死神の贈り物

作者 白鷺雨月

30

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★★★ Excellent!!!

重病で生死の狭間を彷徨う敏夫の前に、一人の死神が現れた。
アロハシャツにショートパンツ。むちむちとしたふとももを露わにする彼女は、敏夫の願いを一つ叶えてくれるという。そして彼が望んだのは、かつて死別した最愛の妻との再会だった――。

本作は、この短い分量にもかかわらず痛烈なテーマを掲げています。
それは最終話で明らかになりますが、端的に言えばこのレビューのタイトルに同じ。あなたを愛する人がいるということです。あなたが望むものとあなたを望むものは時に異なるということです。だけどそのすれ違いが、人生の美しさだったりするのかもしれません。わたしは本作を読んで、全身が痺れるくらいの感動を覚えました。それほど強烈なテーマの提示だと感じたのです。

そしてそのテーマを導く死神――エルザ。
彼女がもう、とにかく魅力的なのです! わたしは死の際、こんな人にあの世に連れていってもらいたい。チュッパチャップスを最後に一つもらいたい。彼女の唇の妖艶さを眺めながら、大好きなぶどう味を口いっぱいに広がらせたい。
肉感たっぷりの彼女はとても聡明な性格をしています。これまでにきっと、酸いも甘いも経験してきたのでしょう。強い冷静さと大きな優しさを同時に備えています。彼女に耳打ちなどされたら、わたしは顔を真っ赤にしてひっくり返ることでしょう。あなたも本作でぜひエルザに出会ってみて下さい。彼女の魅力は無限大。きっとあなたもいちころです。

最後に。原作者としての感想です。
わたしが白鷺さんに提示した原案は「死に瀕した男が、すでに死んだ最愛の妻に会う。そして妻は○○な状況にあるのだが、その時、男は××と思う」という非常にシンプルなものでした。エルザは登場していなかったのです。それを白鷺さんという希有な書き手により、肉付けをしていただきました。魅力的なキャラクターを配置していただきました(道中登場するバクさんも… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 とても良い間がある作品だと感じます。

 主人公格の敏夫が、どういう性格であるかを考えると、少し昔ならば許容されていた不器用さだったのだろうと思います。自分なりに家事を手伝い、自分なりに働き、分を超えた何かをした事はない、そんな人だったのだろう、と。

 そんな人生において、知らない方が良かったものなのか、それとも知らなくても良かったものなのか、という事を考えさせられました。

 多分、バッドエンドではないのだと思います。

 敏夫は最後に絶望や悔しさを覚えた訳ではなく、声もかけられない相手に対して頭を下げ、自分の中で昇華させられたはずだ、と感じました。だからこそ、自分が一番大切に思っている人の、一番大切な人にはなれなかったけれど、一番大切だと思ってくれる人は、いた訳ですから。

 一番にしてくれなかった相手にしても、それが悪い事ではないし、「え? そんな事で」と思う部分、「でも仕方ないな」と思う部分、様々、あります。

 多分、みんな大部分は誠実で正直だけど、ちょっとずつ我が儘な部分があるから、少し苦めのハッピーエンドなのだと思ったのです。

 と、そういう風に私が思った事ばかりを書いていますが、これらの情報は物語中に開示されていません。

 そう考える、感じる余地のある、「間」とでもいうべきものが、この物語には確かに存在しているのです。文章として読み手に向けられているものは、過分でないけど少なくもないというバランスです。