2mg ガラム

「ガラム」をご存知でしょうか。

 インドネシアの煙草で、葉っぱの中にクローブ(丁子)が入っていて、甘いお香のような香りがする銘柄です。


 学生時代、コロコロと銘柄を変えていた際、一時期ガラムシリーズをよく吸っていました。


 この「ガラム」、かなり癖のあることで有名です。

 まず、一般的にイメージする煙草臭さとは異なる匂いがめちゃくちゃキツイです。未開封のパッケージですら薬臭さが漏れ漏れです。これは火をつけると顕著で、暴力的に甘ったるい香りをばら撒きます。アジアン雑貨店とか、そういう匂い。音楽室で聴いたケチャが蘇る……。


 食べ物を扱う空間では吸えない煙草ナンバーワンですね。喫煙ウェルカムなところでも遠慮しましょう。


 更に、フィルターに何かしら甘味料が塗布されているらしく、咥えたあとに、くちびるを舐めるとしっかりとした甘みを感じます。素朴な飴を舐めてるような感じです。吸った煙もなんか甘ったるく、喉に良さそう。

(煙草なので無意味と思いますが、クローブ自体は漢方薬としても用いられています。喉の痛みにも効くとか)


 そして吸い込めば煙草葉にブレンドされたクローブが弾け、パチパチと小気味好い音がします。このパチパチが灰を散らかし、周囲を汚すこともありますが、私はその様子が楽しげで好きでした。


「ガラム」の匂いを嗅ぐと、真冬の深夜を思い出します。

 自室にこもり、電気もつけずパソコンとにらめっこして、曲や課題、作品を制作している時によく吸っていました。部屋に残る臭いは嫌いなので、窓を全開にして吸うんですが、真冬の深夜は身を切るように寒い。でも、静かな夜の空気に「ガラム」のパチパチ弾ける音が響くと、なんだか面白くて、もう少し頑張ろうと思えました。

 あと、当時流行りだしたエナジードリンクを飲みながら吸うのも好きでした。なんとなく、ケミカルな甘さと漢方的な甘さの組み合わせが丁度よかったのかもしれません。


 どうやら、「ガラム」はサーファーのお兄ちゃんとか、やんちゃなお兄ちゃん達にも人気があったようで、ライブハウスの控え室で一服していると、「誰か大麻やってる?」とスタッフさんに訊かれたことがあります。聞いた話によれば、匂いが似てるとか、大麻の臭いを誤魔化す為だとかなんとか。私は文系隠キャのクソナードだったので、本当のことはわかりません。


 また、ヨルムンガンドという漫画に登場するキャラクターが吸っていたりと、なかなか拗らせ気味な煙草でした。ちなみに死ぬほど重いですが、なんだか煙草を吸っているような感じのしない煙草で、私は大好きです。

 余談ですが、ウィスキーはアイラウィスキーが大好きです。拗らせてるゥー!


 手がかじかむ中、暑い国からやってきた煙草を吸うのを無性に面白く感じていたのでした。

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むらさきの煙 ふえるわかめ16グラム @waaakame16g

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