護
【五】
長い夢を見ていたようでありました。
大きく熱い暁が、真正面にありました。
太陽を感じた蝉たちが、いっせいに鳴き始めます。私はお社の屋根を支えに立ち上がり、自分が彼女の服を着たままでいることに気が付きました。
……ああ、あれは夢ではなかったのだと。
彼女の年の頃ならば、孫でしょうか。それとも曾孫でしょうか。いいえ、血が繋がってる証拠はありません。本当に死神のような、不思議な力がある存在であったのかもしれません。
確かなのは、彼女が優しい子であったこと。
どこからか声が聴こえます。蝉の求愛の声の向こうで、私の名を呼ぶ誰かの声が。畦道を駆けてくる、あの人の声が。
『死神さん』にいつか会えるとしたならば、彼女と約束をする日がいつか来るならば……私は……。
私はこれからどこで生きるのか。どこで彼女と出会うのか。本当にこの先に彼女がいるのか。
何の保証もないのです。
それでも。
……それでも。
涙とも汗ともつかない雫が滴り、私の足の下で、泥と混ざりました。
私はまだ、この先を歩くことが出来るでしょうか。
実に奇妙な一夜。胸に芽生えたこれを、あるいは『希望』と呼ぶのかもしれません。
死神と白昼夢 陸一 じゅん @rikuiti-june
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