波紋のように問いかけてくる掌編

この小説は皮肉という言葉がよく似合う。
洗練された少ない言葉に、主人公の狡さも弱さもよく現れている。
喧騒を避け感情の動きから逃げ無難に安定を選び、主人公が手にしたものは納得のできるものであったのだろうか。
潮と言う流れの中に身を置き、そこに無心の境地を求めているようで、なんともまあ腹立たしくも愛おしい人間の姿だなと思う。
そしてそれを掌編で書ききってしまう作者の筆力が見事である。
読んで何を受け取るかは読者により違うだろうが、胸がざわめくのは同じではないだろうか。

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