第6話 美少女には勝てなかったよ
「お願いしますぅ、お待ち下さいぃ(泣)」
腰にしがみつきわざとらしい泣き声を上げる痴女。
「ええい、鬱陶しい!寄生プレイなら他の変態に頼め!」
腕を掴み引き剥がそうとするも中々に力が強く離せない。
「お願いしますぅ」
「い、や、だ!う"うぅぅぅこんの離れろ」
この細腕のどこにこんな力があるのだ、くそ!
「お願いしますぅ、お願いしますぅ(泣)」
「はぐはぐ。ね~タケシ君早く行こうよ~。その人も一緒でいいじゃん。」
まったく他人事のように言うイナリ様。
それを聞いた尻軽女が
「本当ですか?ありがとうございます!」と俺から離れイナリ様の手を取る。
「はぐはぐ。うん。」
「はぁ~。女神様ぁ」
恍惚とした表情の白魔導士風の女。
女神様って本物なんだが、比喩だよな??
「イナリ様、こんな女絶対裏切るに決まってます!実は幼馴染がいてこっちは本気だったのにあっさり捨てるような奴ですよ。きっと!」
「はぐはぐ。うん。ドンマイ。」
うぐぅ。こっちに目もくれない。
「そんな事しませんわ!私が愛する人は生涯一人だけと決めてますもの!」
プンプンと頬を膨らませる。
「遊びなら何人でも相手するって事だろ?変態!」
あのクソ女と同じように
「む、そんな事しません!大体貴方、初対面なのに失礼じゃありませんか!?」
俺の胸ぐらを掴みキッと下から睨みつけてくるがいかんせん顔が良いからなのかまったく怖くない。
どころか不覚にもドキッときた。
冷静になるとこの人すごい美少女だぞ。胸もかなり……いや、いかん!落ち着け、こいつは遊び人……こいつは遊び人。
「何とか言って下さい!」
うう、顔が近い、花みたいな甘い匂いがする。
駄目だ、耐えられない。無念なり……。
「いや、その……ごめんなさい」
なおも怒っているようだがそれ以上言う気はないようでぷいっと手を離し
「まぁ、いいですわ。それより早く討伐に行きますわよ。」
スタスタと受付の方に歩いて行ってしまう。
「おー!」とイナリ様もそれに続く。
「……お、おー。」一応小声で言って後を追うが、
何であいつが仕切ってるの??
――――――――――――――――――
「ちょっとどう言う事何ですか!?」
ギルド内、休憩スペース的な簡素な机と椅子がいくつも並んでいるスペースの一角で、白魔導女が依頼書を叩きつけ声を張り上げる。
「はぐはぐ」
「ごめんなさい。」
隣でボケーっとみかんを食べるイナリ様をよそに正面に座る白魔道女に何故か謝る俺。
「ごめんなさいじゃありません!まったくそんな軽装でこの依頼を受けようとしているからどんなベテランかと思えば」
「レベルC!?それも今日登録したばかりで!一体どうやってこの怪物バケモノを倒すつもりだったんですか!?」
「はぐはぐ」
「いや普通に剣で」
「はぁ!?そんな安物の剣でドラゴンの鱗が切れるはずないでしょう!貴方は自殺志願者なんですか!?」
まだ話てる途中だし、魔王も一撃で殺したんだけど……。
自殺志願者て、もうやりましたよ。
「ふんふ~ん」
イナリ様は呑気に鼻歌を歌いながらみかんの皮を剥いている。
こっちには何も言わないのか、何故俺だけ。
「はぁ。もういいです。レベルCではどうせこの依頼は受けられませんし、もっと簡単な物からにしましょう。」
そう言って白魔導女が立ち上がる。
っていやいや待て待て
「あの?」
「何ですか?」
「何で一緒に狩に行く事になってるんですか?」
そう、この女はドラゴンの依頼に用があったんじゃないのか?
「………へ?」
見事な間抜け顔を晒す白魔導女。
「その依頼に行きたかったんでしょう?それとも本当に寄生プレイ………あー、他の人のおこぼれ目当てのクズ?」
「な!ち、違います!ただ誰も仲間に入れてくれないだけ……はっ!?」
なんだボッチか。
「行きましょうイナリ様。この人に関わると俺達もボッチ仲間と思われるから。」
「ウワワワ!?違、違いますぅ!待って下さい(泣)」
またそれか。
「他の人にやって下さいよ。その見た目なら男で拒否する人はいないでしょうし」
実際美少女だし、ボッチの意味が分からない………。いやもしかして、
「駄目なんでうすぅ、お願いしますぅ捨てないで下さいぃ(泣)」
机の反対側から回りこみまたもや腰にしがみつく白魔道。
「人聞きの悪い事言わないで下さいよ!てかあんたもしかして魔・法・が・使・え・な・い・とかじゃないですよね!?」
「ギクッ!?な、何故それを!」
「うわ~……魔法が使えない魔法使い………ゴミ?」
「うぅ、酷いですぅ、ぐすっ(泣)」
ガックリと床に手をつく白魔……美少女。
これは………、
「よくそんなんで偉そうに出来ましたね?えぇ?自殺志願者は貴方の方でしょ?役立たず!」
いかん、ノッてきた。
「うぅ、ごめんなさい(泣)」
濡れた瞳で俺を見上げる美少女。
イイ!実にイイぞ!!
「はぐはぐ」
またしてもイナリ様が冷たい目を向けてくるが関係ナッシング!
「そんな役立たずが一緒に狩に行くんだから当然ナニかしてくれるんですよねぇ?」
悪役面で舌舐めずりする俺。
我ながらキモいな。
「ヒッ!?ナ、ナニか……?」
白い顔に困惑の色が浮かぶ。
「かまととぶらないで下さいよ。分かるでしょ?その厭らしい体でグバァッ!!?」
「タケシ君アウト!!」
イナリ様が俺の顔面、目にみかん爆撃を喰らわせる。
「グギャアアアアア!!!!!目が、目がアアアアァァァァ!!!!!」
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