とある交換日記の一ページ

 アヤノへ。


 最近、忙しくてまともにメッセージを残せていなかったから、近況をまとめて報告しようと思う。

 例の文化祭で上演した演劇の評判は上々だった。主に褒められていたのは、前代の勇者役のレイだったけど、僕が書いた脚本もそれなりに評価されたみたいだ。まあ、肝心の僕の演技については、クラスメイトにさんざんからかわれたけど。まあ、その辺はご愛敬だ。

 演劇部では三年生たちが引退。最近、忙しかったのは、その引継ぎのせいが半分だ。

 部長と言うか、元部長は「来年こそは全国にいくのよ」なんて言って、自分は引退だというのに、なぜか燃えている。まあ、一年でエースのレイが居るうちでないと到底チャンスはないだろうからな。来年が勝負だと息巻く元部長の気持ちも解らないでもない。

 当のレイは、意外とマイペースだ。


「いけたらいいですね」


 などと、相変わらず、のほほんと笑っている。

 でも、僕は知っている。

 彼女は皆が見ていないところでこっそり練習していることを。

 そういうところは、どこかの師匠譲りみたいだな。




 あとは、最近、僕が忙しい、もう半分の理由を書いておかないといけないだろうな。

 僕は最近、脚本を書いている。

 部員にせっつかれているっていうのが、表向きの理由だけど、本当は僕が書きたいからやっている。

 また、僕は自分の書いた脚本を上演してみたいと考えているんだ。

 昔の自分が聞いたら驚くだろうなと思う。

 だけど、これは紛れもない本心だ。

 自分が作り上げた物語を血の通った人間が演ずる。これは、何物にも代えがたい気持ちを僕に起こさせる。僕は確かに演劇の魅力に取りつかれている。

 アヤノ、おまえが聞いたら狂喜乱舞しそうだな。

 認めるよ、演劇は本当に面白い。


 実は、僕が演劇を続ける理由はもう一つある。

 だけど、それはきっと、アヤノには言わなくても解るよな。


 あとは久しぶりに小説も書いてみたいと思っている。そっちは、僕が経験したことを元に書いてみようと思っているが……。

 まあ、それについてはおいおい、この日記に書かせてもらおうと思う。


 さて、僕の近況は以上。久々だったからなんだか手紙みたいになってしまった。

 だが、まあ、たまにはこういうのもいいだろう。


 また明日もこの日記にアヤノへのメッセージを綴る。

 明後日も、明々後日も、きっと僕はペンを取る。

 この日記のページがなくなっても、また新しい日記帳にメッセージを綴り続ける。

 僕がよぼよぼのおじいさんになって人生を終えるまで。

 

 僕がこれだけ書いたんだ。

 アヤノもぜひメッセージを残してくれ。

 

 待っています。

 ずっと、ずっと待っています。

 タカキより


                    <了>

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異世界交換日記 ~異世界転生なんてもういいですから!~ 雪瀬ひうろ @hiuro

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