第5話 ハンターになろう
城壁を抜け、少し歩くとそこはまさに王都と呼ぶに相応しい賑わいを見せていた。
子供達は無邪気に走り回り
大人は人もエルフも獣人もそこかしこ仲良く立ち話をして、
立ち並ぶ様々な店は店員が絶えず呼び込みをしている。
そんな活気溢れる街なのだが…………。
「どうしましょうかイナリ様。」
「はぐはぐ。ん~私の魔法で出せるけどやる?」
「…………。いや止めときましょう。」
「まぁ、私は野宿でも平気だから気にしなくていいよ。はぐはぐ。」
今俺達は宿屋の前にいる。
だが、問題が一つ発生した。
金が無い!!!!!!
しかし、どうするか。
元手無しで金を稼ぐ方法、それも今すぐに。
………………。
「そう言えばこの世界ではギルドがあるみたいだよ。」
イナリ様が思い出したように言った。
「ギルド?ですか?」
モン●ンみたいな奴だろうか。
「そうそう流行ってたでしょ?モンテスキューハンドベルってゲーム。はぐはぐ。」
モンテスキューハンドベル―――――――
通称モン●ン
プレイヤーはモンテスキューという名の筋肉超人になりハンドベルと呼ばれる鈴付きのグローブを身につけて様々な怪物を殴り殺すゲームだ。
俺も元の世界で何度かやった事がある。
「つまり怪物を倒してお金が貰える施設って訳ですか?」
「そう言う事~。はぐはぐ。タケシ君強いし向いてるんじゃない?」
「確かに楽に稼げそうですね。さっそく行ってみましょうか!」
―――――――――――――
「ようこそ対モンスターギルド王都ホワイト支部へ!」
街の中心からやや奥に進んだ場所にあるギルドへやって来た。
中には鎧を着た者やローブを纏った魔法使い風の人、下着姿にハンマーを背負った変態など様々な人物が巨大な掲示板の前で何やら話している。
恐らくあれに討伐するモンスターが張り出されているのだろう。
とりあえずそちらは無視して受付らしい美人さんのところで話を聞く事にした。
「あの、スミマセン。初めてなんですが、……えと、」
何て言えばいいんだろか言葉に詰まるとお姉さんは理解してくれたようで、
「かしこまりました、では最初にハンター登録をして頂きますので、こちらの用紙に記入をお願いします。」
「あ、はい。」
用紙を受け取り名前や生年月日などを記入していく。
ちなみにイナリ様は魔女っ子ちゃんをおんぶしたまま掲示板の方に行ってしまった。
チラリとそちらを見ると何やら楽しそうに他の人達と話をしている。
…………大丈夫だろうか。あの『みかん物体X』を人に渡さないか心配で目が離せない。
「ではこちらが証明書になります。」
そう言って受付のお姉さんが一枚のカードを差し出す。
「ありがとうございます。」
名前と登録支部等、さっき紙に書いた個人情報が記載されている。
「スミマセン、このハンターレベルって何ですか?」
まぁ、何と無く分かるが一応確認だ。
「ハンターレベルはその名の通りハンターのレベルを表す物です。強いモンスターを倒す事でレベルアップ出来ます。」
なるほどなるほど。
「今がCって事は最高はAですか?」
「いえ最高はSレベルになります。ですがここまで上に上がれる人は極々稀なので、無理せず自分のレベルに合ったモンスターを狩って下さい。」
ニッコリ営業スマイルを浮かべる受付さん。
自分でもすぐ死にそうな見た目だと思いますよ………。
「タケシ君終わった~?」
後ろからイナリ様が声をかけて来た。
「丁度終わったところです」と答える。
「そっか。じゃあどうする?何と戦う!?」
目をキラキラさせるイナリ様。
どうした?
「とりあえず掲示板見に行きますか。」
「OK!」
…………………。
何か色々なモンスターがいるみたいだ。
さすがに生態系は俺が元いた世界と違うらしい。
書いてある星が強さの基準だろうか?
「イナリ様どれがいいと思います?」
「はぐはぐ。ドラゴンって美味しいんだって、じゅるり。」
みかんを食べながら舌舐めずりするイナリ様。
どんだけ食べるんだ。こっちに来てからかれこれ50個は食べてると思われる。
しかしドラゴンって食べられるのか。
「じゃああれにしますか」
そう言って上の方に張ってある金色のドラゴンの張り紙に手を伸ばすと
パシッ
とその手を捕まれた。
その華奢な手の持ち主に視線を向けると
ゆったりとした白いローブに身を包み、先端が十字になった杖を持つ黒髪の美少女がいた。
「あの、何か?」
尋ねると
「その依頼を受けるならわたくしも連れて行って下さいませんか?」
潤んだ瞳の上目遣い。しかも美少女だ。
答えは勿論、
「じゃあ行きましょうかイナリ様」
無視である。
「うええ!?ちょっ!ちょっとお待ち下さい!!」
後ろから抱きつき、胸を押し当ててくる痴女。
こんなの相手にしたら確実に裏切られる。
俺の直感が言っているこいつは関わっては駄目な奴だと。
「ぐすっ、何で無視するんですかぁ?(泣)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます