「遅刻」が人生のテーマになってるほど不甲斐ない父親だけれど、それらをぜんぶひっくるめて微笑んでくれる元家族。「ありがとう」の一言が海のように深く、けれど清々しく響きます。たった1000文字足らずの文章だというのに、行間に様々な要素が見出せる手腕に脱帽です。これは他人の物語ではない。きっとわたしにも「ありがとう」の一言で救われる何かがあるのだと、そう胸に染み込む作品でした!
大切な節目に遅刻をしてきた「俺」。ふがいない父親を、離れて暮らしていた娘はどのように迎えるのか。わずか996字の芸術ゆえに、あらすじはここまでに抑えたい。このクオリティーはさながら感動CMのよう。父と娘の止まっていた時間がゆっくりと流れるとき、大いなる共感と感動を呼ぶ。ありがとう。ただただ、ありがとう。読後にあなたの思い浮かべる人が、大切な誰かであってほしい。自分に置き換えたとき、この話の価値は何倍にも広がるのだから。
もっと見る