第4話 みかんの正体

待っていても魔女っ子ちゃんは起きないとの事なのでとりあえず先に進む事にした。


「そういえば言葉も通じるし魔法も同じなんですね。あの影は初めて見ましたけど。」

 魔女っ子ちゃんをおんぶ♥️した俺は何気なく言った。


「まあね~。神様のチカラってやつですよはぐはぐ。」

 例によってイナリ様はみかんを食べている。


「イナリ様ってみかん食べないと死ぬ病気にでもかかってるんですか?」


「まあね~。神様だしはぐはぐ。」


 神様関係ないだろ。

「………。あ!今さらなんですがイナリ様も一緒に旅を?」


「本当に今さらだね~。勿論だよ。だって暇つぶ…………君は私の選んだ勇者だからさ!!あ、みかん食べる?」


 イナリ様は誤魔化す時確実にみかんを勧めてくる。

 人一人転生させて魔王退治に同行するのが暇つぶしとはさすが神様。

 まさにリアルRPGだな。


「いいです。両手ふさがってますから。」


「おっとそれはあれだ!食べさせて欲しいって事だね!はい、あ~ん。」


「う、え、あ、あ、あ~ん。……もぐもぐ。」


「美味しい?」


「……。はい。美味しいです。」


「フッフッフ。何と言っても私特製のみかんだからね。」


「へ~。イナリ様が育ててるんですね。てっきり魔法で生み出してるのかと」


「それも出来るけどやっぱり育てた物の方が美味しいからね~。何なら一緒に農家してみる?」


「農家ですか……。」

 確かに悪くない気がする。魔王と戦うまでの五年もあればそれなりに上達するだろうし。


「いいかもしれませんね。っと。…………綺麗な景色ですね。」


 林道を抜けると見渡すかぎり一面緑が揺れる爽やかな丘に出た。

 空は快晴。そよ風が青草の香りを運ぶ。

 先の地面から立派なお城の一部が見えている。


「あそこはもしかして王都ですか?」


「そうだよ~。はぐはぐ。」


「おー。早速行ってみましょう。」


「そんなに慌てなくても王都は逃げないよ~。はぐはぐ。」


 さてさてどんな人達がいるのかね~。


 ――――――――――――――――――

 王都前

 見渡す限りの草原の中に存在する巨大な壁。

 見上げる程高い黒々とした石造りの城壁は王都をぐるっと囲み上から覗く白い城(ギャグじゃないよ。)以外に中の様子は分からない。


 そして今俺達はその壁の前、正確に壁の前にある深い掘の手前で門番と思われる男に止められた。


「旅の者か?」

 重厚な鎧で全身を覆った大男が兜の隙間から低い声を出す。


「あ、はい。」

 どうしよう身分証とか必要なのかな。


「ふむ、見ない格好だな。王都に何の用だ?」


 俺達の服装はイナリ様が巫女服(自前のキツネ耳&尻尾付き)、

 俺は魔王を倒した時のジャージ姿(自殺するつもりだったので部屋着)で腰に剣が一本、

 そして魔女っ子ちゃんは黒ローブを着ている。


「え、と………観光で来たんです。色々と歩いて回っている所で。」


「観光ねぇ。ちなみにどこから?」

 兜の隙間からは怪しむような視線を感じる。


 どこから?

 地名なんて知らねーよ。


 助けを求めるようにイナリ様の方をチラと見ると、


「はぐはぐ。」

 相変わらずみかんを食べながらもコクっと首肯く。

 伝わったようだ。


「異世界から来むぐぅっ!?」


「異世界?」


「ちょっと待って下さいね~。」

 俺はひきつった笑顔でそう言うとアホな女神様の口を抑えたまま門番に聞こえない位置まで下がる。


「ちょっと何するの?タケシ君。女の子に乱暴は良くないよ!」

 プンプンと拗ねたように言うイナリ様。


「いや何言おうとしたんですかイナリ様。」


「異世界から来たって。」

 何を言ってるのコイツみたいな顔で言われた。


「あの、ですね。そんな事言っても信じてくれませんよ?」


「はぐはぐ。」


「いや、はぐはぐじゃなくて聞いてます?」


「聞いてる~。でも嘘は良くないよ。」

 人差し指を俺の口の前に突きだす。

 何だろうこのお姉さん感は。


「いや、でも。」


「はいはい。いいからいから。タケシ君はちょっと待ってて。」


「あ、イナリ様!」


 止める声を無視して門番の方に走って行ってしまった。

 大丈夫………じゃないな。


 声は聞こえないが身振り手振りで説明しているイナリ様。

 何だ?丸?鳥??逆立ち???あ、みかんあげた。


 …………。

 なんかこっち来たぞ。


「分かってくれたみたい!」

 可愛い笑顔のイナリ様。


 なんか変な感じだがまぁいいか。

「そうですか。疑ってスミマセンでした。」


「いいよ~。じゃあ行こうかはぐはぐ。」


 ゆっくりと降りてくる城門が掘りの上に橋を作る。


 門番に挨拶して中に入ろうと


「jtpgdWaj537*6なやまあやゎかなupjmw9886{8」


「…………。」


「どうしたのタケシ君?早く行こうー。」

 イナリ様は気にも留めずにスタスタと歩いて行くが……。


「tm-#5768tjdpやはなまたなわまなわまなkTpjmwt」

 理解不能な言語を言いながら不可解な踊りを踊り出した門番。


「あの、イナリ様この人に何したんですか?」

 恐る恐る尋ねると


「??みかん上げただけだよ?」


「…………。」

 実は俺も一つ食べてしまったんだが、あれは本当にみかんなのだろうか。


「ね~。早く行こ~よ~。はぐはぐ。」


「tm-jdtpj53872なかまやさわたやtm-#atptm」

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