第4話 2年4組 恵比寿広大の場合

教室に入ると、友人の阿美がにやにやして待っていた。


「見ましたよぉ、おさかんですね」

見た目はかわいいが中身がおっさんくさい彼女は、揉み手をしながらぐにゃぐにゃと歩いてこちらにやって来た。酔っぱらいみたいな歩き方だ。


「何を?」

「恵比寿君と一緒に登校しているのを!いやぁ、付き合ってんなら言ってよ水くさい!」


ばしーん、と背中を叩いてくる。痛い。ヒリヒリする。


「違う。ミサンガ作ってあげることになっただけ」


「おー!伝説の願いが叶うミサンガ!」


「なんだそれ。恵比寿君にも言われた」


「4組の女子が言ってるんだよ、美沙子のミサンガを着けたら願いが叶ったーって」

私にも作ってよー、もうすぐ大会なんだよー。そう言いながらもたれ掛かってくる。


「じゃま。ていうか、阿美、バスケ部の朝練なんじゃないの?こんなに早い時間から来てるんなら」


「いや?なんか休みだった!早く来すぎたわぁ」


「へー」

机の横のフックに荷物をかける。

椅子に座ると当たり前のように前の席に座る阿美。


「恵比寿君と付き合い始めたって勘違いしてる女子結構いるよ?モテてるらしい。恵比寿君。」


「…あの坊主が?」


「えー。坊主だけどイケメンじゃん。」


「野球部はみんな同じ顔に見える」


「うわー、それ、恵比寿君のこと好きな女子に聞かれたら叩かれるよ」


「めんどくさいなぁ」

やっぱりミサンガ作ってあげない方がいいのかもしれない。ちらり、とそう思って私は静かにため息をついた。







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