新しい靴

雨世界

1 あなたと一緒に旅をする。

 新しい靴


 小早川真白 小学六年生


 小早川小雪 真白のお母さん


 プロローグ


 運命って信じていますか? 


 本編


 あなたと一緒に旅をする。


 人は誰かに褒められて伸びるんだよ。成長するんだよ。


 その日、小早川真白は新しい靴を買ってもらった。

 ずっと欲しかった真っ白なスニーカー。すごく性能のいいやつだ。(そのぶん、値段も高いけど)


 真白はその靴をはいて早速、家の近くにある運動公園の中にある陸上の100メートルのコースの上をいつものように、全速力で走ってみた。


 うん。すごく調子がいい。


 ゴールを超えて、肩で息をしている真白は腕時計で測っていたタイムを見て、にっこりと一人、笑った。


 真白は運動公園にある大きな時計を見る。


 時刻はまだお昼少し過ぎ。午後の予定は空いている。


 なので、真白はこのままその新しい靴をはいて、お母さんに会いに行くことにした。


 真白のお母さんは去年の年の終わりに体調をくずしてから、一月が終わる今頃まで、一ヶ月間、ずっと入院をしていた。(なのに、まだ退院はできないようだった)


 真白は運動公園の自転車置き場に置いていた自分の自転車に乗ると、それから少し遠い場所にあるお母さんの入院している街の大きな病院まで、一人で移動をした。


 ……お母さん。大丈夫かな?


 お母さんが急に倒れてから、真白はずっと、お母さんの心配をしていた。


 お父さんは「大丈夫だよ。心配ない。お母さんはちょっと疲れてしまっただけなんだ。すぐに退院できるよ」と言われていたのだけど、……真白はなんだか、お母さんがとても遠い場所に行ってしまうような気がして、ずっと不安な気持ちのまま、病院で年を超えて、新年になって(冬休みが終わって、今年、六年生の真白が卒業する小学校の最後の三学期も始まって)一ヶ月が過ぎようとしている今も、そんな気持ちのままだった。


 病院についた真白は自転車置き場に自転車を止めて、自転車の籠の中に入れていた小さな水色のリュックを背負い、それから大きな病院の中に入っていった。


 もう何回も来ているから、真白はそのまま、迷うことなく、真白のお母さんである小早川小雪の入院している三階の病室まで移動をした。


 病院の中は、いつものように、なんだかすごく不思議な匂いがした。


 ……なんどきても慣れないな。病院って。そんな匂いか嗅ぎながら、そんなことを薄暗い病院の階段を上りながら、真白は思った。

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