あとがき

この物語の着想に至ったのは2005年になります。それからブログで連載を始め、書いては途中で投げ、また書いては途中で投げ、を繰り替えしていた作者の私にとっては曰くつきの小説でした。

 元々は作者の敬愛する芥川先生の浅草公園に着想を得てこのような奇異な書き方をしようと決めました。

 その後、2015年に商業出版しプロデビューした後、私にとっての一番の後悔はこの作品を完結できなかった事でした。

気になる牧野さんは、作者の職場での実体験が元になっています。牧野さんのモデルになった派遣社員の女の子が20歳でべらぼうに可愛くて、でもちょっと奇行が目立つ変わった娘でして、作者の私をハラハラさせていたのです。

 そんな体験を元に書き始めたこの『気になる牧野さん』は、芥川龍之介先生の浅草公園の脚本技法を参考に、牧野玉藻は恩師である森羅聡里との再会を目指し漂流する、今までにない書き方で、長い年月を経て、ようやく、ようやく、やっと、やっと、ついに、ついに、無事に完結させる事が出来ました。

 この作品は私自身の物語でもあり、成長物語でもあります。


 書き終わった後に湧き上がった感情は喪失感ではなく、開放感でした。そして凄まじいほどの達成感を味わいました。小説を完結させる度にいつも感じる、この達成感。この喜びの為に、きっと私は小説を書いているのでしょう。

 物語は紆余曲折を経て全く実体験とは異なる物語になりましたが、作者の私は書いていて苦痛を感じた事は一度もなく、ただ、ただひたすらに楽しかったです。この、小説を書くのが楽しい、という気持ちが、作家を大きく成長させるのだと私は考えています。

 勿論、産みの苦しみも嫌というほど味わいましたが、それもまた執筆の醍醐味の一つです。


 きっといつか自分が日の目を見て、表舞台に本格的に出てきたときに、この作品が再評価されたら嬉しいな・・・と、今はぼんやり考えています。舞台設定を2030年にしたのは、その想いからです。たとえ今は希望は無かったとしても、人間の未来というものは、常に希望に溢れているものです、それが人生なんです。『気になる牧野さん』は『希望』『そして夢は必ず叶う』がメインテーマの青春群像劇です。実際長かったこの孤独な戦いに勝利した作者の私は、心の底から『生きている限り希望はある』と痛感しています。


プロとしてこの作品を世に出そうという考えは全くありませんでした。この作品の執筆だけは、誰にも邪魔されず、自分の思うどおりに、理想の結末にたどり着かせたかったからです。プロになれない代わりに、思う存分満足いく創作を楽しむ事が出来る。それがWebで小説を書くことの一つの醍醐味では無いでしょうか?



 こうして、長かった日々、『気になる牧野さん』を無事に完結させる事ができました。


『気になる牧野さん』は完全燃焼しました。

 端々に書きたいことは多少ありましたが、作品のテンポを最優先して削った幻のエピソードが幾つかはあります。例えば社内大運動会編(単なる引き伸ばしにしかならないので却下)とか、GAMに迫る親衛隊との合コン騒動編(同様の理由)とか、作中もっともマトモな人、指野美咲さん視点の物語とか。。。まあ指野さんは喋らない幻の主人公扱いなので、作者の私は一切彼女の視点を書きませんでしたけどね。最初は物語構築に苦しんだら、最後の切り札として指野をしゃべらせようとも考えていましたが、結局最後まで彼女は語らない幻の主人公を演じてくれました。指野美咲さんには本当に感謝してます。ありがとう、指野さん。

 ただ、いつかこの作品が日の目を見るときが来たら、ひょっとしたら指野美咲が主人公の物語を書く可能性もある? かもしれませんね。。


・・・え?牧野玉藻の未来? さあ、それはまた別の物語です。とりあえず、長畑と結婚・・・するのかな、彼女は? いずれ世界を股にかけて活躍する存在になる少女ですからねえ。それに恋は奥手で苦手な娘ですからね。。。まあなんといっても『気になる牧野さん』というタイトルですから、そこは読者の想像で、気になる感じでお任せします。Never Forgetということで。。。。


 また例によって取り留めのない後書きになってしまいましたが、『気になる牧野さん』のあとがきはこれで終わりです。

 それでは、引き続き、作者の新作、暗黒幻想冒険譚、『悪役令嬢だけがレベルアップできるRPG』をお楽しみくださいませ。





    

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『気になる牧野さん-Never Forget-』 伊可乃万 @arete3589

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