第7話 白魔導見習いのシロ
「では改めまして白魔導師見習いのシロです。宜しくお願い致します。」
そう言ってシロは丁寧にお辞儀をした。
「よろしく~、はぐはぐ。」
「見習いじゃなくて役立たずじゃ」
そこまで言いかけると
「タケシ君メッ!だよ。」
俺の視界がオレンジ色に染まる。
目の一センチ手前でみかんが止まったのだ。
「スミマセン。」
「分かればよろしい、食べる?」
目潰ししかけたみかんを渡そうとしてくるが
「いえ大丈夫です!」
俺がみかん危険物をキッパリ拒否すると
「じゃあシロちゃん食べる?」
「わぁ。ありがとうございま」
「「え?」」
シュバッ
とみかん劇物をかっさらう。
「ダメですよ食べたら」
あの門番みたいになられたら大変だ。
「タケシ君たら本当は食べたかったんだね。もう素直じゃないんだから」
イナリ様みかん中毒者がウフフと笑い、
「まったく嘘はいけませんよ」
シロ素人が仕方ないなぁと嗜める。
呑気な物だ。
食ったらどうなるか分かんないのに。
「はいはい。みかんはいいですから、シロさんの事もっと聞かせて欲しいんですが。」
大体魔法が使えないのに何故白魔道師なんて魔法職についてるのか、意味わからん。
「えぇ?ナ、ナンパですか?」
シロが頬を赤らめる。
そんな反応されると照れるんですが
「………、言い方が悪かったですね。何で魔法が使えないのにハンターなんてやってるんですか?」
ハンターって立ち位置よく分かんないけど、多分俺達の世界で言ったら冒険者みたいなもんだろ?
「お金が必要なんです。どうしても。」
シロは真剣な眼差しでそう言った。
それを聞いたイナリ様は
「………おっかねー奴だ。ぷぷぷどうかなタケシ君!」
「「………。」」
まさかの女神ジョークヒャ●インに場が凍った。
――――――――――――――――――
「………はぐはぐ。」
とりあえずイナリ様には黙っててもらう事にした。
一人で、いや魔女っ子ちゃんを背負ってみかんを食べている。
「それでお金が必要って何の為にですか?」
「………私の育った孤児院の為、いえ師匠の為です。」
真面目な顔でシロは言った。
はぁ。どうしましょうか。嘘ついたり裏切ったりする人には見えないけど……。
シロの目は真剣だ。
それに応えるように俺も真剣な眼差しで忠告する、
「言っときますけど裏切ったら殺しますからね?」
「そんな事は絶対にあり得ません。」
その眼に嘘はない。
揺るぎない意志を持った青い瞳が俺を見ている。
……正直これくらいじゃ信じられないけどね、三年も一緒に冒険したあいつらだって俺を裏切ったんだから。
でもま、困ってるみたいだし、とりあえず手伝いするくらいなら良いか。
「分かりましたこれから宜しくお願いしますね、シロさん。」
立ちあがり右手を前に出す。
「こちらこそ宜しくお願い致します。」
ガッシリと握手をした。
「ところで貴方のお名前は?」
上目遣いで聞いてくるシロ。
「え?ああ俺達の自己紹介はまだでしたね。俺はタケシ、あっちのみかん中毒者ジャンキーはイナリ様、背負ってるのが魔女っ子ちゃんです。」
「イナリ、様?魔女っ子ちゃん?」
シロが頭に?を生やす。
そう言えばイナリ様は何て紹介すればいいんだろうか?
女神だなんて言えないし………。
「あ~、そのイナリ様は俺の雇い主と言いますか上司?じゃなくて……」
「見ないお召し物ですがどこかのご令嬢なんですか?」
「あ、ああ!そうなんです!ニホンと言い国から来たんです。俺は護衛約で。」
ご令嬢に見えますか?あんな胃袋ブラックホールが?
「ニホン……初めて聞く国ですね。あの魔女っ子ちゃん?もニホンから来たんですか??」
「あの子はここに来る途中の森で拾っ……一人で寝ていたので心配で連れて来たんです……イナリ様が。」
「はぐはぐ。」
良かった聞こえてないようだ。
「……そうなんですか、それにしてもあの赤髪にあの杖……いや、まさかね。」
シロが小声で呟く。
「なんですか?」
「いえ、何でもありません!それより早速依頼を受けに行きましょう!」
なんか誤魔化したような?
まぁいいか。
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