第5話 2年4組恵比寿広大の場合

阿美が言っていた「恵比寿君はモテる」という言葉が事実だと分かったのは3時間目終わりの休憩時間のことだった。


「あの、美沙子ちゃんいますか?」

何組かもわからない、話したこともない女子が突然私に会いに来た。

教室の入り口でもじもじとしながら教室を見渡す女子の様子を見たクラスメイトは、ちらちらと私の方を見てくる。


ちらり、と阿美の方を見るとにやにやしている。私と目があった阿美はピースサインをしてきた。


どういう意味か分からん。

仕方なく立ち上がって女子の方へ行く。


二人で廊下に出て向かい合う。

「あの、美沙子ちゃんが、恵比寿君と付き合ってるって聞いて。ほんとう?」


「いや、ちょっと恵比寿君に頼まれたことがあって。付き合ってるわけじゃないよ」

そう答えるとあらかさまにほっとした様子になる女の子。


かわいいなあ。その姿に私はなんとなくほんわかする。これが恋する女子ってやつか。


「あの、恵比寿君に頼まれたことって何か聞いていい?」

恐る恐る、といった感じで聞いてくる女の子に、私は答えるべきか悩んだ。

…めんどくさいな。


「恵比寿君に聞いてもらっていい?私が言っていいか分からないから」


「…分かった」

こくん。素直に頷いた彼女は頭を下げてから、廊下を小走りで去っていった。


可愛かったなぁ。自分の机に戻りながらしみじみとそう思う。


だけど、なんか、疲れたな。周りの友人にいないタイプの女の子だったからだろうか。


阿美がにやにやしながら何かを伝えようとジェスチャーしてくる。

やっぱり、何を伝えたいかは分からないままだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミサンガガールズ @magmag333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る