初恋という言葉の初々しい響きとは全く異なる、重たい痛みを持って描かれた物語です。
主人公の心象描写はどこか自虐的で、それでも少しだけ希望を持ちたいという甘さも垣間見えて、すべての感情が痛々しいほどに繊細です。その思いは緻密に描写された風景にも映し出され、読んでいる側にも苦くて辛い潮風の味がします。
その恋は一点の灯台の光なのか、それとも呪縛なのか。手離せない感情をボトルメールに例え、それを流せないままに抱き続ける主人公の姿が切ない。
サンドイッチ、灯台、海といった小道具やモチーフが全編で重要な役割を果たしていて、その使い方の巧みさや物語の構成にも唸ります。
一文一文に隙のない、美しい文章で綴られる初恋の記録。言葉の重さを噛みしめながらじっくりと読みたい作品です。