第8話 叡智管理局クロノス
――クロノスが下した決断によって、生き残った一人の少女にアンドロイド化の手術が施されました。しかし、当時の人類が抱えていた一つの問題がありました。彼らの技術によって当時の人類は意識を機械に接続する事は出来ても、自分の体無しに意識を保つことはできなかったのです。あなたはここへ来る前に、この部屋の隣にある安置されている人間を見ましたね?
あれが...ミモザの本来の姿だってのか....!?あんな骨が皮膚の上から目に見えて髪の毛すらないような姿のモノを人間だと言うのか!?
――少女は自らにとても瓜二つな機械の体に意識を繋がれ、目を覚ました頃には複数のアンドロイドに連れて行かれました。最初は事情を飲み込むことが出来ずにパニックになっていましたが、十数年経った頃に、アンドロイドを新たな人類とするには新しく人類と定められるアンドロイド自身は「自分は人間である」と思わせなくてはならないと判断し、情報を統制する機関が必要であるとしました。それがこの叡智管理局クロノスの正体なのです。
自分の想像していた物よりも大きすぎるスケールの話に頭の整理が追いつかない。
「待ってくれ。じゃあ俺の体は機械だったってのか?いや、俺だけじゃなく「ヒト」の扱いをされていた存在はみんな....
――はい。ミモザが管理局を作り上げて最初にしたことは「知識の抑制」です。これから製造されるアンドロイドを新たな人類「ヒト」だと思わせ、自分達はアンドロイドではなく「人類」であると信じて疑わせない世界にしたのです。次に彼女が行ったのは「技術の抑制」でした。これは一定以上の知識を蓄えてしまうとやがて自分達の存在に気づいてしまうから、100年周期で「ヒト」の知能を幼児レベルにまで退化させる事によって、文明の進化と退化を繰り返させる事で秘密を守り通してきました。....残酷なようですが、彼女は人類をとても愛していました。それ故の決断なのです。
「待ってくれ....じゃあここの社長や研究室、技術開発室にいた奴らは何も知らないのか....?
――彼らはミモザを「人」から「ヒト」にした時から彼女の側にいた特別な存在なのです。全てを知っていて、それを受け入れた上で秘密を貫き通しているのです。わかりましたか?これがあなたの知りたがっていたアンドロイドの全て。先を求めた人類の手によって作られ、その手によって人類は潰されたのです。全てを知ってしまった以上、あなたを帰すことはもうできません。
「それはどういう....?
この「クロノス」は数多もの人やヒトの意識が集う空間。あなたもまたこの世界の秘密を守るためにヒトの崇高なる叡智の一部となるのです。
「そうか...研究者が答えにたどり着かない理由は...たどり着いたものは皆”叡智”となっていたからだったんだな.....
再び意識が遠のく....もっと知りたいことが....あったんだけどな......
............
.........................
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「....お楽しみいただけましたか? 叡智管理局クロノスではお客様の見学をいつでもお待ちしております。これからもヒトの為に日々尽くしますので、ぜひまた起こしになって下さい......
人類の存続。
クロノスが選択した未来の為に、叡智管理局は今日も働く.....
時と歯車の理想郷 メル @Mell_
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