第8話 初依頼、シロさんの実力

 依頼を受けた俺達は王都から少し離れた草原にいる。


「いや~まさかこれ程とは……。」

 誰にでも無く呟く、


「はぐはぐ。」

 イナリ様は無視。


「スースー」

 魔女っ子ちゃんはその背中で可愛い寝息を立てている。


「ウワーーン!!見てないで助けて下さ、ヒィッ!?」

 シロさんが下級モンスター【ウシトリトン】イメージとしては豚の体に鶏の翼、牛の顔を持つモンスター。


 の突進をギリギリで避ける。

 いやマジで危なっかしい。


「ヒィヒィ、タケシさん、タケシさん助けて下さいいいいい!!!(泣)」

 少し離れた所で見守っていた俺達の方に走るシロさん。


 後ろからウシトリトンが追いかける。

 3メートルはある巨体で体が豚なだけあって足はかなり遅い。

 が突進となると話は別で翼を羽ばたかせての全力ダッシュは割と早いんじゃなかろうか。


「ブコケモオオオ!!!」

 と耳障りな雄叫びを上げるウシトリトンの突進を


「ヒィヒィ、ヒィィィィィィ!!!!」

 後ろを振り向いたシロさんは間一髪、横に頭からスライディングして避ける。


「おっと」

 そのまま俺達の方に突進してきたウシトリトンを


 スパッ


 と両断する。

 さすがにこのレベルの敵は強化無しでも余裕だ。

 が、現在はシロさんが避けきれなかった時のために一応強化を使っている。


 ドスンッ

 と派手な音を立てて左右に両断されたウシトリトン本日の夕飯が地面に倒れる。


「いや~ナイス誘導ですね。シロさん。」


 泣きながらこちらに歩いてくるシロさんに親指を立てて見せる。


「ぐすっうぅ、タケシさん酷いですぅ(泣)危なくなったら助けてくれるって言ってたのに、ぐすん。」

 濡れた目でこちらを見上げるシロさん。


 そんな顔されると興奮しちゃいますよハァハァ。


「まぁまぁ、これではっきりと役立たずだって分かったんで大丈夫ですよ。これからは他の人達と」

「ウワーー!!待って下さいぃお願いします。捨てないで下さいぃ!(泣)」


 と腰にしがみつくシロさん。

 いや~柔らかいですね。


「タケシ君女の子イジメて楽しい?」

 すごく冷たい目をしている。

 これはこれでイイ!


「はい!すごく!」

 全開の笑顔でそう言った直後、

 イナリ様のみかんが俺の視界を塗り潰した。


「グギャアアアアア!!!!目がアアアア!!!」

「ウワーーン!!捨てないで下さいぃ!(泣)」

「スースースー」


 変態が叫び、役立たずが泣きわめき、背中で幼女が寝息を立てるカオス空間で

「はぁ。やれやれだぜ~。」

 イナリ様はまったく仕方ないなぁみたいな感じで呟いた。


―――――――――――――――――


「ブコケモオオオ!!!」


 スンッ

 突進を仕掛けるウシトリトンを頭から両断する。


「これで終わりですね。」

 剣を鞘に戻し、後ろでお喋りしている女神と白魔道見習い女子二人に声をかける。


「お疲れ~。」

「お疲れ様ですタケシさん。」


 うんうん美女二人が労ってくれるって素晴らしいですね!!


「はぐはぐ。」

「どうしたんですか?」

 シロさんが首を傾げる。


 おっとニヤけてたみたいだ。

「いえ、なんでもありません!(キリッ)」

 と決め顔で言ってみた。


「アハハ!タケシさん変顔お上手ですね」

「………。」

 あはは彼女に悪気は無いんですよ。うん。笑ってくれればそれで……。


「はぐはぐ。ね~タケシ君、終わったなら早く帰ろ~よ。お腹空いた~。」


「「……は?」」

 シロさんと俺の声がハモる。


「何?お腹空いた??そのみかんはどうなってるんですか!?」


「甘いモノは別腹なのだ。」

 えっへんと胸をはるイナリ様。

 巨乳が揺れる。

 その下、お腹は少なくとも五十個はみかんを食べたはずにも関わらず少しも膨らんでいない。


「そうですか。じゃあさっさと帰りましょう。」


「OK」

 そう言ってイナリ様は先程のウシトリトンに手をかざし、「コンッ」と一言かけると、その肉塊は溶けるように消える。


 それを見たシロさんは

「それにしてもすごいですね。転移魔法を使えるだけですごいのに、それを日に何度も使えるなんて」


「まぁね~。ドラ●もんって呼んでもいいよ。」

 イナリ様は得意気だが、


「どらえもん??」

 シロさんには分からないようだ。(当たり前)


 しかし女神様がド●えもん呼ばわりされて嬉しい物なのか……。


「ドラ●も~んどこでも扉出して!」

 呼んでみた。


「はぐはぐ。行こっかシロちゃん」

「え?あ、はい」


「………。」

 スタスタと歩いて行く二人。


「あ~ん、待ってよド●えも~ん!」


 こうして初依頼は無事クリアした。

 ウシトリトン5匹を討伐。


 ちなみに依頼にもよるが倒した獲物は基本的に自分達で街まで運ばないといけないため、この持ち運びをイナリ様がやってくれるのはかなり助かる。


 女神に荷物持ちさせるのはどうかと思ったが本人がやりたいそうなので気にしない事にした。

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最強剣士の異世界転生~追放されたり恋人を寝取られたり色々不幸だったので魔王を殺して自殺した……、んだけど何か神様が転生させてくれました~ 五味葛粉 @m6397414

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