ウィットに富んだ語りと設定、心根の優しさが魅力的な青春小説

語り手(小野田茉優)の通う春見が丘高校では、一人の女子生徒がファッション雑誌に掲載されたのをきっかけに、校則の締め付けが行われ、その女生徒は登校できない状況に追いやられた様子で、多くの生徒が反発を覚えています。
茉優も決められた白の下着ではなくボーダーのそれを着用し、ひそかなる抵抗を試みていますが、生徒たちのレジスタンス活動はそれにとどまらず、大きな展開を見せます。
そしてその先で、予想外の事実が明らかになり……。
 
語りや「ぱんつによる抵抗活動」という発想が、知的かつユーモラス。
特にぱんつの抵抗には、ユーモアの中に女性の凛とした戦う姿勢が彷彿されました。
このイメージがラストと繋がっていて、とても気持ちよく幕を閉じています。
 
終盤の意外な展開もとても良く、誰かを悪者にするのでなく、広い視野からそれぞれの立場をしっかりととらえて描かれた物語だと思いました。
 
けれど、ごく個人的にこの作品の一番の魅力は、大人しくて目立たない語り手の茉優と、華やかで常に注目を浴びる眞行寺弓佳との間の不思議な距離感の友情です。
ほとんど話したことのない、相手は自分のことを覚えてすらいないかもしれない、そんな関係でありながら、好きな小説が同じらしい、というその事で、ただの遠いところにいる人ではなく、人間味を感じるくらい心の距離が近くなる。それがリアルな感覚としてよく分かります。
そして生身の人間だと感じるからこそ、相手を気にかけ、思いやり、彼女のために何かをしてあげたいと思う、その心根の優しさがとても素敵だと感じられます。
その感情が一方通行でなかったことも、また、心から良かったと思えました。

青春の、少しひりついた、それでも思いやりに満ちた物語をウィットに富んだ語りと設定で描いた魅力的な作品です。

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