者かに宇宙服を脱がされたにもかかわらず、今までと同じように呼吸し、生きることができている。ここは地球に違いない。ただし、元いた地球αではない可能性が高い。

 宇宙船に同乗していた仲間たちの姿は見えない。あの衝撃以降、確かに私は一人きりだった。それまで四人で助け合いながら、任意の地球を目指していたはずなのに。

 考えを巡らせていると、一人の少年が部屋に入って来た。彼は何か一言二言発すると、私にメモ帳を見せてきた。

 メモ帳には鞄、服、本など日用品のイラストが並んでいる。彼はイラストを順に指差していった。

「か、カバンか?」

 私がその物の名を言うと、彼は次へ次へとページをめくっていった。

「服。シャツと言った方が適切か」

「本」

「扇風機」

 彼が私に何をさせたがっているのか、しばらくして見当がついた。彼は私の発言から私の語彙をデータ化しようとしているのだ。きっと彼の傍らにあるパソコンに私の言語情報が構築されるに違いない。少年らしからぬ試みだ。

 メモ帳の最後のページには、わけのわからないものが描かれていた。子供の落書きのような、ぐちゃぐちゃとした曲線の塊だ。私は言った。

「何だこれは?」

 途端、少年は嬉しそうな叫び声をあげてパソコンを引っ掴むと部屋から走り去った。

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Earthes ヒガシカド @nskadomsk

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